取扱注意


 どーんとベッドが置かれた部屋に連れ込まれ、鍵もかけられてしまった。どうやら一人で出させるつもりはないらしい。
 それはそれで、構わないのだが・・・・・・。
「大和さん、今日は何をしたいんですか?」
 ダンテの愛しい人は、いつもの逢瀬よりも、明らかに機嫌がよい。
「ダンテさんが媚薬でキメセクしないと出られない部屋です!!!」
 効果音があったら、ばばーんと太い文字が背景に飛びそうな勢いで、大和は胸を張る。少し前に流行った、「○○しないと出られない部屋」のつもりだろうか。
「・・・・・・え、自作?」
「はい!!」
 我ながら間の抜けた問いだとは思ったが、大和は大真面目なようだ。鍵は僕が持っています、とバラすが、ダンテが奪いに来ないと信じ切っているのだろう。
 ダンテは軽く頭痛を訴え始めたこめかみを揉み、状況を整理しようと試みた。
「・・・・・・ツッコミたい所は多いんだけど、そもそも俺には、人間が作ったそういうものが効かないっていう・・・・・・」
「大丈夫ですよ、サマンサさん作ですから。『レパルスに効果があったのを、直接打ち込めるようにしたから、ダンテにも効くはずよ』と、お墨付きです」
(レパルス――――――ッ!!!)
 友人が被った災難に、ダンテは目頭を押さえる。なんでもこなすスパダリなのに、彼がセ〇ムしている魔女のおかげで、相変わらず変なアクシデントをその長身に受けているようだ。
「えぇー・・・・・・大和さんのお注射は十分間に合っているんだけどなぁ。ぶっ飛んでるところ見られるの、恥ずかしいんだけど」
「ダメですか?ダンテさんの乱れ具合をレポートすれば、サマンサさんに僕用の特製媚薬を作ってもらえるんですが」
(サマンサさんんんッッッ!!!!!)
 実験結果の収集はレパルスだけにしておいてくださいと叫びたかったが、うるうると目を潤ませる大和の期待には応えねばならないだろう。ダンテも、媚薬で乱れた大和の姿を見たいし・・・・・・うむ、すごく見たい。
「んんッ・・・・・・よし、大和さんがそう言うなら」
「わあっ、ありがとうございます!ささ、腕を出してください。ちょぉっとちっくとしますよぉ!」
 ダンテは目を輝かせている大和の前に腕を差し出し、怪しげな液体が詰まっている注射器の先端から目を逸らせた。

 乱れた呼吸に震える背を撫でると、びくりと跳ねてくぐもった小さな悲鳴が聞こえた。
「ダメですよ、ダンテさん。そんなに食いしばったら、唇が切れちゃいます」
 火照った頬を両手で包んで上げさせると、いつも緩く優しげな目が、とろんと潤んで大和を見上げてくる。
「はぁっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
「どうです?気持ちよくなってきましたか?」
 耳の下や首筋を撫でると、痙攣するように体が震え、瞑った目の端から涙がポロリと零れた。
「ふぁ・・・・・・ぁ」
「ふふふっ、ダンテさんもチョロいですね!このくらい身動きできないようにしておかないと、すぐに僕がやり返されてしまいますから」
 うきうきとダンテのシャツを脱がしにかかる大和は、ヤる気十分だ。普段はダンテがくすぐったがってやらせてくれない愛撫を、これでもかとやるつもりだ。
「や、まとさ・・・・・・ぁん」
「たくさん気持ち良くしてあげますからね」
 力の入っていない唇を舐めるように塞ぎ、はだけたシャツの間から手を滑らせると、大げさなほどに体が跳ねる。
「んっ、ふ・・・・・・ぁっ!はぁっ・・・・・・んぅっ」
 温かくもちっとした肌触りの胸を執拗に撫で、触れる前から尖っていた乳首をつまみ上げると、震える手が必死に大和の腕に縋りついてくる。
「ひあぁっ、ぁあっ!や、らぁ・・・・・・っ」
「どうしてですか?」
 唇で耳朶を噛み、わざと息がかかるように舌を這わせると、逃げるように顔を背けられたので、耳の下から首筋に、甘噛みするように歯を滑らせ、鎖骨の上で強く吸い付いてみる。
「ひあぁぁああッ!やっ・・・・・・ぁああっ、ああぁッ」
「ふふふっ、この辺、特に弱いですよねぇ」
「はぁっ、ひっ・・・・・・ぁ、はぁっ・・・・・・うぅ、いじ、わる・・・・・・っ」
「意地悪だなんて・・・・・・心外です」
「ッぁああ!」
 ぐずる目尻や頬に、あやすように口づけ、熱に浮かされるように大きく上下する胸から引き締まった腹に、冷たい義手で撫で下ろす。尖り切った乳首を口に含んで舌先で転がすと、我慢できないと訴えるように身じろいで腰が浮く。
「ぁ、も・・・・・・はあぁっ・・・・・・ぁあっ、やま、と、さ・・・・・・んっ!」
「まだくすぐったいですか?」
「ちが・・・・・・ふぁあっ、ぁあっ、きも、ちいいっ」
 大和の脚にジーンズ越しの内腿が擦り付けられ、シャツの肩を掴む指に黒髪が絡まっている。普段なら指先一本にまで注意をはらうのに、こんなに余裕がないダンテが見られたのなら、媚薬は十分効果があったとみていいだろう。
「はやく・・・・・・はぁっ、はやく、大和さんが、ほしい・・・・・・」
「・・・・・・そんな顔をされたら、僕の理性がもちません」
「はっ、ぁんンッ!」
 ジーンズ越しになぞる昂りは硬くはちきれそうで、大和は求められるままに衣類の囲いから解放して、自分の口腔に収めた。
「ァアアッ!あっ、やらっ!イっちゃう・・・・・・ッ」
「んん・・・・・・」
 震える腰を押さえつけて深く咥え込もうとしたが、上手くいかずに舌が裏筋をなぞりながら抜けてしまった。
「ヒッ・・・・・・ァ!」
 突然生温かい粘液が降ってきて驚いたが、顔面にかかった独特の臭気に、うっとりと口元が緩む。
「あはぁ〜っ、これが顔射ですね!実はけっこう憧れていました」
 髪についた分を取るのが意外と厄介だと気が逸れている間に、むくりと起き上がったダンテにベルトもファスナーも降ろされてしまう。
「あ、ちょっと・・・・・・」
「ふぁ、はむっ」
「んっ・・・・・・」
 敏感なところを温かい粘膜でこすられて、思わず息が詰まる。ゾクゾクと這い上がってくる快感が身をすくませ、大和は自分の怒張を咥えるふわふわした栗色の頭を撫でた。
「あぁ、気持ちいいです」
「ふ、ぅっ、んっ・・・・・・は、ぁ」
 ずるずると啜るように口淫を続けるダンテの上手さに、やきもちが少し胸を焙ったが、頬を染めて見上げてくるダンテの、欲情に蕩けた顔を見ただけで笑みに変わる。
「そんなにこれが欲しいですか?さっきもすぐにイっちゃいましたし・・・・・・」
「ん、んふ・・・・・・はっ、大和さんが欲しい」
 互いの性器を舐めあった唇を合わせ、唾液まみれの舌を吸い合う。ダンテの腕を首に巻き付かせたまま、大和はダンテの後ろを探り、十分に解けているのを確認する。
「ぷは・・・・・・っ、はぁ、アァッ!やまとさん・・・・・・そんな、に・・・・・・」
「うふふ。またイってしまいますか?」
 腰を揺らめかせながら栗色の巻き毛頭が頷き、せつなげに吐息を漏らした。
「はやく・・・・・・俺の中、大和さんでいっぱいにして・・・・・・」
「わかりました。素直なダンテさんがとてもセクシーで、僕もあまりもちそうにないです」
 ベッドに押し倒して、恥ずかしそうに広がった柔らかな尻をさらに押し分ける。
「はぁっ・・・・・・ん、ぁあああッ!!」
「あぁっ、すごい・・・・・・」
 いつもは固く締まるばかりの中が、奥へと誘う様な締め付けは変わらずに、とろりと柔らかく大和に絡みついてくる。痛みよりも腰を立たなくさせるような快感が、大和の胸を喘がせ、さらに力を膨らませる。
「あっ、あ・・・・・・、ま、って・・・・・・やっ、あああああぁッ!」
 我慢できずに少し動いただけで、かきむしるようにシーツを掴んだダンテの体が痙攣し、大和に押し出されるように再び白濁を噴きだした。
「はっ・・・・・・はぁっ・・・・・・」
「ふふっ、入れただけなのに・・・・・・そんなに気持ちよかったですか?」
「はぁっ、あぁっ・・・・・・おく、きもち、いい・・・・・・ッ!やまとさん、やまとさんっ、ぁあっ!もっと・・・・・・」
 ぐちゅりと奥まで押し込み、蕩けた笑顔で欲しがるダンテをかき抱くように口づける。気持ちよさそうに痙攣するダンテの中が、ぎちぎちと大和を締めつけ始めた。
「んっ・・・・・・もっと、やまとさんをちょうだい」
 首筋に当たる吐息のような囁き声が、熱い舌と冷たい牙の感触を押し付けてくる。
「ッ・・・・・・」
 大和を捕まえる爪にがりりと掻かれる肩の痛みと、首筋に穿たれた捕食者の本能が、大和にこの上ない快楽を誘発させる。
「はぁっ、はいっ、こうですか?もっと奥ですか?あぁ・・・・・・、気持ちいいです・・・・・・っ」
 くらくらする意識とは裏腹に、大和の体はダンテの体を激しく貪り、とめどない絶頂に深く長く泥濘のような熱い快楽を吐き出した。
「はあぁ・・・・・・もっとください・・・・・・」


−後日、某所

「あら、ダンテ。お肌がツヤツヤしてるわ」
「大和さんからいっぱいご飯貰ったからねー。薬でふらふらしてたから、けっこう思いっきり噛みついちゃったはずなんだけど、大和さんは相変わらず気持ちいいとしか感じてないよ」
「ヤマトは見かけによらずタフガイよね。ダンテはあの薬で不調が出てないかしら?」
「特にないけど、激カワショタ大和さんと夏休みを過ごす夢を見たよ。虫取りしたり、スイカ食べたり・・・・・・でも、水遊びをしている最中に、ショタ大和さんが『自由課題で装甲の限界を知りたいので衝角ラムで突っ込んでください』って言いながら海パンずらしだしたところで目が覚めた」
「ダンテの趣味が丸わかりよ」
「誤解だよ。俺はショタコンじゃないし、ヤるのもヤられるのも大きい大和さんの方がいい。ところでサマンサさん、大和さんに盛る薬なんだけど、俺に使われたヤツより感度上げることできる?」
「ふふん、お安い御用よ。このマイティ・フッドに任せなさい!」
「そこの中途半端吸血鬼、サミィに変なことを依頼しないで頂けますか」
「いってぇ!!殴るな、馬鹿力主夫!!」
「殴られたくなかったらサミィから離れてください、猫かぶりテロリスト。下品なことを垂れ流すその口を縫い合わせますよ」
「よくそう軽快に罵倒が出てくるよなぁ。見習いたいからもっと言ってくれ」
「・・・・・・・・・・・・」
「だから暴力に訴えるなっての!!それと、人を不快害虫でも見るような目で見るな!!」
「私の前で気色悪い事を言わないでください。あなたごとき、あのマゾにただくっついるフジツボがお似合いです!」
「言ったな、顔だけ綺麗なゴリラ!」
「二人ともやめなさぁい!!」

―完―