ささやかな復讐劇−3−


 風呂場で濡れた職服を脱いだ軽装で、サカキは自分のベッドに腰掛けて、目の前の光景に心の中で大きく頷いた。
 全裸にバスタオルを引っ掛けただけのハロルドは、ペノメナに担がれたまま、不安で青くなった顔に涙を浮かべていたが、オシオキを甘んじて受ける気はあるようだ。そんなにひどいことをするつもりはないのだが、意地悪したい気分も少し湧いてくる。
「他人にストリップを見せるぐらいなら、俺には触手でオナニーぐらい見せてくれるんだろ?」
「う・・・」
 嫌と言えるはずもなく顔を曇らせたハロルドだが、筋張って筋肉質な触手につかまりつつ、もそもそと体勢を変えた。大小の触手がどっさりと生えている天辺に座るよう、脚を開き、敏感なところを人外に触れさせる。
「ひっ・・・ぁ!・・・んっ」
 ハロルドは両腕両脚を拘束されたまま、一生懸命に腰を動かすが、肝心のところがいまいち起ち上がらない。
 サカキがハロルドに飲ませた薬は、その場に留まらせるための、一発分ぐらいしか効果の続かないものだ。さらに、あの触手は人肌ほど温かくない。それは自分で試したサカキもよく知っている。
 分泌される粘液でぐちゅぐちゅと卑猥な音がしているが、そもそも乗り気でないハロルドの気配と、さりとて創造主に強姦しろと命令されるでもなく、ペノメナも困惑した様子でハロルドを撫で回している。
「困った奴だな。一人えっちもできないのか」
「っ・・・ごめ、なさ・・・」
 とたんにぼろぼろと泣き出したハロルドが、サカキは可愛くて仕方がない。歳はずいぶん下だが、自分好みのがっちりした体格で、美形というわけではないが、笑顔が好ましい愛される面立ちをしている。料理は上手いし、性格は明るくておおらかで、サカキの過去には文句を言わないし、誰よりもサカキが好きだと、尽くすように愛してくれる。こんなにいい男は、世界中探したっていないだろう。
「ごめ・・・っなさい・・・、もう、脱いだりっ・・・ひっく・・・しないから・・・!サカキさん、ごめ・・・なさ・・・ぃ!やだ・・・捨てないでぇっ・・・!!」
 可愛い顔をぐしゃぐしゃにしながら訴えるハロルドに、サカキはゆっくりと立ち上がって、長い鎖のついた、丈夫な革製の首輪をつけてやった。
「俺がハロルドを捨てるはずがないだろう?何を言っているんだ」
 頬の涙を手のひらで包んで拭い、腫れた目元に何度も唇を当てて、しょっぱい涙を吸い取った。
「ほら、これでいいんだろ?ハロルドは俺のものだ」
 じゃらりと鎖を見せ付けながら、薬指の指輪に口付け、ハロルドのふっくらとしたピンク色の唇に、触れるだけのキスをした。
「サカキさん・・」
 まだしゃっくりをする唇に、もう一度、さっきより少しだけ長く押し付け、ふさふさの髪を撫でてやる。
 そうしているうちにも、ペノメナの触手はサカキの体にも這い回ってきたが、創造主は少しも反応を見せず、ただ目の前の恋人だけを見つめている。
「ハロルド、愛している。誰にも触らせない」
 泣き顔だったハロルドが、ほわりとほころんだ微笑に変わった。
 四肢を触手に絡めとられたまま、鎖に引っ張られるように顔を近づけてくるハロルドに、サカキはあやすように口付け、舌を吸った。
「はっ・・・ぁ、サカキさん・・・」
「俺を気持ちよくさせてくれ」
「は、ぁ・・・い。ぁんっ!・・・はぁっ・・・!」
 やっとリラックスしたハロルドの体は、ペノメナが与える刺激を受容して、敏感に震えた。
 唇だけはサカキと触れられそうな距離にあるが、胸の突起も、起ち上がり始めた股間の雄も、触れているのはグロテスクな触手だけだ。
「はっ・・・あっ・・・サカキ、さ・・・ぁっ!」
「もっと欲しかったら・・・なんて言うんだ?」
「もっと・・・サカキさんが欲しいです。キス、してください!」
 息を弾ませ、頬を染めたハロルドの唇に舌を這わせ、我慢できないと欲しがって開いた口の中に、サカキは触手の一本を突っ込んだ。
「うぐぅっ!?んんぅっ!!」
 ハロルドは違うものが与えられて悲しそうに抗議したが、サカキはいっぱいに頬張ったハロルドの口の端に、舌を伸ばした。
「俺が育てて、ハロルドを気持ちよくしてくれる触手だぞ。ちゃんと舐めてやるんだぞ?」
「ぅう・・・」
 サカキが頬を撫でると、ハロルドは大人しく頷いた。ペノメナに抱きかかえられるようにハロルドの体が離れていき、それにあわせて、サカキの手元からも鎖が長く伸びる。
 ハロルドの体中に擦り付けられた粘液がてらてらと光り、色付いて勃起した乳首が、いっそういやらしく見える。そこを擦るだけだった細い触手が解け、代わりに、野生ならば先端に割れた吸血口がある太い触手が、がばりと口を開いて吸い付いた。
「ふぐぅうううっ!!ぅんんっ!!んっ!ひううっ!!」
 暴れるハロルドに引っ張られて、触手がミシリときしんだが、まだ耐えられそうだ。
 サカキが改造した吸血口に血を啜るための牙はなく、柔らかな繊毛と、微量の媚薬を注入する小さな針しかない。勝手に動き回る繊毛に乳首を撫でられれば、それは気持ちよかろう。
 びくんびくんと体を震わせるハロルドの雄が、触手に絡みつかれたまま上を向いている。綺麗に色付いた先端から染み出した雫が、粘液と混じって硬い幹を伝って行く様子は、サカキの雄を奮わせ、下着の布を押し上げた。
「可愛いな、ハロルド・・・」
「う・・・うぅっ!」
「ハロルドは優しいだけなのに・・・。鎖につながれて、可哀想に」
 サカキが見上げる先で、ハロルドは触手をくわえたまま首を横に振り、サカキにもっと見えるように、膝を上げて脚を開いた。
 固くて狭い蕾には、サカキの指よりも細い触手が何本も取り付き、襞を広げるように蠢いていた。
「そんなところまでいじらせて。俺のペノは気持ちいいか?」
「うっ・・・ふうぅっ!んうぅっ!!」
 頬を染めて頷くハロルドのアナルに、もう少し太い触手が二本入り込み、奥までさらされた形のよい尻が、がくがくと震えた。
 サカキに入れるときのように、太く大きく育った雄が、もっと赤い肉色をした触手に扱かれ、いまにもはじけそうだ。
「ハロルド」
「はっ・・・は、ぁ・・・」
 サカキはハロルドの口に入っていた触手をとってやり、欲望に応じて卑猥な形に変形したその先端を、下の口にあてがった。
「やらぁっ!だ、め!そこは、サカキさんだけ・・・っ!!」
 ハロルドが口走った可愛い台詞に、イってしまいそうなほどの快感を覚えながら、サカキはハロルドの唾液にまみれた触手を手放した。
「ひぐ、ぁあっ!あっ!やぁああっ!」
 身をくねらせながら、ハロルドの中へずぶずぶと入って行く様を、サカキはうっとりと眺めた。異物に耐えようと、鍛えられた腹筋や腿の内側がひくひくと痙攣しているのを、手のひらでそっと撫で、ちゃんと見ていることをわからせてやる。
「い、った・・・ああっ!だめ!そこ、やだぁっ!!はっ・・・ああっ!」
 緩やかに抜き差しを始めた触手にいいところを擦られたのか、ハロルドの悲鳴が甘く蕩けた。
 ハロルドの体が揺さぶられるたびに、結合部からじゅぶじゅぶと粘液が滴り、大きく開脚した中心でがちがちに反り返ったペニスには、細い触手が鈴口を攻め立て、先走りを溢れさせている。
「ああっ!サカキさん!も・・・あっ!あぁっ!」
「可愛いな、ハロルド。見ててやるから、イっていいぞ」
「あんっ!ぁ・・・あっ!ひっ・・・!らめ・・・れちゃう!サカキさん・・・サカキさん、みてっ!おれ・・・ぁああ・・・ッ!!」
 顔を赤くして腰を振り、ハロルドの引き締まって割れた腹筋に、噴き上がった白濁が飛び散った。
「はぁーっ・・・はぁ・・・」
「ハロルド・・・」
 サカキが端を握った鎖にも、白い体液が当たり、とろりと滴り落ちていった。
 それを、がばりと口を開いたままの触手が、ずるずると舐め取っていく。
「ひやぁああっ!・・・やぁあっ!あぁっ!」
 過敏になった肌に付いた精液を、繊毛に丁寧に舐め取られ、力の抜けたままのハロルドの体がたまらないとくねるが、サカキがその腰を押さえつけた。
「サカキさん・・・?」
「まだ終わっていないだろ」
「へ・・・?あ・・・あっ!そんな!まって・・・!やあぁあっ!!」
 ハロルドの中に埋もれていた触手が、硬さを保ったまま、律動を再開した。