とおりゃんせ −1−
どこかにぶつけたかのような頭の痛みと、強い酒の匂いで、少し目が回っている。
「童、起きろ」 頬を軽く叩かれて、大儀ながら瞼を上げると、長い赤い髪をポニーテールにした男が、クロムの目の前にいた。 「・・・!?」 まだ頭がくらりとしたが、身じろぎした体がひどく小さいのに気がついた。 「おれ・・・」 細くて高い少年の声に、自分でびっくりする。慌てて体を起こすと、アークビショップの法衣ではなく、地味な色合いのアマツ風の服が掛けられていた。 (アークビショップ・・・って、なんだっけ?) 青と白の服を着て、隣に誰かがいたような・・・。そんなぼんやりとしたイメージがあったが、すぐにつかみ所が無くなり、消えていく。 着物はかなり丈が余っているので、大人物なのだろう。クロムは浴衣を着たことはあるが、ここには帯が見当たらず、合わせをぎゅっとつかんで前を隠す。 (え?着たこと・・・) 浴衣を着て誰かと歩いたような気がするのだが、そのイメージも、また遠くへ消えていく。 「見事なシロコだな。めっぽう麗しい。それに、やはり小さい方が愛でいいな」 大きな手に顎をつかまれて、クロムはまじまじとその男を見上げた。 自分の体が小さいせいもあるが、それにしてもこの男は大きく見える。座布団の上に胡坐をかいて座っているが、腕も脚も長そうで、肩幅も広い。気崩した着流しから見える胸や首も、とても逞しい。鮮やかな赤い髪は真っ直ぐで、のみで削ったような彫りの深い顔立ちは意外と小奇麗・・・まず端正と言っていいだろう。額の両側辺りから、なにか伸びているのが気になるが・・・。 「つの?」 にょっきりと生えた象牙色の二本の角は、ゆるく弧を描いて天を向いている。 「我を見て怖れぬとは、やはり大陸の者か。境界の隙間からすっ飛ばされてきたのを、魍魎どもに喰い散らかされる前に拾ってみたはいいが・・・」 角のある男は肘掛にもたれながら、うーんとあらぬ方向を睨む。 「まぁいいか。我が攫ったわけでもなし。たまには異国の珍味を頂くとしようか。童、名はなんという?」 いまいち状況がつかめないままだが、考える気力が湧かない。少しも怖れや疑いが湧かず、ぼんやりと唇が動いた。 「クロム」 「くろむ?白なのに黒か。大陸人の名前は変わっているな」 「あんた、は・・・?」 クロムに名前を訊ねられたと理解するのに、彼に一瞬の間があった。切れ長な金色の目を少し細め、ぐっと唇の端がつりあがる。尖った白い犬歯が見えた。 「強い。強いな、汝の気骨。童になってもまだ我に問えるか。よかろう、答えてやる・・・が、我の名はちと長いでな。そう・・・ミヤでかまわぬ」 赤い髪のミヤが機嫌よく手を叩くと、いつの間にかクロムの両側に、白い少年が立っていた。驚いたことに二人とも全裸で、クロムよりも白い、アラバスターのように輝く肌と髪をしていた。ただ、クロムの左側の少年は目がトパーズ色で、右側の少年は黒と青のオッドアイだった。 「いきなり我が相手をするわけにもいかん。慣らせ」 怠惰な姿勢で肘掛に体を預けるミヤに、白い少年達は無言で首肯し、クロムの両側からぎゅっと絡みついた。 「え・・・!?」 掛けられていた着物を脱がされることよりも、少年達の肌の感触に、クロムは驚いた。 (気持ちいい・・・すべすべだ) 肌理の細かい肌触りは、まるで殻を剥いたゆで卵のよう。思わずその背を撫でると、しっとりとしているのに、柔らかく手のひらを押し返してくる。 「すごい・・・」 クロムに撫でられたオッドアイのほうの少年が、くすくすとくすぐったそうに微笑む。すると、反対側の少年も、負けじと肌を摺り寄せ、クロムの頬に唇を吸いつけた。 二人の少年は、見たところ十三か十四歳ぐらいだろうか。クロムは自分の体を見て、それよりさらに幼いと確認した。・・・あまり認めたくはないが、手足は小さく、腕や脚は細い。腹なども丸みを帯びて柔らかい。体毛は無く、ちんまりとした股間の物には赤面するしかない。そういう状態だ。 なにしろ、両側の二人に軽々と抱き上げられ、柔らかな布団の上に、ぽふんとひっくり返されたのだから、まるきり力でどうこうできるレベルではない。 クロムたちがいるのは、座敷でくつろいでいるミヤから一段下がった板の間だが、布団の上なら冷たくない。それに、白い少年達の体は温かく、肌触りのよさもあって、くっついていてもらうと気持ちがいい。 ・・・気持ちいいが、それとこれとは別だ。 「ちょ・・・待って!なにするんだ!」 自分の甲高い声に若干力が抜ける思いがしたが、クロムはじたばたともがいた。素っ裸にされて撫で回される理由がわからない。腕は二人の脇の下に押さえつけられ、脚も左右それぞれに滑らかな肌の感触が絡み付いている。 「放せ!やめ・・・んぅうっ!!」 無理やり唇を合わせ、至近で見つめた薄い黄色の目が、悪戯っぽく微笑んだ。瑞々しい唇が何度もクロムをついばみ、指先は前髪をかきあげてあらわになった額を撫でている。 オッドアイの方はもっと積極的に、クロムの脇や胸を舐め、クロムの腰に半起ちになった自分の股間を擦りつけてきた。クロムを挟んで反対側の少年の腰まで腕を回し、彼の股間もクロムの腰に当たると、二人はさらに脚を絡ませて擦りつけだした。 全身もち肌でも、反ったところは硬く、染み出した雫がクロムの腰や太腿に当たって、ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てる。 「はっ・・・はっ・・・ん」 「ふあぁ・・・あっ」 「やめてぇ・・・」 左右からキス攻めにされながら、甘い吐息や喘ぎ声を聞かされ、クロムは恥かしさに頬を染めた。耳にも頬にも瞼にも首にも胸にも、柔らかな感触が吸い付き、腰には熱を持った塊が押し付けられる。 くすぐったさよりも熱い、何かむずがゆい感覚が、クロムの腰のあたりにどろどろと渦巻き始めた。知らず、呼吸が浅く速くなっていく。 「あ・・・」 「ん・・・」 左右の少年がそれぞれクロムの脚に跨り、うっすらと色づいた楔にクロムの小さな手を触れさせ、その上から自分の手で扱きだした。 「やっ・・・そんな・・・!」 つるりとした温かいピンク色の亀頭に、幼い小さな指が滑るたびに、二人の少年はせつなげに体を反らせ、クロムの腿に緩やかに股間を擦りつけながら、大きく育った楔を激しく扱いた。 「はっ・・・はぁ・・・っ!」 「・・・っく・・・んんっ!」 「ひっ・・・」 びゅくびゅくっと勢いよく噴出した白い体液が、クロムの小さな両手をべとべとにしながら、腹や胸にまで飛び散った。 他人の自慰を手伝ってしまい、おろおろとするクロムに、白い少年達はうっとりと微笑みながら、クロムの指や体に飛んだ自分達の精液を舐め始めた。そして、自分達の精液に濡れた手で、淫らな光景に半起ちになった幼い雄を玩び始める。 とろりとした迸りを絡ませた白い指に扱かれ、くちゅくちゅと音をたるクロムの雄は、幼い形ながらもしっかりと起ちあがった。 「はっ・・・はぁ・・・ぁっ!あん!」 痺れるような疼きに、クロムの小さな腰が震えだす。両胸に吸い付いた唇が、尖った先端を強く挟んだり、執拗に舐めまわしたりして、そのたびに体の奥をはじかれるような快感が、クロムの股間に響いた。 「だめぇ・・・そんなに、さわっちゃ・・・ぁあっ!」 「気持ちよさそうだな、くろむ?」 いつの間にか、すぐそばからミヤが見下ろしていた。ミヤの微笑みは、決して残酷でも意地悪でもなかったが、クロムの目に恥かしさで涙が浮かぶ。それなのに、少年達の愛撫が気持ちよく、体の芯から溶かされるような快感がまったく落ちない。 「はっ・・・はぁっ・・・ぁんっ!」 小さな袋を優しく揉んでいた手が後ろの窄まりを探り、幼い楔を扱いていた指先がわずかに頭を出した襞にかかる。クロムは両脚を開かされたままで、その自分の股間が見える。 「や、やめてぇ・・・っ!むかないで・・・!っああああ!!!」 ずりゅっと剥かれ、雫が染み出した敏感な割れ目を、滑らかな指先が小刻みに擦る。 「ぃ、やぁあああぁァ・・・ッ!!」 意識が飛ぶような快感が、腰の奥から幼い先端へ劣情を押し上げた。勢いよく飛び出した精液が、クロムの柔らかな腹や胸に降り注ぐ。 「ひぁっ・・・あぁ・・・」 がくがくと震える体にあわせるように、剥き出されたピンク色の先端からびゅくびゅくと止まらないで出てくるのが、まるでお漏らしをしているみたいで、クロムはしゃっくりを上げて泣き出した。 |