一粒の飴玉 ―3―


 ずるりと大和が抜けていった下腹部をさすりながら、ダンテは息も絶え絶えにベッドに転がった。まだ尻に何かがはまっている気がする。
 ころりと仰向けになれば、もう準備万端になった大和がのしかかってきた。一回イったはずなのに、大和の陰茎は威風堂々と天を突いており、さっきまでこれが入っていたのかと思うと、ダンテも苦笑いが引きつるのを止められない。
「いいですか、解すだけじゃ足りないんですよ。僕が踏まれて気持ちよくなるように、ダンテさんにも前戯とか愛撫とかは必要なんです」
「はあ・・・・・・」
「だから、逃げないでくださいね」
 にこぉっと大和に微笑まれて、ダンテは観念して微笑んだ。自分が言いだしたことは、自分が思った以上に、大和を寂しがらせてしまったのだと反省する。
「くすぐったいのは無しで」
「善処します」
 軽く触れた唇は、すぐにダンテの歯の間に舌を差し込んできて、甘えるように舌を重ねると嬉しそうに吸い付いてくる。
「んっ・・・・・・ん、ふぁ・・・・・・」
「ぁ、はぁ・・・・・・んっ」
 頬を染めた大和の眼差しはとろりと蕩けているのに、その手はダンテの首筋を撫で、鎖骨から胸へと滑っていく。脇を撫でる義手の冷たさに身が強張ると、指を絡めるように手を押さえられた。
「どうしました?」
「あの・・・・・・こういう態勢初めてで、なんだか恥ずかしい」
「ふふっ。じゃあ、僕が恋人繋ぎの一番乗りですね。得した気分です」
「ぁ・・・・・・っ!」
 ちゅっちゅっと触れていた大和の唇が、あまり刺激に慣れていない乳首を含んで舐めまわす。むず痒さの奥からじんわりとした快感が湧き上がってきて、ダンテは大和の手をしっかりと握り込んだ。
「はっ・・・・・・ぅ、んっ」
 逃げる気など毛頭なかったが、いつもとは逆に拘束されているような感覚に顔を背けると、開かされた股間にするりと硬いものが押し付けられて、首筋まで熱くなる。
「あッ・・・・・・」
「ちゃんと奥まで濡らして入れますから、怖くないですよ?」
 耳元で囁かれて、口を開いたら情けない声が出そうで、ダンテは懸命に頷いた。冷たいジェルと硬くて熱い塊が、恥ずかしさに耐える呼吸の合間にもぐりこんでくる。
「はぁっ、ぁああっ!はぁっ・・・・・・ぁァッ!!」
 一度開かされたそこに、大和はゆるゆると収まって、深くため息をつく。最初よりはいいとしても、かなりきついはずだ。
「はあぁっ・・・・・・入りました。わかりますか?」
「ひっ・・・・・・」
 大和を収めた下腹部を温かい手で撫でられ、思わず顔を覆う。擦る擦らない以前に、どうしても当たる内側からの刺激に、ダンテの陰茎も起ち上がっていた。
「ダメですよ。もっとダンテさんの可愛い顔を見せてください。それから、掴むのはシーツじゃなくて、僕がいいです」
「ぅあッ、ああっ!」
 腿や腰を持ち上げられて苦しいと訴える前に、さらさらと長い髪が落ちてきて、しっかりと肩にしがみつかされる。
「ふぅっ、はぁっ・・・・・・はぁ」
「あぁ、この万力で締め付けられるような狭さ・・・・・・たまりません」
 くちゅっと重なった唇に舌を吸われて、ダンテは広がった腹の中を擦られる悲鳴を上げることができなかった。
「あぁっ、しゅごい・・・・・・ゴリゴリしてっ、はあぁっ、あぁ・・・・・・っ」
「ァアア!おくっ、おく・・・・・・らめぇっ、はっ・・・・・・はヒッ、イくっ!おく、イっ、く・・・・・・ッ」
「んんっ、イイですか?すごく、吸い付いて・・・・・・はぁっ」
 尻に打ち付けられる衝撃を堪えて白い肩に爪を立てるが、大和はお構いなしに、ダンテの奥をこじ開けようとする。腹の中をかき回されて苦しいのに、気持ちよさそうな顔で見下されると、凶悪な硬さの槌をキュンキュンと締め付けてしまう。
「あぁっ、アアッ!やまと、さん・・・・・・ッ、や、ぁあッ!そこ、こすっちゃっ・・・・・・ひっ!イく!も、イっちゃう・・・・・・」
「いいですよ。イってください。僕が奥まで擦ってあげますからね」
「や・・・・・・ぁあッ!ぁあああッ!!」
 ぱちゅぱちゅと続く濡れた音を聞きながら、ダンテはゾクゾクと背中を抜ける快感を抑えられずに、自分を穿つ大和を締め上げた。びゅるっと噴き出した白濁が、腹に飛び散り、わき腹に伝い落ちていく。
「はぁっ・・・・・・ああ、いっぱい出ましたね。可愛いです」
「ぁ・・・・・・はぁっ、はぁ・・・・・・ぁああっ、まっ、て・・・・・・!まだ・・・・・・っ、ヒッ!イって・・・・・・うごかな・・・・・・やあぁッ、イってるか、らぁ・・・・・・!!」
 大和はガクガクと震えるダンテの膝を抱え、さらに深く体を繋げるように抱きしめた。激しい動きにもがきたくても、ダンテを押さえつけた大和はびくともせず、ただ受け入れて、縋りつくように絡みつくことしかできない。
「ァ、アあぁぁッ!!」
「ふぁああ・・・・・・っ、はぁっ・・・・・・ああ、僕も、出ちゃいそうですっ・・・・・・んっ」
 ぐいぐいと突き入れられる奥は、すでに大きすぎる楔に拓かれて、大和の先端に吸い付くよう蠢くばかりだ。過ぎた快感に喘いで零れる涙を、大和の舌が舐めとっていく。
「や、あ・・・・・・っ、も・・・・・・きも、ち、いいの・・・・・・や・・・・・・ァ」
「はぁっ、あぁっ・・・・・・イっちゃいますっ、ぼく、もっ・・・・・・」
 ひときわ激しく穿たれながら舌を絡め合わせ、ダンテは全身を震わせながら、終わらないかと思った長い絶頂が、ようやく引いていくのを感じた。
 大和の体が離れると、汗ばんだ肌がひんやりと物寂しさを訴える。
「はあぁ・・・・・・っ、はぁぁ・・・・・・」
「そんな風に蕩けた顔をされると・・・・・・はぁっ」
 イきすぎて疲れ切ったダンテは十分気持ちよかったのだが、普段は動かないで快感を受け入れている大和はまだ足りないらしく、ベッドの上でよろよろともがくダンテを背後から抱きかかえ、こめかみや頬にキスを振らせてくる。
 普段ない快楽に喘ぎすぎたダンテの喉は、もうかすれた声を出すようになってしまった。
「よく、男相手に起ったね・・・・・・」
「ダンテさんに入れることができるなんて、嬉しいです。たまに僕のアイデンティティが揺らぎそうになりますが」
「大丈夫。アレが潰れそうだって悦ぶ大和さんは十分マゾだから」
「うふふっ。もう一戦よろしいですか?」
 左右で質感の違う大和の手が、ダンテの胸をむにむにと揉む。
「・・・・・・絶倫」
「僕を不安にさせるようなことを言う人がいけないんですよ」
 すみません、もう言いません、とダンテは反省したが、大和は全然聞いていない。へたり込んだダンテの背後から、どろどろに蕩けたアナルを突き上げ、体が逃げないように腕と肩を掴んでしまう。
「ッ、ア・・・・・・は、ぁあっ!!」
 ベッドに手を突くことも出来ず、自重で大和を深く受け入れざるを得ない体勢は、苦痛や羞恥よりも、背に感じる弾んだ吐息に煽られてしまう。ダンテの中の感じるところを、余すことなく擦りながら、一番奥を小刻みに突かれると、もう無理だと思ったはずの体がまた熱を持って疼きだす。
「ふ、かいっ、の・・・・・・!や、らっ、また・・・・・・また、ッぁああ!!」
「ダンテさん、奥のここをグリグリされるの、お好きですよね?」
「ヒッ、あぁッ!や、まと、さ・・・・・・ッ!ぁあっ、はっ・・・・・・やまと、さ・・・・・・んッ」
「はぁっ、もっと呼んでください」
 掴まれた腕の痛みが、自分と同じ思いを持っていてくれると期待してもいいのだろうか。
「大和さん・・・・・・やまとさん、す、きっ・・・・・・あっ、ぁあっ!やまと、さん・・・・・・ッ」
「ッ・・・・・・僕のことを好きなら、離れないでください」
「ぁ、ひっ、イ・・・・・・ぁあああッ!!!」
 どくんと脈打つ衝撃に背を震わせ、掴まれていない手で大和の腿を撫でた。大和が望むのなら、いつでも、どこででも、待っていると。
「ダンテさん・・・・・・」
「や・・・・・・まと、さ・・・・・・」
 世界なんて知らない。貴方が望むのなら、そうあるべきなのだろう。