狂騒スイーツに愛を込めて−3−


 ハロルドの手から力が抜けるのを待って、サカキは口を離した。
「・・・んぅ、・・・っはぁ。美味かった」
 ハロルドに頭を押さえつけられてかなり苦しかったが、それすら薬の効果を促進させるエッセンスになる。平然と口元を拭い、手についたチョコレートに舌を伸ばして、淫らに蕩けた微笑を浮かべる。
「次は、俺な」
 ハロルドが用意してくれていたチョコレートを、すべて自分とハロルドの体にぶちまけ、胸にも腕にもこげ茶色の甘い香気をまとう。やるからには、とことん、子供のように楽しまなくては。
 放出の快楽に胸を喘がせ、くったりとなったハロルドの唇に吸い付き、ふっくらとした感触を楽しんで、舌を絡める。触る前から尖った胸は、チョコレートを塗る動きだけで敏感に震えた。
「んっ・・・」
「ふぁ・・・っ」
 サカキを抱きしめようとする逞しい腕は温かいが、チョコレートだらけになって滑っている。透明な糸を引いて唇が離れると、サカキの手に包まれたハロルドの頬にチョコレートが移り、ますます可愛く思う。
 サカキは自作のボンボンを、また二粒ほどいっぺんに口へ放って飲み込むと、三粒めはかじって割り、茂みのなくなった自分の屹立に擦って馴染ませた。
 それを間近で見つめていたハロルドの目が、欲情に濡れて熱い視線を注いでいる。それだけでサカキはたまらない疼きに負けそうで、このまま自分で擦って、ハロルドの顔にかけたくなる衝動を、必死で堪えた。
「っはぁ・・・これが、欲しいか?」
「うん、ほしい・・・サカキさんも、今日は・・・お薬?」
「今日は、ハロルドに喰ってもらうためにな。・・・もっと入れてもいいぞ」
 計算上、あと五粒ほどはいけるはずだ。それ以上は、さすがに耐性のあるサカキでも、前後不覚になる危険があるので、ベッドの傍に用意していない。
 自分で作れるのだし、薬で気持ちよくなるのもいいが、常用すると、どうしても慣れや耐性が付く。ハロルドぐらい体が若ければまだいいが、自分の年齢を考えると、この先薬がなければ起たないなどという、情けないことにはなりたくない。
(たまに、だからいいんだ)
 理性のたがが緩み始めた頭でゆるゆると思考を追いかけながら、ホイップクリームのボウルに手を突っ込む。
 氷水で冷やしながら硬く泡立てられた生クリームを、チョコレートと薬入りシロップでコーティングされた滾りに擦り付けると、サカキはハロルドの上でくるりと向きを変えた。何もしていないのにまた起ち上がっているハロルドにも、たっぷりと生クリームをまぶす。
「よし、でき・・・ぅおぁっ!?」
 上にいるサカキが位置を調整しようとする前に、すごい力で腰と太腿を引き摺り寄せられた。ハロルドの引き締まった腹に顎や頬をぶつけて、顔がチョコレートだらけになる。目の前に生クリームデコされたハロルドがあるのに、ちょっと届かない。
「んっ・・・んちゅ・・・ふあぁ・・・サカキさん甘ぁい」
「こ、こら、ちょ・・・っ!ひぁああっ!!」
 ずっぷりとハロルドの口の中に覆われ、思いっきりしゃぶられてはたまらない。丁寧に括れを舌が這いずり、薄い皮膚がさらされたところに、熱のこもった吐息がかかり、尻をつかんだ手に動かされるたびに、ぬるぬると唇に擦れる。
「ぁんっ・・・ハロぉっ・・・!だめ、だ・・・そ・・・なに・・・っ!はっ・・・あぁっ!」
 急速に高まる欲望に、効いてきた薬が追い討ちをかけ、サカキはハロルドの腹に撒かれたチョコレートを舐めながら、温かく包まれたところに気持ちよく体を震わせた。
「はっ・・・はっあっ・・・んっ、ッくぅ・・・っ!!」
「んぐっ・・・はっ・・・はふ、すごい・・・。こっちも、慣らさないと・・・」
「はぁっ・・・はーっ・・・んぁああっ!」
 生クリームその他で濡れた指が、ゆっくりと襞を押しのけて入ってくる。ハロルドの腕に絡め取られているから身動きができないのだが、密着した股間のチョコレートなどを舐め取られ、くすぐったさと気持ちよさがない混ぜになる。
「はぁあん・・・あ・・・ぁ、そこ・・・っ!」
 入り口を広げながら気持ちのいいところを擦るハロルドの指を締め、手を伸ばして目の前の雄を握るが、やはり舌が、もう少しで届かない。
「はぁ・・・ハロ、届かない。もうちょっと、緩めろ・・・」
「もうたくさん舐めてもらったから、いいですよ。それより、こっちが欲しいです」
「あうっ・・・」
 後ろに埋まった指をぐりっと動かされ、力が抜けた。火をつけておきながらハロルドの指が抜けていき、物足りなさに切ない吐息が出る。
 ハロルドはサカキの下から抜け出すと、サカキの膝をしっかりと立て、甘い香りのクリームを落とした。引き締まった尻に揉みこむ様に、白いクリームを広げ、谷間に流れ落ちていくものを、硬く起った楔で擦り付ける。
「チョコとクリームは、これに使うつもりだったんですね。俺に作らせるなんて・・・。ねぇ、いつからチョコフォンデュのこと、知ってたんですか?」
「んっ・・・は、ぁ・・・。先月、からだ。・・・はっ・・・お、まえ・・・わかり、やす・・・っ、んっ」
「うーん・・・やっぱりサカキさんには、かなわないなぁ」
 くちゅくちゅと、中途半端に刺激していたハロルドの動きが止まり、何か、硬い物が、サカキの窄まりに押し当てられた。その形は・・・立方体のようだ。
「や、あぁっ!!ハロ、そんな・・・ひぃっ!!・・・押、すな・・・ぁ!」
 ぬるぬるごりごりと入ってくるのは、チョコレート。サカキが作った、薬入りのボンボンだ。硬い角は体温で溶けるが、そうすると中身が出てくる。直接擦り込まれたら・・・そう考えただけで、奥が疼いた。
「あっ・・・あぁっ!」
「すごい。入っちゃった・・・もう一個、入るかな」
「待て・・・っ、苦しい・・・はぁっ、せめて、割ってくれ」
「はぁい」
 かり・・・とチョコレートをかじる音がして、また窄まりにチョコレートの硬さを感じた。半分になった欠片と、なにか柔らかい、温かいもの・・・。
「んっ・・・んちゅ・・・」
「ひぃっ・・・!ぁ・・・そ、そんなところ・・・!!ぁ、っぁあああ!!」
「ふぁぃ。・・・ん、もう半分も入りました。可愛いなぁ」
 生クリームやシロップが溢れ出す窄まりを、ハロルドの舌で丹念に舐められ、膝にも腕にも力が入らない。
「えへへ。それじゃ、俺のチョコバナナあげますから、サカキさんのボンボン食べさせてね」
 ぐりゅっ・・・と入ってきた熱の塊に、サカキはシーツを握り締めてのけぞった。
「ひぃいいッ!いい・・・ッ!ぐ、ぁあ・・・っ!!」
「ぅ、あぁ・・・。キツイのに、ぬるぬる・・・。あ、これチョコだ」
 ハロルドの楔でチョコレートの欠片が奥へと押しやられ、ハロルドが動くたびに、限界まで広げられた入り口が、塗り込まれたクリームを零した。
「うん、全部・・・入りました。痛くないですか?」
「はぁぁ・・・っ、すごい・・・気持ちいい・・・」
 シーツに沈み、膝を開いて尻だけを高く上げたままで、サカキは全身でハロルドの雄を感じていた。慣らしにあまり時間をかけなかった窄まりはきついはずだが、生クリームのすべりで快適だ。
「俺に飲ませたばっかりなのに、もうこんなに太くして・・・イっていいですよ」
 前を弄られながら緩やかに動かれただけで、サカキの内側がハロルドの愛撫に震え、楔に吸い付くようにきつく締まった。
「ふわ・・・ぁあっ!?あっ、ひっ!・・・あああああッ!!」
 イくと思う前に、サカキはなすすべも無く、ハロルドの手に吐き出した。
 決して激しくしてないのに、過敏に快感を拾い上げ、すぐに吐き出そうとする体がおかしい。後ろから入れられたボンボンが割れ、口径摂取した分よりはるかに早く、より強い効果を発揮したらしい。
(ヤバイ・・・っ!)
 想定外の吸収量でブッ飛ぶ危険が高いと、冷静に判断する自分が頭の隅で叫んでいるが、快楽に浸りきって、ハロルドの動きに追い立てられる体は待ってくれない。
 ぐちゅぐちゅと擦っていく太い肉棒の感触ばかりが、内側の性感から絶え間なく脳髄を突き上げて痺れさせる。
「ひぃあああアアッ・・・!!ハロっ・・・ハロぉ・・・ッ!!」
「んン・・・すごい。はっ・・・あぁ・・・こんなに・・・サカキさん、気持ちいい・・・?」
「イイッ・・・!なか・・・なかぁ・・・ああぁっ!!おく・・・入って・・・くるぅッ・・・!!」
「お薬入りのサカキさん、美味しいな・・・」
 高く支えられた腰を後ろから深く貫かれ、押し込まれたチョコレートの小さな欠片が、生クリームの中でまだこりこりと当たっている。気持ち悪いのか気持ち良いのかわからないまま、ぬるぬると受け入れるアナルは、相変わらずシロップとクリームを噴出しながら、打ち付けられる刺激を締め付けている。
(きもち・・・いい・・・)
 サカキは犬のように息を切らしながら、体が内側から溶け出すような感覚を、ぼんやりととらえた。腰の奥や背骨が、溶岩のような熱を噴き上げている。
「はぁっ・・・はろぉ・・・もっとぉ!もっと・・・かきまわして・・・ハロの、はぁンっ・・・太いの、こすって・・・!」
「うん・・・サカキさん、可愛い」
 体をひっくり返されて折り曲げられ、首筋にハロルドの吐息がかかる。熱い舌が耳の後ろを舐め、そのまま甘い刺激を流し込んでくる。
「はぁ・・・っ、サカキさん、すごい・・・気持ちいい。俺のバナナミルク、奥に、たくさん出してあげます」

だから、いっぱいホワイトチョコを、吐き出して・・・?

 煮えたぎったマグマのような腹の中に、槌のような楔が、体ごと壊されるような衝撃で何度も打ち込まれる。
 撫でられて、扱かれて、摘まれて、擦られて・・・。
「ひィッ!・・・ぁああ!ああああっ!!!」
 深く繋がるように脚を広げ、いいところを貪ろうと腰を振り、広い肩にしがみついて・・・。

いいッ!・・・イくッ!あっあぁっ!でるぅううッ!!!

 噛み付くようなキスは、チョコレートの味がした。