オーロラの妖精 -7-


 王宮に滞在が決まったその夜、クロムは久しぶりにふかふかとしたベッドに転がり、うんと伸びをした。華美な場所は居心地が悪いとは思うものの、ヒースの香りが漂う広々としたベッドの気持ちよさは抵抗しがたい。
 あるいはユーインの王族感覚に慣らされてきたのかとも危惧するが、誰だって気持ちのいいベッドは好きなはずだと思いなおした。
 用意された部屋は、広いリビングと同じく広い寝室で、どちらもぬくもりのある木目と上品な調度品で揃えられた、居心地の良い空間だった。
 町の宿では入浴が不十分だったが、徹底的に旅の汚れを洗い落とし、心行くまで温かい湯を堪能すると、もう動きたくなくなる。
 清潔で柔らかな肌触りのリネンの上掛けにもぐりこみ、クロムは目を閉じた。夕食時に飲んだ、香りのよいゼータール酒のおかげで、体が優しい温かさを持っているようだ。
「クロム、もう寝ちゃった?」
「ん・・・」
 柔らかくベッドが沈むと、さらりと頭を撫でられ、クロムは寝返りを打った。ユーインがベッドに滑り込んできて、クロムを包み込むように抱きしめた。
「ユーイン・・・」
「あぁ、久しぶりだなぁ」
 しばらくぶりに、落ち着いて二人きりになり、ユーインは幸せそうにクロムを抱きしめ、柔らかいキスをいくつもクロムの顔や首筋に降らせた。
「んっ・・・は・・・」
「クロム・・・」
 ユーインの唇がクロムの唇に重なり、その間も、ユーインの手は抱きしめたクロムの体を撫で、ゆるゆると寝巻を緩めていく。
「ん、ユーイン、ここじゃ・・・」
「平気だよ。王宮の人に手を出すわけじゃない」
 そうでなければ訪問先の王宮でもセックスしていいという、王族間の暗黙の了解でもあるのだろうか。
 クロムは心の中で理解に苦しむと声を上げたが、ユーインの行為は止まらず、開かされた脚の内側を撫でられて、びくんと体がこわばった。
「っ、ユーイン・・・!」
「ここなら、いっぱい声を出しても大丈夫だよ。・・・ほら、もっと聞かせて」
「あっ・・・ひっ・・・!」
 ユーインの唇はクロムの鎖骨に吸い付き、互い合わせになった腿が、熱を持ち始めた互いの雄に触れている。胸をまさぐる手が乳首に触れ、指先が優しくつまんだりこねたりするので、クロムのそこはすぐに硬くとがった。
「はっ・・・ん、ひぁ・・・ぁ!」
「可愛いな、クロム。こんなに硬くして・・・」
「んぁああっ!」
 ちゅぅっと温かな粘膜に乳首を吸われ、クロムはむず痒い感覚が集まる腰を跳ねさせた。
「ゆ、ゆーいん・・・っ!」
「んー?」
 舌でぬりぬりと舐められ、熱く芯を持った乳首が、もっとしてほしいのか、やめてほしいのかわからないまま、クロムはユーインの赤毛に指を差し込んだ。
「あっ!あぁっ!やあぁぁっ!そ、こ・・・ぉ!」
 片方を吸われ、片方を指先でつままれ、クロムは胸を喘がせながら首を振った。気持ち良くて、たまらない。
「乳首だけで、イっちゃいそう?」
 くすりと微笑んだユーインを見上げ、クロムは観念してうなずいた。クロムとて、ユーインと同じだけの時間を禁欲していたのだ。
「そうだね、こっちもかちかちだ」
「ひっ・・・!」
 寝巻からさけだされたクロムの陰茎を、ユーインの手が愛おしげに扱き、薄紅に剥けた亀頭をぱくりと咥えた。
「んぁああっ!あぁっ、ユーイン!ユーイン、そんな・・・や、だぁ・・・っ!」
 先端から幹へぬるりと舌が這い、唾液にまみれた温かな口の中で、クロムの雄は大きさを増して先走りをにじませた。くちゅくちゅと吸い上げられ、甘い快感にシーツを握りしめたまま、悲鳴をこらえることもできない。
「らめぇぇっ・・・!で、ちゃう!でちゃうぅ・・・ッ!」
 何度かユーインに飲まれたことがあるが、そのいたたまれなさには慣れない。涙目で自分の開いた股間を見やると、クロムのものを咥えたまま、うっとりと目元を染めたユーインが、嬉しそうに微笑んだ。
 ユーインの唇が、クロムの勃起した陰茎を咥え、唾液をこぼしていた。それが、クロムの腰の奥に、ずくりと響いた。
「あっ・・・あっ、だめっ!ユーイン、おく、しちゃ・・・っ!でるっ、ぁ、ぁああっ!!」
 ずっぽりと根本まで咥えられ、きゅっと吸われるユーインの喉の奥へと、クロムは溜まっていた精液を吐き出した。
「っ、はぁぅっ・・・ッ!!」
 恥ずかしさに苛まれながらも、止めようのない放出の快感に、四肢をこわばらせていたクロムは、くったりとベッドに体を沈めた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「うん、いっぱい出たね」
 すべて飲み干し、口元を拭うユーインの笑顔が、クロムは恨めしい。
「恥ずかしいからやめてくれと、何度・・・」
「だって、俺がしたいんだもん。クロムの全部が欲しいんだ」
 これ以上クロムの何が欲しいというのか、真面目に子供のようなことを言うユーインにクロムの目が少し据わったが、ユーインはクロムを抱きしめ、額やこめかみにキスをしている。
「恥ずかしがることないよ。気持ち良くてよがっているクロムも、とっても綺麗だから」
「なっ・・・」
 ユーインの肩を押し戻そうとしたクロムだが、濃い艶光が滴ったアクアマリンの目に射すくめられた。
「でもね・・・恥ずかしがるクロムも、可愛いと思うなぁ」
「ゆ・・・」
 クロムの頬を撫でると、ユーインはするりと体を起こし、それをクロムの目の前に差し出した。
「俺のも舐めて」
 しっかりと天を突いたユーインの肉棒に、クロムは息を詰まらせながら指を添え、張り切ったカリに舌を伸ばした。
「はっ・・・ん・・・」
「あぁ、気持ちいいよクロム。もっとして・・・」
 クロムはちゅぱちゅぱと音を立ててしゃぶり、今夜はこの太いモノに何回突かれるのだろうかと、頬が熱くなった。きっと、クロムが止めてくれと言っても、何度もクロムの中をこすって、溢れるほど濃い精液を注ぎ込むのだろう。
「んふ・・・っ、はぁっ・・・ぁ、ユーイン・・・」
「どうしたの、クロム?そんな顔して・・・?」
 クロムのそこは、また緩やかに起ちはじめており、何度も暴かれて快楽を覚え込まされた尻が、早くコレが欲しいとうずく。ユーインにはすべて見透かされているとわかっているが、自分では言い出せないクロムは、ユーインを口いっぱいにほおばったまま見上げた。
「っ・・・、悪知恵がついたなぁ」
「はっ・・・ユーインの、せいだ」
 唾液にまみれた唇が少し乱暴にふさがれ、クロムもユーインにしがみつきながら、快感を求めて舌を差し出した。
「クロム・・・」
「ユーイ、ン・・・っはぁ・・・あっ!」
 ユーインの濡れた指先を谷間の底に感じ、クロムはそこが開かれる期待に震えた。クロムのそこを犯していいのは、ユーインだけなのだ。
 ゆっくりとひだを押し広げ、つぷりと指先が入ってくる。それだけで、クロムは甘い吐息をこぼし、勝手に動く異物を締め付けた。
「ユーイン・・・、っあ、はぁっ・・・」
「ねぇ、俺はクロムが欲しいな」
 聞き慣れたそのセリフは、ともすれば聞き流してしまいそうな言葉の羅列ではあった。しかし、ユーインのアクアマリンの目は、言いようのない感情を滾らせて、クロムの赤い目を覗き込んできた。
「ねぇ、クロムは・・・?」
「おれは・・・」
 ぐにっと長い指に中を広げられ、クロムは背をしならせて喘いだ。
「ぁああッ!!・・・っは、ぁ!!」
「ねぇ、クロムは・・・?」
「お、れ・・・もっ、・・・ほしいっ、あんっ!はぁっ・・・ぁ、ユーイン・・・、ユーインが、ほしい・・・ひぁっ!」
 指が抜けていき、物足りないと思う間もなく、クロムは隆々としたユーインの上にまたがされた。
「じゃあ、俺をあげるから、飲み込んでね」
「ぁ、ひっ・・・ぁあああああああ・・・!!」
 ずぶと太い先端がめり込み、クロムは長い嬌声を上げながら、自分の中にユーインを埋め込んでいった。