罵倒と賛辞の二重螺旋 −1−


 ずーるずーるとベッドルームに引きずり込まれ、大和はやっとボールギャグを外してもらえた。
「っはぁ・・・・・・ひどいですよ、ダンテさん!」
「あら?」
 きょとんと青い目を瞬いて首を傾げたダンテは、服の上から亀甲縛りでがんじがらめになっている大和を床に座らせて、その前にしゃがみ込んだ。
「お気に召さなかったかな?」
「お気に召しません!ダンテさんが目の前にいるんだから、ダンテさんに罵ってもらいたいです!!」
 ダンテが頼み込んで、レパルスが嫌々ながらも五分ほど大和を罵っていったわけだが、大和としてはお気に召すはずもない。
「そんなこと言って、このバキバキに勃起した主砲は何なの?説得力皆無なんだけど」
 ダンテは呆れた様子でベッドに腰かけて、縄を押し上げている大和の股間をグリグリと踏みつけてくる。
「ひぎぃっ・・・・・・!」
「俺に罵ってもらいたいって言ってもらえるのは、とっても嬉しいんだけどね。実際問題、俺も疲れるわけで・・・・・・」
 はぁーっと溜息をつかれて、大和の中でマゾの歓喜と理性の悲哀がせめぎ合う。好きな相手は称賛と甘い愛の言葉に浸からせたいダンテからすると、大和の要求に毎回応えるのは、なかなかのストレスになるに違いない。
「レパルスに罵ってもらってる大和さん、だらしない顔になってて可愛かったよ?俺はずーっと見ていたかったんだけど・・・・・・そうもいかないし」
 ダンテとしても、自分たちの事で友人に迷惑を掛けたくないと、ちゃんと認識しているようだ。しかし、それはそれとして、ダンテに見られながらレパルスに罵られて痙攣している大和を、ひたすら「かわいい、最高にかわいい」とスマホで撮影しまくっていたので、無理を引き受けてくれた友人にドン引きされた。
「俺もえっちな感じに蕩けちゃってる大和さんを見たいから、大和さんのド変態プレイに付き合うのはやぶさかではないんだけど、たまには俺の感性に優しくしてくれてもいいんじゃないかなって思うんだ」
「あッ・・・・・・はぁ、ぁあッ」
「自分から脚開いて、人の靴底に股間を擦り付けてくるような変態だっていうのはわかっているんだけどね?大和さんはそれだけじゃ満足しない、欲張りさんだからなぁ」
「ぁひっ、ぃぎッぃッ!イ、ぃッ!!」
 ゴリゴリと縄越しに性器を踏みつけられて、大和は快楽の絶頂に身体を震わせた。ぎっちりと喰い込む荒縄のせいで、自分では上手く動くことができない。
「はぁっ・・・・・・ぁあッ」
「俺は変態プレイで気持ちよくなっている大和さんを、たくさん褒めたいんだよ。でも、気持ちよくなってもらうためには罵らなきゃいけないのが酷い矛盾で・・・・・・ねぇ、聞いてる、大和さん?」
 快楽を追うことに夢中な大和は、ダンテのしゃべっていることなんて上の空で聞いていない。穏やかな視線に見下されながら勃起して、尻の中に埋まっている物をせつなく締め上げ続ける。
 もう我慢できなかった。
「はあぁ、あぁ・・・・・・ダンテさん・・・・・・」
「なぁに?」
 ダンテはクスクスと嬉しそうに微笑んで、大和から足を退かした。退かしただけで、ガチガチに緊縛されている大和を手伝おうとはしない。
「ご褒美が欲しかったら、先にご奉仕するのが筋じゃない?ね?」
 刺激が与えられなくなったことに涙目になりながら、大和はダンテに向かって懸命に膝でにじり寄り、やっとの思いでファスナーを噛むことができた。
「ハァ・・・・・・ンッ、ンッ」
「ハハッ、必死だね。そんなにこれが欲しいんだ」
「フッ、ゥン・・・・・・」
 何度か滑って外れて、その度に噛み直して、じりじりとファスナーを下ろし終える。しかし、布のガードは意外と固くて、口だけでは上手くできない。大和は頬擦りするように首を傾げて、自分を見下ろす人を見上げた。
「・・・・・・ダンテさん」
「仕方がないなぁ」
 ベルトとボタンが外されて、やっと下着の中から出てきたペニスを、大和はぱくりと咥えた。まだ硬さの足りない楔を唇で撫で、筋に沿って舌を這わせ、奥まで咥えようと頭を振る。
「んっ、んふっ・・・・・・はっ、ぁ・・・・・・んんっ」
「はぁ、上手になったね」
「んっ」
 両腕を後ろにした不安定な体勢なので、むくむくと口の中で大きくなっていくペニスの先端が、喉に刺さりそうになる。
「ンッ、ごほっ・・・・・・はぁっ」
「大丈夫?」
「はぁ、はい。あはぁ、大きくなりましたっ」
 立派に育ったダンテの主砲を目の前に、大和はもう一度舌を伸ばしたが、立ち上がったダンテから先に突っ込まれてしまった。そっと頭を支えられ、これからされるプレイに胸が躍る。
「んっ、んふっ!ぁ、んぐぅっ・・・・・・!」
「大和さん、こういうの好きだねぇ。すごくえっちな顔になってるよ」
「うぶっ・・・・・・おっ、ぉご・・・・・・っ!ぁうっ、んぶっ!」
 口の端を唾液が滴り落ちていく。口の中いっぱいに突っ込まれた肉棒に喜んで吸い付く浅ましい自分に酔って、与えられる仕方なさそうな視線に腰が疼く。見下されながら玩具のように喉奥までおかされて、気持ちよさに頭が蕩けそうだ。
「あんまり顔にかけたくないんだよね。飲める?」
 大和はダンテを咥えたまま、コクコクと頷いた。大和としては顔射もぜひお願いしたいのだが、ダンテが大和の顔を気に入っているので、その好意を尊重する気遣いくらいはある。
 イラマチオの動きも期待していたより遠慮気味で、もっと激しくしてもいいんですよ、と舌を絡めると、弾んだ息遣いが大和の額を撫でて上を向かせた。優し気な青い目が、快感に少し上気して大和を見下ろしている。
「大和さんの喉、きゅうきゅう締まって気持ちいいよ。全部飲んでね」
「んっ、ん・・・・・・ンッんんぅ―――ッ!?」
 びゅるるっと喉に当たる苦い精液を快感のままに飲みくだそうとしたが、ごほっと咽た瞬間には、口腔内を塞ぐダンテが抜けて、すぐに新鮮な空気が流れ込んできた。
「がはっ・・・・・・ひゅぅ、げほっ、ごほっ・・・・・・」
「大丈夫?いきなりは無茶だね・・・・・・美味しくないでしょ」
 ダンテは吐き出した大和の口元を拭い、はいちーんして、と鼻までかませてくれる。甲斐甲斐しいにもほどがある。
「はぁっ・・・・・・でも、ダンテさんはしてくれるじゃないですか」
「そりゃあ、大和さんだからね。気持ちよくなってほしいし・・・・・・絶倫すぎるから、先に何発か抜いて欲しいっていうのもあるんだけど。大和さんは精力お化けだから、結構大変なんだよ」
 やれやれと呆れながら、ダンテは大和の縄を解いていく。
「もう取っちゃうんですか?」
「取らなきゃ服が脱げないでしょ?それとも、服破く?」
「解いてください。あと次回は、服の上からじゃなくて直に縛って、僕を罵ってください」
「はいはい。・・・・・・そんなこと言って、誰に罵られても気持ちよくなるんだから」
 ダンテはブツブツ言うが、そのぼやきが大和の性感を刺激する。やはり気遣われるよりも、蔑まれた方が気持ち良くなってしまう。
「あぁ、もっと言ってください」
「自分で言ってみたら?誰にでも蔑まれて気持ちよくなりたいですって」
「蔑まれたいのはやまやまなんですが、誰でもいいわけじゃないんですよ。僕にも選ぶ権利というものがありますからね」
「・・・・・・へぇ!」
「なんですか、その『めっちゃ意外だぁ!』って顔は。僕だって上手な人や好きな人に罵って欲しいですよ」
 がっちりと体を拘束していた縄がすべて解かれ、痺れた手足をぶらぶらと振って感覚を戻すと、大和はぱっぱと服を脱いだ。
「はいっ、たくさん罵ってくださいっ」
 大和が最後にまとっているのは、布面積がやたらと小さい、薄いピンク色の女性下着。小さな逆三角形に収まりきらずに飛び出している物にかぶせられたスキンには、すでに白い体液がたっぷりと詰まっていた。
「変態くさい格好をした大和さんもめちゃくちゃ可愛いんだけどね、本当に凶悪なサイズだと思うよ、その主砲は。何回出したの?」
「あはっ、わかりません。溢れちゃいそうなので、取ってしまいますね」
 服を汚さないようにと先に付けられていたものだが、たぷんたぷんと水風船のように揺れるスキンは、我ながらちょっと恥ずかしいと大和でも思う。
「それにしても、倒錯的というか暴力的というか、上手い表現が見つからないんだけど・・・・・・」
 女性下着からはみ出す大和を、ダンテはまじまじと見つめる。レースのひだも可愛らしい小さな布は、上だけでなく左右も、収まりきらない立派な玉を申し訳なさげにはみ出させている。ちなみに、バックはほとんど紐だ。
「持ってきたのはダンテさんじゃないですか!」
「喜んで着けた変態は大和さんでしょう?ほら、こっちに手をついて。お尻のプラグを抜いてあげるから」
 ベッドに両手をついて、尻を上げる。少し足を開けば、紐では隠し切れない、玩具を咥え込んだアナルが見えるはずだ。
「いやまぁ・・・・・・自分で言うのも何だけど、服の下がこれだって、言わなくて大正解だったな。繊細な友人をなくして、俺まで変態呼ばわりされるところだ」
「どうしたんです?」
「大和さんの恰好が、すごく刺激的だなってことだよ」
「あッ・・・・・・」
 こりっと尻の中で硬いものが動き、反射的に締めつけると、ずるんと出ていった。
「うん、柔らかくなってる。ひくひくして可愛い」
「はっ・・・・・・あっ、広げないで、くださいっ」
「ん?ご褒美いらない?一生懸命にご奉仕してくれたのに」
「あぁっ・・・・・・」
 中が見えてしまいそうなほど指で広げられ、どろりとしたジェルが奥まで塗り込まれていく。途中で悪戯に敏感なしこりを撫でられて、大和の腰はその度にびくびくと跳ねた。
「あっ!はっ・・・・・・あっ、そこ・・・・・・!」
「ご褒美はいらないかぁ・・・・・・すっかり後ろも開発済みになっちゃって、とろっとろ。女の子の下着もよく似合ってるよ?気持ちよくて、はみ出しちゃってるけどね。はしたないなぁ」
 背後から聞こえるクスクスと楽し気な笑い声が、じゅぼじゅぼと指を咥える大和のアナルを、きゅうと締めさせた。
「はひっ、僕の・・・・・・はしたないおちんちん、はみだしていますっ!あんっ、きもちいい・・・・・・ッ、ぁうっ!ぼくの・・・・・・はぁっ、ぼくの、だらしないおしりに、ばつをくだひゃいっ・・・・・・!」
「うん、大変よくできました」
 大和の中に入っていた指がずるりと抜けていき、さらに大きいものを期待した大和の耳に、パチーンと鋭い音が響いた。
「ひゃんッ!!」
 パチーンパシーンと尻を平手打ちされ、大和はシーツを握りしめて両脚を踏んばった。
「罰なのに、お尻を突き出して振るんじゃないの。女の子の下着はいて興奮している変態!」
「あぁッ!ひぎっ!ありがとう、ごじゃいまひゅ・・・・・・ひぃっ!」
 尻の表面がじりじりと熱を持ち、反り返ったペニスからは先走りが垂れて、レースを濡らしている。
「アッ、ぁああッ!きもひ、いいれしゅ・・・・・・ッ!!」
 ぐっと両手で広げられた尻の中心から細い紐がずらされ、大和の柔らかく蕩けた肉襞を広げるように、待ち望んだ塊が侵入してきた。
「あ、あッ・・・・・・ああぁぁッ!」
 腹の中を満たしていく勇壮な楔を狂おしく尻の襞で扱き、大和は小さな布切れに締め付けられたまま、今日何度目かの絶頂に果てた。