その手を取るのは ―6―
にゅぽんとアナルから異物が出ていった瞬間、責め続けられていた快感が消えた物足りなさに、大和は悲し気な悲鳴を上げた。
「ひぃんっ・・・・・・! イぐっ♡ あ゛っ、あ゛ぁ゛ぁっ♡♡」 「お尻がプルプル震えてるよ。恥ずかしい穴をくぱくぱさせちゃって・・・・・・大和さんのアナルは淫乱だなぁ」 「ふあぁっ♡ はいっ、僕の淫乱な恥ずかしい穴を、ダンテさんのペニスで躾けてくださいっ♡ 僕の雌穴に、ダンテしゃんのおちんぽミルクを、いっぱいいっぱい出してほしいんです♡」 きゅんきゅんと奥がせつなくて、大和は四つん這いの体勢のまま、肩をベッドにつけて、鞭の痕でいっぱいな自分の尻を、両手でつかんで広げてみせた。とろとろと足されていくジェルに含まれた媚薬が中を蕩かし、射精できないままゆるゆると絶頂が続いている。 「はぁっ、はぁっ・・・・・・ぁぐぅっ!」 鎖でできたリードを引っ張られ、ぎりりと首に硬い革と金具が食い込む。 「かはっ、はひっ・・・・・・イイっ♡」 「それじゃあ、入れてあげるね」 「ア゛・・・・・・ッ!」 エネマグラを入れていただけで、ろくに解していない大和のアナルを、熱くて太いものが、めりめりと抉じ開けていく。 「おっ、おごっ♡ はっ、はい・・・・・・って、ぐるぅ・・・・・・っ!!」 「・・・・・・ふう。ああ、狭いなぁ・・・・・・ほらっ」 それまでゆっくり入れられていたのに、急に奥まで突き入れられて、大和は悲鳴も上げられずにベッドにしがみついた。 「〜〜〜〜〜ッ♡♡♡ ハヒッ、ヒィッ♡ ヒグゥッ♡」 「ん、またイっちゃった? はいはい、気持ちいいねえ」 「ア゛ッ、あぁっ♡ しゅきっ♡ これしゅきぃ♡」 じゅぱんじゅぱんと激しく突かれても、ジェルのおかげで擦れる痛みはない。それよりも、中をいっぱいに満たしてゴリゴリと抜き差しされる多幸感が、腰を上げたまま這いつくばっている大和に喘ぎ声をあげさせた。 「あ、あ、もっと・・・・・・あぁっ、きもちいぃっ♡ ナカっ、きもちいいっ♡」 「エネマグラとどっちがいい?」 「ダンテしゃんのおちんぽ♡ ダンテしゃんのおちんぽの方がっ♡ あぁっ♡ くるっ♡ おくっ、おくまでごりごりしゅるっ♡ あ゛っ、あっ、イぐっ♡ またイっぢゃうぅぅ♡♡♡ あ゛あ゛あ゛あぁぁっ♡♡♡」 ぎゅうっとシーツを握りしめ、大和は尻に他人の性器を埋めたまま、熱くて蕩けそうな腰をガクガクと震わせて快感を叫んだ。だがそれでも、固い貞操帯に包まれた大和のペニスは勃起できず、だらだらと精液を溢れ出すばかりだ。 「ひぃぃっ、ひぃぃっ・・・・・・」 呼吸するたびに、口からは擦れた悲鳴と唾液が滴り、首輪で締まっても、もう顔をあげることができない。それなのに、下腹部の熱が、自分を穿っている肉棒に絡みついて腰を振れと命じる。 「アァ・・・・・・ッ、アッ、うぐっ・・・・・・」 「すごいね。まだイき続けたいんだ」 「ひぅっ、むりぃ・・・・・・! や、だぁっ! も・・・・・・らめ・・・・・・くるし、ぃ・・・・・・」 ゆるゆると首を振り、限界だと訴える。 「ふっ・・・・・・うぅっ、ごべんなじゃいぃぃ・・・・・・! もうじまぜんんッ・・・・・・!!」 「ああ、よしよし」 快感と苦痛と感情が振り切れてしまい、べそべそと泣きながらしがみつく大和を、ダンテは優しく抱きしめ返してくれた。 「もう一人で、嫌いな人の所に行っちゃダメだよ?」 「ひっく・・・・・・うぅ。あい」 涙や鼻水や涎でぐちゃぐちゃな大和の顔に、ちゅっちゅっと柔らかな唇が落ちてくる。 「うん、約束。それじゃあ、ちゃんとイこうね」 ダンテは南京錠を外し、大和を貞操帯から解放してくれた。 「はあっ、はぁ・・・・・・ダンテしゃん・・・・・・んっ、んぅあっ、はあぁっ」 今度は優しく奥まで満たしてくれる体に抱きつくと、子供をあやすように頭を撫でられ、耳元に熱い息がかかった。 「大和さん、俺が好きなら、いっぱいキスして?」 「は・・・・・・ぁんっ、んむぅっ」 そんなことで証明になるのかと噛み付くように唇を合わせれば、喘ぎ過ぎて嗄れた喉までくすぐるように舌が入ってきて、舌の裏や上顎まで舐めていく。 「ぁ、はぁっ♡ ああぁっ♡」 舌を絡ませ合うだけでも頭の中がふんわりと気持ちがいいのに、ずぶずぶぐちょぐちょとアナルもかき回されて、目の前にある温かい体に、全身でしがみついていたくなる。 「ダンテしゃ・・・・・・いかないで・・・・・・」 「うん? どこにも行かないよ。俺は、大和さんのご主人さまだからね」 「あ・・・・・・はいっ♡」 激しいお仕置きでいくらでも体が熱くなったのに、その一言だけが、どきどきと胸に温かさを沸かせてくれた。 ぐいっと両脚を持ち上げられ、繋がったところが丸見えになる。恥ずかしい格好ではあるけれど、気持ちよさそうなダンテの顔もよく見える。 「ダンテしゃん♡ だんてしゃ・・・・・・あぁっ、すごいっ♡ ふ、かぁい♡」 「うん。大和さんの中、奥までぐりぐりしてあげる。・・・・・・あぁっ、気持ちいい」 次第に強くなるリズムを受け止め、散々虐められた入り口付近を擦りながら、とんとんと奥を突かれると、もうたまらなかった。 「イイっ♡♡ そこらめぇっ♡ あぁっ、あぁっ♡」 「あぁ・・・・・・っ、大和さんの中、気持ちいいっ。んっ、でるっ。ほら、大和さんの中に出すよっ!」 「あぁっ♡ あっ♡ いいっ♡ ダンテしゃん♡ ダンテしゃん♡ 僕イっちゃいましゅ♡♡ 種付けきもちいいのっ・・・・・・あぁっ、くるっ♡ しゅごいのくるぅっ♡♡」 シーツを引き裂きそうな勢いで掴んで身悶え、延々と熱い痙攣を繰り返す下腹部からの快感に、頭はもう壊れてしまったかもしれない。 「んっ・・・・・・!」 「あはあぁぁんっ♡♡♡ ああぁっ・・・・・・あぁぁぁ♡♡♡」 どくどくと腹の奥に注がれる歓喜と一緒に、大和の情けない半起ちのペニスから、どぴゅりと白濁が飛び出して、赤い線が薄れていく腹に流れ落ちていった。 心地よい疲労を得てすやすやと眠る大和の横に寝転がり、ダンテは血色の良い寝顔を眺めていた。 当初の目的であるお仕置きは達成できたので、それ以上に大和のマゾ精神が満足してしまってもいいだろう。お仕置きだけを成立させるなんて器用な芸当は、ダンテには出来ない。今回、かろうじて装甲を抜けたのは、これまでにない大戦果だ。 (貞操帯で勃起させないままイき続けると、ペニスが小さくなるって聞いたんだけど・・・・・・本当かなぁ? 淫紋とエネマグラでイきっぱなしにしてるのに、大和さんが通常運転過ぎて、全然小さくなる気がしない。タマにも淫紋入れようかと思ってたけど、こっちも貞操帯でホールドした方がいいかなぁ・・・・・・タマもでっかいんだけどさぁ) はあぁぁぁ、と大きなため息がダンテの口から流れ出す。わかっていたことではあるが、性欲お化けな大和のタフさには勝てる気がしない。 大和に入れられるのが嫌なわけではない。ただ、最近さらに御立派になっているような気がしているだけだ。SMプレイついでに、もう少し控えめなサイズにならないかなと期待したのだが、希望は儚く消えそうだ。自分の肛門を鍛えた方が早いに違いない。鍛えられるものなのかは不明だが。 (まあ、大和さんが心穏やかに元気なら、それでいいや) 今回のように、どこの馬の骨とも知れない輩に煩わされるなど、厳に排除していかねばならない。 (死なないでそばにいる以外は、人語をしゃべるサルを蹴飛ばすくらいしか、俺には出来ないからさ) 三次元的に隣にいることと、心に住まわせてもらうことの間には、地球と太陽との距離以上の開きがあり、その価値は互いの距離に比例しない、とダンテは思っている。どちらも満たせれば最高だが、現実は片方がせいぜいなことが多く、まことに難しい。愛しいことほど、ままならないなんて、とても悲しい事だ。 ダンテが指先につまんでいるのは、ネックレスのチェーン。その先にあるのは、華奢な女物の指輪。あしらわれている石はトパーズだろうか。洗濯のために回収した、大和のスラックスのポケットに入っていたのだ。 (これはエンゲージリングだよなぁ) 頻繁に名坂支部に出入りするようになってから知ったことだが、普段の大和はネックレスをしていた。長門たちがしているようなドックタグではないことは想像がついたが、チェーンの先はシャツの下にあってわからなかった。いまそれが、ダンテの目の前にあった。 (病気で亡くなったっていう、彼女さんの遺品か) 小鳥遊大和が、かつて婚約者を亡くしていることは知っている。そのよすがを、こうして身に着けていることも、まあ考えてみれば不思議なことではない。 (いつも付けているピアスも、そんな雰囲気だし) 大和が大層なマゾであっても、なぜかスカトロとボディピアスだけは拒否するので、理由があるんだろうなとは思っていた。もっとも、そんなものを要求されてもダンテの方が困ったが。 ダンテは恋愛に関してはけっこうドライだという自覚があったから、さほどショックは受けていない。それよりも、気を使われていたような感じがして、なんだかむず痒い気分になる。大和にとっては、オンとオフの切り替えなのかもしれないが。 今日は慌ただしく職場から直行したので、ネックレスを外してしまっておく余裕がなかったのだろう。 (大事な物を、粗略に扱ったらいけないな) ダンテはヘッドボードにハンカチを敷いて、その上にネックレスを置いた。これなら、ダンテが寝ている間に大和が起きても、気付いてくれるだろう。 (心に大切なものを持っている人も、素敵だよ) 直接言ったら、きっとまた、鳥肌が立つからやめろと、顔を赤くして言われるだろう。 ダンテは仕方なさに苦笑を浮かべ、眠っている大和の額に口付けた。 さしあたって、連れ去られそうになった大和と、誘拐未遂犯との両方に対して、激しく怒ることを許してもらえていることに、ダンテは心から満足していた。 |