LOVERS 2
まったく誤解を解く暇もなく、ジュンはケイオス王宮の会議室へと案内された。
雷の王に会えるのなら、その道順はどうでもいいのだが・・・ 「微睡みの君主さまが、わざわざエントランスにおまわりになるなんて、お珍しい」 「いや、だから違うんです・・・」 外見どころか、声までそっくりで、双子のようと言っても、過言ではない。二人を並べて見たことのある者でなければ、なかなか見分けがつかないほどなのだ。 以前、ジュンはケイオス王宮の奥向きで働いていたことがあるが、それを見たことがない表向きの職員には、よく一人でやってくる微睡みの君主と見分けることは難しいだろう。 いくら違うと言っても、また新しい遊びの一環かと思われているようだ。 「失礼します」 重厚な樫の扉を押し開いて滑り込むと、たわわに実った巨乳に組み付かれた。 「うげっ・・・」 「んまっどろみちゃぁあん!」 むぎゅうと、男のような力で抱きつかれ、ジュンは息が詰まった。 「い、雷の王さ・・・ま、俺です」 「んん〜・・・あら、ジュンじゃない」 「はい、そうです」 「ちょっとぉ、だぁれよ、微睡みちゃんが来たって言ったの!違うじゃない」 プンスコと怒りながらも、雷の王はジュンを抱きしめた腕をはずさない。 「あの・・・会議は?」 「微睡みちゃんが来たからおしまぁい、って言ったんだけど。・・・アンタ、どうしたの?」 「我が君より書簡を預かってきました。直接、雷の王さまに渡すよ、う、にぃ・・・ぅぎ」 むにゅんと柔らかい胸は、触れていて気持ちがいいのだが、女の姿とはいえ、魔王たる雷の王の膂力で抱きしめられると、かなり痛い。 「一人でおつかいが出来るようになったのね!羽も尻尾も隠れるようになったし、すっかり一人前じゃなぁい」 微睡みの君主によく似た顔に、すりすりと頬ずりをする雷の王は、やはり会議を再開するつもりはないようで、ジュンの手を取って、さっさと居住区へと歩き出した。 「あの子がアンタを、自分の側から離すなんて、珍しいわね」 「いま、本さまがラクエンにおみえになっているんです」 「あーはん。それだけでアンタをおつかいに出すっていうのは、ちょっと説得力ないわ。・・・二人で何か企んでいるな〜」 いつものリビングには、いつもどおり巨大ソファが鎮座していた。 そこへぽいとジュンを放り出すと、雷の王はためらうことなく、のしかかっていった。 「えっ・・・ちょっと!?」 「あら、アタシまだ、単品でアンタを食べたことないんだけど?」 「俺はセットのポテトですか・・・って、そういう問題じゃなくてですね。急いで持っていくように言われたんです。せめて、手紙に目を通して・・・わぁっ!」 雷の王は、ジュンの言うことなんか、ちっとも聞いていない様子で、てきぱきと荷物を脇によけて、服に手をかける仕草には、遠慮とか躊躇いとかいうものが、微塵もない。 「この服、微睡みちゃんの趣味ね。全部脱がなくてもできるとか、どこまで面倒くさがりなのかしら」 前後どちらからでも全開になるファスナーがついたホットパンツなど、ジュンもよく作ったなと感心したぐらいのデザインである。見た目は普通なので、どちらかというと「それ、下着なしではくんだよ」と言われた時と、実際に他人にファスナーを開けられる時の方が、何倍も恥ずかしいのだが。 「製作チームに、何度もダメ出ししていましたよ」 「そういうところだけは、まめなのよね。着ていて、どう?」 「着心地はいいですよ。締め付けないし、蒸れないし。でも、体の線に合っていて擦れないというか・・・」 「ううーん、なるほど・・・」 「・・・って、そこ開けないでくださいぃ!」 懸命に股間を守ろうとするが、半分押し倒されているような不安定な状態で、脚の間に雷の王がいては、自然に体を支える方に腕がいってしまう。 「あら、簡単。これいいわねぇ」 「いいかもしれませんけど、よくありませ、んっ・・・!」 引きずり出されたモノの裏筋を、指の腹でなぞり上げられただけで、ジュンは思わず喉をそらせた。 「いい反応。さすが仕込まれ方が違うわ」 ニヤリと口の端を吊り上げた雷の王が、生傷のある若い肌に覆いかぶさる。そのしなやかな姿は、黄金色の肉食獣に似て、美しかった。 |