キャラメルと包み紙‐3‐
自分のマイルームに戻ってきたイグナーツは、体を洗って背中の具合をチェックした。
「うへぇ・・・・・・ひりひりする」 蚯蚓腫れと打撲痕だらけで酷いことになっていたが、少々のひっかき傷以外はほとんど血が出ていなかった。それよりも、気分が乗らないまま事に及んだ尻の方が、鈍く痛む。 「・・・・・・んー、ちょっともったいなかったな」 今までに痛いプレイをして、ここまで軽傷で済んだのは数えるほどしかない。痛いことはしないとしてヤり始めた、互いの誕生日くらいではないだろうか。 (あんなにムキにならないで、ちゃんと付き合ってやればよかったかな。そうすればえっちした後に、ぎゅぅってしてもらえたかなぁ) 痛がり損だぁ、と思っても、それは結果論でしかない。あの時は、とにかく冷めてしまったのだから、しかたがない。 (そういえば・・・・・・俺、そんなに太ったかな?) 接合部周辺に全体重がかかって非常に苦しかったのだが、鏡の中には、すらりと引き締まった身体の青年がいた。しっかりと筋肉が盛り上がって見えるが、脂肪が無いせいでそう見えるだけだ。もちろん鍛えていないわけではないが、後輩のような本物のマッチョに比べられるものではない。薄くなった胸の手術痕やエネミーとの戦いで負った傷痕よりも、イーヴァルに付けられた傷痕が目立ちまくる肌は、気軽な露出を躊躇わせる。 両手で頬を挟んでみると、肉付きが薄くてこけていた昔よりは、多少手触りがよくなったような気がするが・・・・・・。 (・・・・・・・・・・・・) 濡れた前髪をかき上げているせいで、まったく可愛げのない目が、鏡の中からイグナーツを顰め面で見つめている。 (わかんねー。たいしてかわんねーよな) 肥満は腹がゴロンゾランのようになってから心配すればいい。まだまだイーヴァルに「太れ」と言われている最中なのだし。 身体の水気をふきとってから首輪を身につけると、バスタオル一枚のままで、イグナーツはベッドにダイブした。そこには、貴重な戦利品を置いてあった。 「えっへっへぇ〜!ちょーレアな、イーヴァの使用済みワイシャツ、ゲットしたぜ!ん〜っ、あそこで気が付いた俺、あったまいい〜!!」 ☆いくつかな、などと冗談で唇をゆがめながら、イグナーツは『レイヴン』のタグがついた大きなワイシャツに顔を埋めた。 (イーヴァの匂い〜。えへへ、俺、変態でもいい。いい匂いだなぁ〜) くんかくんかと犬のように鼻を押し付け、胸いっぱいに好きな人の匂いを吸い込んだ。ワイシャツからは、かすかな体臭に混ざって、穏やかなパルファムの香りもした。イグナーツが嗅ぎ慣れた、イーヴァルの匂いだ。 本当は本人にくっつきたいのは当たり前だが、イグナーツの恋人は、ベタベタ甘えるには近寄りがたいのだ。心の準備と、なにより「痛くしない」「監禁しない」という確約がないと、迂闊に近寄れたものではない。ただ、「直に目を見ようとしない」だけは、きちんと守ってくれるようになったので、ちょっと安心しているところだ。 (むーん、もうちっと優しいといいんだけどなぁ) 服飾業界にいるくせにイグナーツの気にいっているシャツを破った事からもわかるように、揺るぎなく自分本位の感性で判断し、身勝手が服を着て歩いているような人間だ。それをまかり通してしまえる強いイーヴァルを、イグナーツはけっこう気に入っているのだが・・・・・・。 (俺わがままかなぁ・・・・・・) 強いイーヴァルが好きだけど、自分には優しくしてほしい、そんなのって可能だろうか。 (ぎゅぅってして欲しいなぁ・・・・・・) ぎゅぅっと大きなワイシャツを抱きしめると、イグナーツを抱きとめてくれる温かい胸を思い出した。 (・・・・・・あ、起った) そういえば、イーヴァルの部屋ではイっていなかった。 イーヴァルのシャツに袖を通して、痛む背中をかばって四つん這いになり、むずむずとした熱に手を伸ばすと、すぐに元気よく硬くなった。 「ん・・・・・・は、・・・・・・ぁっ」 安易な快感を求めて指を動かし、裏筋やむき出しで主張する先端を擦った。長すぎる袖がさわさわと内腿を撫でて、余裕のありすぎる襟元が首筋や頬に触れては、イグナーツを優しく包んだ。 「ふ、ぁ・・・・・・っ、はぁっ、イーヴァ、イーヴァ・・・・・・っ!」 自分を包む大好きな匂いでイーヴァルにしてもらっているような錯覚がおこり、頭の芯がふんわりとして、体の奥がきゅんきゅんとせつなくなった。高ぶった先端からにじみ出た滴を竿に擦りつけ、ますます呼吸が弾む。 「はっ・・・・・・ぁ、あぁ・・・・・・!」 (ふあぁ、気持ちいい・・・・・・) 気持ちいいのはいいのだが、このままでは、すぐにオーガズムに達してしまいそうだ。はふはふとシャツに顔を埋め、手の動きはいっそう激しくなる。 (イーヴァ、もっと・・・・・・もっとぉ・・・・・・) 優しくしてくれるイーヴァルをイメージする。後ろから抱きしめて、頭を撫でてくれながら、イグナーツの硬く反りかえったペニスを扱いてくれて・・・・・・。 見下ろしてくる妖艶な眼差しが冷笑を刻んで、イグナーツはひっと息をのんだ。 「あっ、あぁっ!やっ・・・・・・ぁ!?」 ずくんと腰に響いた快感に手が止められず、イグナーツは身を捩って、そのイメージを振り払おうとした。 (や・・・・・・っ、そんな・・・・・・見、るなぁっ) よがるイグナーツを楽しげに見下ろすイーヴァルのイメージは、優しく抱きしめてくれるイメージよりも、ずっと容易に像を結んだ。強引で、嗜虐的で、意地悪で・・・・・・それなのに、とても綺麗で・・・・・・。 (やべ・・・・・・っ、イっちまうっ!) ぞくぞくと背筋を伝う快感が内股をこわばらせ、さっきまで占領されていた尻の奥がうずく。まだイきたくないという希望とは裏腹に、理性に従う気のない指先が、感じるくびれを擦り、先端をぬるぬると刺激した。 (イーヴァ、イーヴァぁ・・・・・・!!) 「んぅっ・・・・・・はっ、はぁ・・・・・・ぅぁぁッ!」 びゅるるっと吐き出された精液が、手に納まりきらずに、シーツの上に敷いていたバスタオルを汚した。 「はぁーっ・・・・・・はぁー・・・・・・気持ちよかったぁ・・・・・・」 気怠さにくったりとなりながら、バスタオルで汚れをふき取った。 (んー・・・・・・もうちょっとしたい) 疲れてはいるのだが、いつもが涸れるまで搾り取られるせいか、一回の自慰では物足りない。特に、痛みが薄れ、やる気になっている尻が問題だ。 (うー、ま、いっか) おさまらないのを持て余すよりは、なんとかイってしまった方が楽だろう。イグナーツはごそごそと大人の玩具箱をあさり、卑猥な形の電動プラグを引っ張り出した。抱くよりは抱かれる方が多かった時期に、慣らすために使っていたものだが、最近は出番がなかった。 (うん、こんなもんかな) イグナーツはプラグの凶悪な凹凸にたっぷりと潤滑ジェルを絡ませると、長いシャツの裾をまくりあげて、自分のアナルにあてがった。 「んっ・・・・・・はっ・・・・・・は、ぁ、ああ・・・・・・ッ」 ゆっくりと自分のペースで押し込み、押し出されようとするのを、さらに押し込んだ。 (すげ、いい・・・・・・ッ!) ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて出し入れを繰り返し、少しずつ深く飲み込んでいく。押し込むたびに凹凸がアナルの襞に埋まり、せつなげに接合部がうごめくたびに、ジェルが溢れ出た。押し返そうとする自分の身体に逆らい、力を込めて硬い玩具を全部押し込む。 「はぁぁっ、んッ!・・・・・・く、はぁっはぁっ」 しがみついた枕に顔を埋め、開いた脚の間では、起ちはじめたものがプラグを押し込む腕に当たった。 (ちょっと、きついかな?) 締め付けが強くて押し返すばかりで、この姿勢ではプラグが安定しなさそうだ。イーヴァルに後ろからされていると思えば気持ちいいのだが、余計に締め付けて抜けてしまう。 (痛くても、我慢!) そうっと肩を倒し、慎重に腰を落とす。大きなシャツがよれないように引っ張り、イグナーツは息を詰めて、なんとか仰向けになることができた。 「いってえ・・・・・・」 いまだに腫れている背中をベッドつけるのは痛かったが、それよりも快楽を優先させることにした。 「はぁっ・・・・・・んっ」 開いて膝を立てた脚の間には、すっかり元気を取り戻して汁をこぼすペニスが勃起していた。 尻に埋めたプラグはなんとか納まっていたが、少し位置が悪い。イグナーツは手を伸ばし、でっぱりがいいところに当たるよう、慎重に玩具を動かした。 「んッ、ぁひッ、ぁあああ・・・・・・ァッ!!」 思わず恥ずかしいほどの声が出たが、ごりりと当たる所からの刺激が脳髄に走り抜け、一気に理性が溶け消えた。 「イーヴァ・・・・・・イーヴァぁ・・・・・・ッ!」 快感に身悶えるたびに痛い背中を擦ってしまいながら、ジェルと自分が出したもので濡れた指で乳首をつまみ、引っ張り、こねまわした。 「やぁ・・・・・・ッ、ん、気持ち、いい・・・・・・っイーヴァ、イーヴァ、もっとぉ・・・・・・っ!もっと・・・・・・はひっ、ぃあぁ・・・・・・!イく・・・・・・!イく、イかせ、てッ・・・・・・っぁああ!!」 なるべく快感を長引かせようと前には触らず、乳首をいじりながら腰を揺らし、いよいよ我慢が出来なくなってきたところで、はちきれそうなペニスやぱんぱんになった袋を素通りし、プラグの電動スイッチをオンにした。 「ひっぁああああああッ!!」 長い袖口ごとシーツを握りしめ、浮き上がった腰で震えるプラグを締め付け、ますます前立腺に当たって、強制的に出すよう内側から刺激される。 「イーヴァ、イーヴァぁ、もうダメ・・・・・・なか、なかダメぇ・・・・・・っ!もぅ、イく!なかで・・・・・・プラグでイっちまう!はぁっ、ああっ・・・・・・イーヴァ、して・・・・・・イーヴァ、なか、もっとぉ・・・・・・あぁっ!!」 優しい匂いに蕩けた頭でイメージを追い、舌を出して喘ぎながら、細かく強く振動するプラグに何度も腰をこわばらせる。プラグが抜けないように片手で押し込み、もう片方の手で溢れだす汁を擦りつけながら激しく屹立を扱いた。 淫乱な身体だと嬉しそうに唇を歪めるイーヴァルと、激しく突き上げ、かきまわしてくる太い楔と、中に出されるたくさんの白濁した精液は、熱くて、濃くて・・・・・・。 「らめぇっ・・・・・・イくぅ!気持ちよくて、イくぅッ!はひっ、イーヴァ・・・・・・イーヴァぁッ!!・・・・・・っくああああぁッ!!」 びりびりと苛むプラグに押し出されるように、擦り続けられたペニスの赤く色付いた先端から、二回目の精液がびゅるるっとほとばしり出た。 「はぁっ、ふぁああ・・・・・・ッ!」 イった後も無機質で容赦のないプラグの振動にがくがくと腰を痙攣させたイグナーツは、震える指先でスイッチをオフにし、どろどろになったアナルからプラグを引き抜くまでに、また二、三回ほど残滓を絞り出した。 「はぁー・・・・・・っ、はぁぁ・・・・・・ん、イーヴァぁ・・・・・・」 くんくんとシャツに顔を埋めて大好きな人の匂いに沈んでみたが、快感の波が引くと同時に、火照った体が気怠く冷えていくばかりだった。 「・・・・・・はぁーぁ」 イグナーツは起き上がると、ぼさぼさになった髪を、タオルで拭っても精液臭い指でかき回した。ぼんやりした頭でベタベタになった身体を見下ろし、いわゆる賢者タイムが落ち着くのを待って、ぎこちない足取りでもう一度バスルームへと向かった。 |