ほんとの君を見せて −1−
首都プロンテラの南東、衛星都市イズルード。空港と海港を有し、ルーンミッドガッツ王国にとって外国へと繋がる要所となっている。主に海外へ開かれた街、アルベルタに次ぐ港湾都市でもある。
そそりたつ岸壁を駆け上がる海風にカモメが舞い、その向こうでは時折、飛行船が弧を描きながら、北へと進路をとる。果てしなく広がる海原がキラキラと光り、空との境界で青が色分けされている。 その外海を見渡す絶好の立地から外れているというだけで格安になっている、庭付きの一戸建ての中古物件を、最近二人の冒険者が購入した。 「あんまり海のそばでも、潮風で色々傷むしな。ちょうどいいんじゃね?」 「そうだな」 一応ファミリー向けの物件であり、洒落ているというより落ち着いた雰囲気だ。しかし、料理好きなレヴィーは、大きな食糧庫を備えた広いダイニングキッチンに大満足している。いくつかある部屋のひとつは、コラーゼ専用の書庫になっており、床が抜けないか心配なほど、ぎっしりと詰まった本棚が並んでいた。 一緒に夕食を作って食べ、ゆったりとした風呂で汗を流し、寝室を占拠する大きなベッドの上でゴロゴロとくつろぐ。二人は別々のギルドに所属していることもあり、こうして一緒に過ごす時間が増えたのは嬉しい。 印象最悪な出会いから、喧嘩しながらも「友人」を経て、やっと「恋人」になり、そこからはすぐに同棲を始めてしまったが、レヴィーには少し悩ましいことがあった。 「いーやーだ!明日狩りに行けねーじゃんか!!」 「・・・・・・」 服もくつろげたベッドの上で、コラーゼがむっと頬を膨らませるが、レヴィーだって譲れないものがある。 べつにコラーゼとのセックスが嫌なわけではない。むしろ、気持ちよくなりたい。 コラーゼはけっこう上手い・・・と、レヴィーは思う。気持ちいいし、痛くないし、あったかくて幸せな気分になれる。だが、入れられると、どうしても翌日体に違和感が残って、狩りにいく気がなくなってしまうのだ。それは外で元気に過ごしたいレヴィーの感性に反する。 「だから、俺が入れればいいじゃん?それで解決!」 「・・・・・・」 レヴィーは力説するが、コラーゼの目はあからさまに冷ややかだ。 「レヴィーが俺より上手ければ、考えてもいいけどなぁ・・・」 「う・・・」 そこがネックで、この議論は堂々巡りになる。 「だいたい、なんでそんなに上手いんだよ!」 「・・・それはひょっとして褒めているのか?」 「そっ・・・そういう・・・わけじゃねー!!俺の前に何人と寝たんだよ!!」 言ってしまった後で悲しくなり、レヴィーの目がじわりと熱くなる。 「・・・そんなこと聞きたいのか?」 「うるせー!馬鹿ー!!」 「馬鹿とはなんだ!言い出したのはレヴィーだろ!」 にぶちんな上に理屈っぽいコラーゼに、レヴィーはばんばんとベッドを叩いて抗議するが、悔しいのも悲しいのも抜けていかない。 「・・・レヴィー」 子供のように頭を撫でられ、きゅっと抱きしめられ、その温もりとかすかに聞こえる鼓動に、不安は薄らいだが、小さな嫉妬は消えない。 「上手い下手って、人数じゃないと思うけど・・・」 「じゃあなんだよ」 コラーゼはなにか言いかけたが、小さなため息になって飲み込まれてしまった。レヴィーに言っても無駄と思ったのだろうか、それもなんだかシャクに触る。 「じゃあ、入れずによくさせればいいんだな?」 「前だけ触ってイかせるのは無しな」 反射的に言った意地悪だが、コラーゼは涼しい顔で反論してきた。 「レヴィーだけ気持ちよくなるのも無しな」 ちゅっと頬に触れた柔らかい感触は、いつもどおりに優しかった。 コラーゼにセックスの主導権をとられてから、レヴィーは恋人が意外とキス魔なのだと知った。あっちこっちにキスしてくれるのは、くすぐったいが自分が大事にされているようで嬉しい。 額も頬も、もちろん唇も。首筋やシャツをはだけられた胸にも、温かな感触が吸い付いて気持ちよかったのに、ふとその快感が別の場所に飛んだ。 「ぁ・・・っ!」 弓を引いて皮膚が硬くなった指に、ぬるりと舌が絡みついてきて、湿った口の中に導かれる。 「こ、らーぜ・・・っ!」 「ん?」 爪で傷付けてしまわないか心配なのに、レヴィーの指をしゃぶるコラーゼの上目遣いな眼差しと、物理的なくすぐったさに、ぞくぞくとした快感が這い上がってくる。 「はっ・・・ぁんっ・・・!」 ぴちゃぴちゃと音を立てて、関節も股も舌が撫でていき、まるで性器を愛撫するように、一本ずつ丁寧に付根まで咥え込んで、唾液まみれにされる。 「ぁ・・・はぁっ、コラーゼ・・・!」 「なぁに?」 「んも・・・他んとこも触れよっ!」 「じゃあ、反対側」 「おいっ!」 コラーゼはそれまで執拗にしゃぶっていたレヴィーの右手を放すと、左手を取り、手のひらや手首の内側に舌を這わせはじめた。 くすぐったいと言ってやりたいが、ベッドに押し倒されて抱え込まれた頭を撫でられ、密着した腰は互いの熱が布越しに感じられて、文句を言うタイミングを逃す。 「レヴィー」 「な、んだよ・・・」 ちゅっちゅっと触れた柔らかい唇から、熱い舌が入ってきて、レヴィーは背を震わせた。他の人とあまり変わらないはずなのに、コラーゼとのキスは上手く息が出来ない。 舌を舌で撫でられて気持ちいいからなのか、体の内側からくっついていたいからなのか・・・。ぼんやりとしはじめたレヴィーの頭は、それ以上考えるのが面倒になってきた。 「はっ・・・ぁ!こ・・・んぅっ」 唾液が溢れてきて、ぴちゃぴちゃという音が恥ずかしい。たくさんキスをするのはいいが、もっと他のところも欲しい。 先に舐められた指は、コラーゼの指に絡め取られたまま、するすると滑る様に撫でられ、むずむずしてしょうがない。 「レヴィー・・・」 コラーゼの濡れたような声に囁かれて、レヴィーは悔しいが、コラーゼが期待していることを言ってやった。 「・・・もっと」 「うん」 コラーゼが、それは嬉しそうに微笑むから、レヴィーも受ける方でいいかなと思ってしまう。実際、コラーゼの愛撫は気持ちいいし、レヴィーが入れるという要求以外は、ほぼすべて通っている。 「・・・はぁっ!あ・・・ぅ、コラーゼっ!」 つんと芯を持った胸の尖りを舌で転がされ、レヴィーはじりじりと上がる快感に耐えかね、コラーゼにしがみついた。キスを強請るふりをして、脚の間で硬くなったもの同士が触れるように、腰を抱き寄せる。 「ん、んっ・・・!」 「もう我慢できない?」 「はっ・・・コラーゼだって、こんなに硬ぇじゃんか」 「うん」 直に触れ合うように肌を出し、温もりがいっそう熱く伝わる。 「・・・絶対に入れるなよ」 「信用ないな・・・」 「確認しただけだ!」 なんだかんだ言いつつも快楽を優先させて脚を開いたレヴィーに、コラーゼは苦笑いを納めて、自分とレヴィーの欲望の証にジェルを垂らして一緒に扱いた。 「あぁっ!ぁ、はっ・・・あっ、コラーゼっ!」 「はっ・・・ぁ」 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が耳に響く直接的な快楽に、レヴィーはベッドに押さえつけられて動けないまま背をしならせた。 ぬるぬるとしたジェルが絡みついた硬い楔を、互いに押し付け合い、それをコラーゼの指が緩やかに撫でていく。 「レヴィーもして」 コラーゼの手に導かれて、レヴィーも自分たちの硬くなった性器に触れる。 自分のものは、いいところもそうでないところもわかるが、コラーゼの方に触れて色っぽい吐息を出させたりすると、いまのところが良かったのだと嬉しくなる。もっとも、すぐにやり返されて、そんな余裕はあっという間になくなっていく。 「ぅあっ、は・・・っ!ぁあ!コラーゼ!」 「はっ・・・レヴィー・・・っ、ん・・・気持ちいい。・・・可愛いよ、レヴィー」 頬を染めて見下ろしてくるコラーゼが、シーツを握っていたレヴィーの片手を取り上げ、下を扱く手は止めずに、器用に咥えてしゃぶった。 「あっ!あぁっ!やめっ・・・こ、らーぜぇっ!」 「んっ・・・ふ、ぁ・・・む、ちゅるっ・・・」 手で扱くのと変わらないような激しさで舌を使われ、レヴィーは甘くて強い痺れに、ぬるつく二つの肉棒を扱く手を早めた。 「ひぁ・・・!も、ぉ・・・!いく、イくぅっ!!」 「レヴィー・・・好きだよ、レヴィー・・・っ!」 「コラーゼっ!んぁああっ!!」 手と性器からの快感に、レヴィーは腰を揺らせながら白濁を噴き上げ、ほぼ同時にコラーゼの熱もレヴィーに倣った。先端を撫で回していたコラーゼの手は、それらを避けるでもなく受け止めて、レヴィーの胸より上に飛ぶのを防いだ。 「はぁっ・・・はぁ、そんな・・・わざわざ、手ぇ汚さなくても・・・」 「ふふ、この辺にかかるのがいい」 コラーゼはそう言って、二人分の精液でべたつくレヴィーの腹を、同じく白くなった手で撫でた。 「変な所にこだわるんだな」 「だって、普段はみんなが見ているじゃないか」 短い上着に覆われない腹も、戦いに不可欠な強い指も、普段と違わせていいのは自分だけだと。コラーゼの満足気に端が持ち上がった唇が、レヴィーのふやけてしまいそうな指にちゅっと吸い付いた。 |