人工甘味料の夢


 仕事以外で付き合いたくないのだが、「良いものが手に入ったのだが、ぜひルイスさんに使いたいので会いたい」と言われては一考の余地がある。小鳥遊霞が入手した物品について、心当たりがあったことも後押しした。
「僕に使ってほしいからさしあげます、ではなく、自分が僕に使いたい、ですかぁ〜。本当に、何様のつもりでしょう」
 いくら生まれや育ちが平凡とは言い難くとも、ごく自然に出る尊大な態度や物言いを改められないと不愉快で仕方がない。そういうところも従兄に敵わない所だと冷笑すれば、あるいは黙るかもしれないが。
「貞操帯をつけて一週間過ごされたら、会って差し上げてもいいですよぉ☆」
 と言ってみたが、あっさりクリアしてきたので、小鳥遊のマゾさを若干舐めていたと言わざるを得ない。確認してほしいといきなりズボンと下着を下されて、思わず「汚いものを見せないでください!」と鞭で素肌をひっぱたいてしまったルイスを、誰も責められないだろう。
「だからといって、僕が一から躾けてあげるなんて面倒なことをしたくありません。そんなに暇ではないんですよぉ」
 手の中にある白いプラスチックのジャーをぽんぽんと弄び、ルイスは朗らかに微笑んだ。
 目の前のベッドには、フルフェイスのボンテージマスクをすっぽりと被せられた霞が、指先すら動かないようグローブで包まれた両腕をベッドに拘束されて転がされている。もちろん、貞操帯と拘束具以外の着衣はない。年相応に引き締まった若い体ではあるが、恥ずかしそうにもじもじされても愛らしいとは言い難い。
「でも、貴方は僕が興味のあった品物を持ってきましたし、僕の言いつけも守ったので、ご褒美をあげなくてはいけませんね」
 大和が楽しそうに干乾びていた原因である「催淫剤入り中出し用殺菌潤滑ジェル」の開発には、霞が関わっていた。ルイスも興味はあったので、言いなりになる生体ディルドで試すことはやぶさかではない。
 さっさと服を脱いでベッドに乗り上がると、興奮した鼻息とくぐもった呻き声が出迎えた。霞にかぶせられたマスクは、目と口の部分を開けることができるが、いまは鼻の部分しか解放されていない。豚の分際でルイスの肌を見るなんて言語道断であるし、霞の喘ぎ声なんて聞きたくもない。
 ルイスの気配を探して捩られる身体に一鞭入れて大人しくさせると、ジャーの蓋をひねって、まずは自分の後ろに冷たいジェルを塗り込んだ。
「んっ・・・・・・は、ぁ・・・・・・ッ」
 慣れている行為だが、指先でジェルを押し込むたびにじゅわりと熱が広がり、ルイスはしなやかな体をふるりと震わせた。
(これは、すごい・・・・・・)
 あっというまにぬかるんだアナルを広げるように指でかき回し、もうこれだけで気持ちよくなっていいんじゃないかと思ってしまう。
「あぁっ、ぁんっ・・・・・・んぅっ、あっ、はぁっ・・・・・・あつぃ・・・・・・」
 念入りにジェルを足してじゅぷじゅぷと前戯に励み、汗が浮いた首筋に張り付いた髪を煩わしく払う。普段よりずっと早く物足りなくなった奥に入れるものを探して、貞操帯に付いたコックサックを取り去った。
「ゥ・・・・・・!?」
「ふふっ、マスク越しでも、僕の喘ぎ声が聞こえていましたか?はぁっ・・・・・・これだけは、立派なんですよねぇ」
 ぶるんと飛び出した勇壮なペニスに、コレがどうやってコックサックの中に納まっていたのかと、ルイスは苦笑いを漏らした。同じ大きさのディルドを作って、まだ貞操帯が霞のアナルに押し込めているディルドと交換してやろうかと悪戯心がわいた。
 それはともかく、いまはうずいてたまらない自分の中に迎えるべく、先端からカリや筋の凹凸にジェルを塗り込んだ。
「ゥグゥッ♡ ンォオッ♡ オォッ♡」
「下品な声ですねぇ。そんなに僕の指が気持ちいいんですかぁ?」
 血管を浮き上がらせてビクンビクンと震える巨砲に唇をゆがめ、ルイスは霞を跨ぐと、慎重に腰を下ろして、まろやかな双丘の中心にグロテスクな肉棒を押し付けた。
「これから入れさせてあげますけど、勝手にイかないでくださいねぇ」
「フ、ゥ・・・・・・ンホォッ・・・・・・オォッ♡」
「んっ・・・・・・ん、くっ・・・・・・ぁ、あぁっ」
 入り口で少し慣らした後は自重に任せて、ずぶずぶと襞を押し広げるように奥まで入ってくる硬い質量に、ルイスは熱のある溜息をついた。
「はあっ、ぁあ・・・・・・、んっ、これ、は・・・・・・ぁあっ、気持ちいい・・・・・・ッ!」
 ジェルに混ざった媚薬成分のせいでじんじんと疼く腰をくねらせ、快感にきゅんきゅんと震える腸壁でゴツイ肉棒を締め上げる。十分な太さと硬さを備えてそそり立つそれは、ゆるゆると上下するルイスの中を擦って奥まで届いた。
「い、いっ・・・・・・んっ、あぁ・・・・・・あぁっ・・・・・・!」
「ングゥッ♡ ゥゴ♡ ・・・・・・ォガッ!」
「勝手に動かないでもらえます?」
 バシリといい音をたててレザーマスクを打った鞭を扱き、ルイスは乗馬でも楽しむように、マスクの頸部にリードをかけて引いた。
「グゥッ」
「あぁっ、はっ・・・・・・ん、すごくいいです、よぉ・・・・・・っ、あんっ」
 快楽にはそれなりに慣れているが、全身に回ってきた催淫剤がルイスの白い肌を紅潮させ、上向いた雄の証から蜜を溢れさせた。腰の動きを強め、鞭を手放してツンと尖った乳首を指先で摘まんで捏ねる。
「あぁんッ」
「ゥグォ、オォッ♡」
 陰茎だけに与えられる強い刺激に霞がルイスの下で身悶えるが、言いつけを守って腰が跳ねないように頑張っているようだ。ルイスはリードを握ったままの手で乳首を弄り続け、もう片方の手は上下運動に震える自分のペニスに添えて扱いた。
「あぁッ!あはぁっ、はぁっ・・・・・・っああッ、そこ、んっ・・・・・・」
 自分の指先で感じるところを慰め、ジェルでずぶ濡れた腹の中の襞でごつごつした肉棒を擦り、自分のペースで追い上げる快感のために喉を反らせて喘ぐたびに、長いプラチナブロンドが色付いた肌の上でさらさらと跳ねた。
「あっ、あっ、も・・・・・・ッ、いいですよ。動いて、ふか、くっ!んんっ、ぁあっ!いいっ、奥っ・・・・・・ァアッ、僕の中で出し、てっ」
「ッッ・・・・・・♡♡♡」
 ぶちゅんと深く迎え入れた霞の先端から、絶頂に締まるルイスの腹の奥へ、勢いよく精液がブチ撒かれた。
「ぁああぁッ・・・・・・♡」
 禁欲した一週間分の濃いザーメンの感触は、ルイスが出し終わってもまだ続いた。
「フゴォ♡ ゥゴォ♡」
「あぁっ、この、豚がッ・・・・・・んぅっ!いつ、まで・・・・・・ぁあんっ!」
 イったばかりで力が入らないルイスの下から、同じくイったはずなのになぜか元気な霞が突き上げてくる。
「や、めっ・・・・・・また、イっ・・・・・・ふぁあっ!ぁあっ!」
「オォッ♡♡ オゴォ♡♡」
「いい加減にしてくださいっ!」
 再びレザーマスクに叩きつけられた、バシィッといういい音ともに、ルイスの中に二発目がどぴゅっと吐き出された。

 必要な検証が終わると、ルイスはさっさと霞を眠らせて身支度を整えた。方法はあえて言うまい。
(こんなに無防備で大丈夫でしょうか)
 霞は一応味方だが、味方ゆえに不安になる。小鳥遊財閥の一角を代表し、物理的精神的に強固な防御を有するはずの霞だが、なぜこんなにルイスに従順なのか。マゾだからか。そうかもしれない。
 霞の盲目的な無防備さはルイスに惚れているからこそであるが、実在するかどうかは別として、ルイス以上に霞を魅了する人間か事情が現れれば、簡単にそちらにも開かれるに違いない。もちろん、その辺りまで織り込んだ計算をルイスはしているが、ルイスの工作員としての頭脳が霞に呆れるのは当然のことだ。
(でもまあ、悪くなかったですよぉ)
 他人のために整えられた、味のしない美食だけでも苦痛は感じないが、たまには自分のために作った、ジャンクな甘さを摂取してもいいと思う。
(ご馳走様でした☆)
 最後に霞の拘束を全て解いてやり、意外と行儀のいい寝相を尻目に、色気のない白いジャーを持ったルイスのヒールは機嫌よく床に鳴った。



「これでわかりましたか?ルイスさんは男性だったでしょう?」
「見せてもらえなかった・・・・・・」
「は?」
「見せてもらえなかったし、触らせてももらえなかった・・・・・・。いや、付いているかわからなかったし、あんなにキツいのに柔らかくて気持ちいい穴がある男がいるものか!」
「わかりました、歯を食いしばりなさい」

 小鳥遊霞の歩む道は、険しく遠かった。