LOVERS 11
−数十年後。 城塞都市ザリューツェン。 古代遺跡が散らばる砂漠地帯にあり、天使族との戦闘区域に程近い、魔族の大規模駐屯地である。 強い日差しを遮るように、高く設えた石壁と石壁の間の狭い路地から、切迫した女の喘ぎ声が微かに聞こえた。 「あんっあぁっ・・・あ、レグ・・・レグヴァルト、もぅ・・・あ、ああっ!」 片脚を高く抱えられ、両腕で筋肉の盛り上がった肩にしがみついている以外、女の体重を支えているのは、女の愛液に濡れ光りながら抜き差しされる男根のみだ。 「奥様、そんなに声を出されては、表に聞こえますよ」 「はぁっ、あ・・・だって、だって・・・あっ、い、いくっ!ダメ、そこ、こすっちゃ・・・あ、ああぁっ!!」 若い雄を深く埋めて達した女は、細い首を見せ付けるようにのけぞって、長く赤い髪を砂っぽく熱い空気になびかせた。 レグヴァルトと呼ばれた男は、その乱れた胸元に頬を寄せ、細身に不釣合いなほどたわわな果実を、いささか乱暴につかみ、止めていた腰を強く動かした。 「はぁっ・・・ん、奥様・・・綺麗です。・・・俺もっ」 「あ、ひっ!う、動いちゃ・・・あんっ、坊や・・・ああっお、奥までっ!硬いわ・・・ああ、そこぉ・・・!」 「はあっ・・・はぁっ・・・あ、で、ちゃいますっ・・・」 「いいのっ・・・いいの、坊やの・・・あたくしの中に、お出しなさい!」 レグヴァルトは、それまで体の上に乗っていた女を石壁に押し付けて両脚を抱え上げると、激しく音を立てて己の肉棒を突き入れた。 「あっあぁっ!・・・カディナさ、まぁっ!」 「ひぎぃいっ!・・・あ、ああっ・・・ぁひ、ぃ」 どぴゅどぴゅと勢いよく吐き出された若い精は、女の子宮を満たして、とろとろと溢れ出した。 「は・・・ぁ、レグヴァルト・・・可愛い子」 長く真っすぐな黒髪をかき抱き、女はうっとりと目を細めた。厚めの唇に赤いルージュを引き、奥様と呼ばれるに相応しい年齢に見える。 抱えていた女の脚を、気遣うようにそっと下ろした男はまだ若く、切れ長の目をした、いかにも女が喜びそうな繊細な顔立ちをしていた。その首には、剣奴であることを示す、無骨な首輪がはまっていた。 「奥様・・・」 「レグヴァルト、お願いだから、さっきのように名前で呼んで」 「・・・カディナ様」 「あぁ、ん・・・」 深く舌を絡めあうと、レグヴァルトはカディナをしっかりと抱きしめたまま、耳元で低くささやいた。 「ロード・カリュウズ様が、お疑いです。そろそろ、おやめになった方が・・・」 「いやよ!」 夫の名に目をむいたが、剣奴の力で抱きすくめられたままでは、カディナには抵抗ができない。 「あたくしを・・・夫に売るつもり?」 「まさか。しかし・・・ばれたら、俺が殺されますよ?」 「それもイヤ!」 噛み付くように、だが、甘えるように身をくねらせて、カディナはお気に入りの愛玩奴隷の耳元に舌を這わせた。 「っ・・・カディナ様」 「なんとかしなさいよ。自分の身ぐらい守れるでしょう?」 まったくわがままな女の言い草に、レグヴァルトは軽くため息をついた。奴隷の身分では、城塞都市の管理者であるカリュウズの妻の命令には、どうしたって逆らうわけにはいかない。 「では・・・ご相談があります。カディナ様のお力で、なんとかお取り計らいをいただけないでしょうか」 ぼそぼそとレグヴァルトが囁くたびに、カディナの表情が七変化したが、最後には満面の笑みでうなずいた。 「わかったわ」 「俺にはカディナ様だけなんです。・・・離れたくありません」 「いい子ね。全部あたくしに任せなさい」 何度も軽いキスを重ねると、カディナは身支度を整え、ショールで顔を隠し、腰を振りながら路地から出て行った。 その後姿を確認すると、レグヴァルトはカディナが出て行ったのとは逆方向の暗がりに歩き出した。 「あーもぉ、あのガバガバ女、豊胸手術の前に狭窄手術が必要だっつーの。まぁた服が汚れたし・・・」 ぶつくさと口の中で文句をたれ、粗末な着衣をぱたぱたと掃って、砂を含んだ長い黒髪を指で梳いた。その髪に、女のきつい香水の匂いが移っていることに、秀麗な顔をしかめる。 「もう少しの辛抱だ。がまんしろ、俺」 不満たらたらな顔を引き締め、若い剣奴はコロシアムの近くにある自分の宿舎を目指した。 |