触手と愛とプレゼント ―2―


 時は少しさかのぼる。

 変態じみたことを言い出したのは、またいつもの通り大和からだった。
「ダンテさんは触手プレイができると聞きました!!」
 期待が溢れ出す笑顔で大和が迫れば、ダンテは穏やかな笑顔を引きつらせて首を傾げた。
「・・・・・・誰から聞いたの?」
「ルイスさんです」
「あの顔だけ天使なサド悪魔め・・・・・・」
 ダンテが呟いた声は低く、思わず心の声が漏れてしまったらしい。
「んんっ・・・・・・あのね、大和さん。大和さんが期待しているようなエロ触手は、俺には出せないよ?俺が出せるのは、殺意高めな感じのだから。ね?」
「出せるようにはならないんですか?」
「努力を求められた・・・・・・」
 がっくりと地面に膝と両手をついて嘆くダンテに、大和はしゃがみこんで無邪気にその肩を叩いた。
「ぜひ出せるように、がんばってください!僕も、今年もとてもがんばったので、クリスマスプレゼントは触手プレイが欲しいです。どうしても無理なら、着ぐるみでリアカーを引く以外のトナカイプレイがいいですね。ご検討のほど、よろしくお願いします!」
「・・・・・・・・・・・・」
 ざっと、こんな経緯であったのだ。

 深夜までかかって仕事を片付け、クリスマス休暇を満喫するためにそのままダンテの家に突撃し、自分でトナカイ角カチューシャと鈴付き首輪つけて、いそいそと木馬にしがみついた大和の期待に応えてくれないご主人さまではない。
「メリ〜クリスマァ〜ス!」
「フウッ!・・・・・・ングッ・・・・・・ゥ!」
 半ばやけくそ気味な掛け声とともに、ペチペチバラバラビシビシと、てんでばらばらの衝撃が大和の背に降りかかってくる。ひとつひとつはさほど痛くないのだが、リズムも息の合わせもないものだから、タコ殴りにされているかのような感じだ。
(あっ!あぁっ!これは、これでっ・・・・・・!)
 丸出しになっている尻にもビシバシと細い衝撃が打ち付けられて、大和は猿轡状になった触手を噛みしめながら恍惚と喘いだ。
 ダンテが出してくれた触手は植物の蔓に似て、確かにヌメヌメしたナマモノっぽさのないものだったが、大きさや形を変えられるようで、なかなかの自由度があった。ただし、それにはダンテが集中していなければならないので、大和だけが楽しむことになってしまうのが欠点だが。
「気持ちよさそうだね・・・・・・まあ、喜んでもらえたなら、修行したかいがあったよ」
 ダンテの声はなにやら疲れていたが、最高にグッジョブだと、大和は縛められたままの手でサムズアップして良好さを伝えた。
「・・・・・・。じゃあ、続けて乳首とタマを虐めてあげるから、痛すぎたら木馬を叩くんだよ」
(ありがとうございます!!)
 興奮するせいで、また大和の頬が熱くなった。もちろん、乳首が起っていることは触らなくてもわかるし、むしろ触ってくださいとお願いしたいし、虐めてくれてありがとうございますとお礼を言うところだ。
「ンッ、ングウウゥッ!」
 ぎゅっと乳首を挟み込んできたのは、ザラザラチクチクした感触で、細い蔦が巻き付いて撫でるようなものではなかった。大和からはそこがどんな状態か見えないが、ちぎれそうというより、噛み砕かれそうな勢いで、一番近い例えは柔らかい洗濯ばさみに咀嚼されているような感じだろうか。
(ヒィッ、いたっ!きもちいいっ・・・・・・!!)
 がたがたと全身で悶えるが、ギブアップには程遠い。触手らしくごりごりと動かれると、それだけで気持ちよすぎてイってしまいそうになる。
「アッ、ハァッ・・・・・・ァンンッ、ンゥッ!」
「・・・・・・大丈夫そうだね。あぁ、もうこれイっちゃっているんじゃないの?お尻の穴がヒクヒクしてるし。ちんこもバキバキに起たせて、我慢汁垂れ流しちゃって、恥ずかしいね!」
「んひぃっ!!」
 ぱちぃんと尻をひっぱたかれて、むしろそっちの気持ち良さで陰嚢がきゅんとなったが、大和は足の指先に力を入れて堪えた。
「それじゃあ、こっちも挟むからね〜。わあ、痛そう」
 どのくらい痛いのか胸を高鳴らせた大和だったが、股間を襲った痛みに目から火花が散った気がした。
「ァギッ、ヒギィィッ!!」
 ガクガクと腰を振って射精しても、ばっくりと右の陰嚢に噛みついている感触は、歯のように並んだ硬い出っ張りが食い込んで離れない。
「まだ出していいって言ってないでしょ!本当に堪え性のないマゾなんだから・・・・・・」
「ひいぃっ、ふひぃぃっ」
「はい、もう一個追加」
「ァアアアアッッ!!」
 左側にも増えた苦痛に、大和は喉の奥から歓喜の悲鳴を上げた。両手足を縛められた体でもがいても、ぶらぶらと振られて余計に痛くて苦しい。
「うぅっ、ふ、ぅ・・・・・・ん、ギ・・・・・・ィッ」
「キンタマいじめられて気持ちいいなんて、大和さん可愛いね。ちょーヘンタイ」
「ふぁ、ひ。ほぐ、は・・・・・・へんひゃい、へふっ・・・・・・!」
「自覚があればいいってもんでもないんだけど」
 一度はやんでいた蔓打ちが再開され、大和は痛みという快感に身をよじらせた。
「アァッ!あひっ、ィグっ!がはっ・・・・・・イ、ぐぅっ!!」
(ち、くびも・・・・・・っ、タマもっ・・・・・・またイくっ!イくぅっ!!だ、めぇッ、きもち、ひぃっ・・・・・・!)
 淫蕩に漬かった脳が、びゅくびゅくと快楽を吐き出す体が、もっともっとと快感を求める。呼吸するたびに股間がせつなく疼き、どろどろとした熱が渦巻いてやまない。
 そばにいた温かい気配がいつの間にか離れてしまったが、木馬のまわりに増えた触手が、大和の視界を塞ぎ、尻の穴を広げようとしてくる。
(あっ、そんなに広げたら、ナカが見えるっ)
 ぐにぐにと弄られる後ろにばかり気を取られていた大和は、もっと狭い穴に侵入しようとしているものに、直前まで気が付かなかった。
「ァ・・・・・・」
 いままでに経験したことのない、痛みとも苦しさともいえる圧迫感が、精液を押し退けて、滑るように尿道にもぐりこんでくる。
「ぁああああッ!!ひゃめっ・・・・・・や、あああッ!!」
 ぐぷぐぷと陰茎の中を犯していく細くて硬い触手が、大和の悲鳴を無視して、奥へ奥へと刺さっていく。
(それ、以上は・・・・・・っ)
 無理だと大和が思ったところで侵入は止まってくれたが、次はぐりぐりと中で動かれて、絶頂しているのに射精ができないという責め苦に、鞭打たれ続ける背をのけぞらせた。
「〜〜〜ッッ!!!」
 二度、三度と尿道の奥を虐められ、大和は拘束されたままの手足でもがいた。塞がれたままの瞼からぽろぽろと涙が溢れたが、閉じられない口から出るのは、意味をなさないくせに快楽に蕩けた、情けなくも甘ったるい喘ぎ声ばかり。
(イっ、てる・・・・・・や、だ・・・・・・も、出し、たい・・・・・・!)
 大和が限界だと感じたのか、細い触手がようやく出ていくと、歯付きの触手にトングのように挟まれたままの陰嚢から白濁が押し出され、まるで粗相をしているかのように、だらだらと床に落ちていった。
「ア・・・・・・アァ・・・・・・ッ、ハァ・・・・・・」
 びちゃりびちゃりという水音を羞恥と感じて頬は火照ったが、さっきからずっと弄られているアナルが、それよりも妙に濡れて熱い。たぶん、潤滑剤の類だろう。
(え?・・・・・・えっ!?)
 鞭打ちが止んだ背中に、なにかたくさんの物が圧し掛かってきた。視界も行動の自由も奪われたまま、ずしずしと背中に重みが増えていくことに、ほんの少し焦りが滲む。しかし、うっすらとした恐怖よりも、肺を押し潰すような息苦しさを強いられることが、気持ちよく感じてしまうのも否めない。
 だが、それも濡れたアナルに、なにか見たことものないだろう物が当たるまでだった。
(待って、待って、待ってください!?なんですか、ソレは!?)
 快楽にぼうっとしていた頭の中が、急速に覚めていく。開かされた尻の間をズリズリと擦っていくだけで、それがずいぶんとごつごつした形状の物だと感じられる。しかも、長い。
(そりゃあ、触手ですから長いでしょう・・・・・・そうではなく!)
「ンッ、ふぁって、ぁ、あっ!?」
 細い触手に解されたアナルが、押し付けられた丸みを帯びた先端を受け入れ、その勢いごと受け入れ続けた。
「あぐ、ぁ、あっ・・・・・・はっ、はっ、ぁああああッ!!」
 反射的に詰めようとする息を悲鳴に変えて、大和は壊れそうな体を痙攣させた。無遠慮な触手は、一気に、奥まで、大和の中を貫いていった。
(いっ、ひぃっ、お・・・・・・お、っき・・・・・・ぃ!?)
 尻が裂けるというより、腹の中を破られそうだ。簡単に奥まで突きこまれ、ゴツンゴツンという衝撃が、上から押さえつけられた体に響く。
「カハッ、ハヒッ、ヒッ・・・・・・!?」
 挿入の衝撃に馴染もうとしていた大和の腹の中が、急に、それまでとは違う感触で満たされた。
「ア・・・・・・アァ・・・・・・ッ!」
 どぶどぶと注がれる大量の液体が腹を圧迫し、大和に吐き気を催させた。だが、排出が終わると、また嵐のような挿入が再開される。
(じゅ・・・・・・ぅ、かん・・・・・・)
 たしかに、トナカイプレイの一種に違いない。重い巨体に圧し掛かられ、長くゴツゴツしたペニスに犯されている。
「がほっ・・・・・・オッ・・・・・・オゴッ・・・・・・!」
 四肢の先に力が入らなくなってきた大和は、もはや呼吸もままならず、何度も腹の中に吐き出される屈辱に酔い痴れ、中を擦られるままに何度目かの絶頂へ上り詰めるのだった。