欠食児童の共食い ―2―


 ここまでするなら、やはり寮のベッドまで我慢すればよかったかなと思わなくもないが、目の前でそそり立つレルシュに、やっぱり我慢できないとアゼルは下品に舌なめずりをする。
「レルシュ、レルシュ・・・・・・ッ」
「どスケベ」
「ん。最高に気持ちよくして、いっぱい喰ってやる」
 アゼルはレルシュにまたがり、自分で尻をくぱりと開いて、無骨で荒々しい肉棒にゆっくり腰を下ろしていった。
「はっ・・・・・・ぁ、あっ。ん・・・・・・んぅ、ふ、うぅ・・・・・・ッ」
 くちゅりと先端が埋まり、襞を押し広げるように、ずっずっとアゼルの中に極太の楔が埋まっていく。硬くて温かくて、アゼルの身体が内側から壊してしまいそうなほど、容赦なく性感帯を擦りあげて甘く痺れさせる。
「はぁっ、ぁああッ、ンッ!!」
「うっ、はぁっ・・・・・・あっ、すげ・・・・・・!」
「アァッ!れ、る・・・・・・っ、そこでっ、でかく、すんじゃね、ぇ・・・・・・!」
 思わず逃げかけたアゼルの腰と太腿に、レルシュの太い腕が絡みつき、鉤爪が刺さりそうなほど強く掴まれて叩き落された。
「ンぎ、アッ!?ヒッ・・・・・・ァア!!」
「はぁっ・・・・・・、やべぇ。アゼルん中、たまんねえ・・・・・・!」
「まっ・・・・・・!くる、し・・・・・・ッ、あっ!ぁああっ!」
 馬鹿みたいな質量に体が裂けそうだと文句をつけたくても、とめどなくレルシュから迸る精気を喰うのに忙しくて、アゼルの呼気は言葉にならない。上等なジビエを貪る様な、素朴で荒々しく、開放的な力強さに満ちた、若い人狼の精気。ガツンとしたボリュームと、噛みしめるたびにじわりと広がる旨味が、体の隅々にまで力を満たしていく。
「あっ、あぁっ!もっとぉ・・・・・・!」
 腹の中に埋まっている塊をきゅうきゅう締め付けながら、アゼルは自分がだらしない笑顔を浮かべているのを自覚した。美味い。美味すぎて、頭も舌も腹も蕩けそうだ。
「ああぁぁ・・・・・・っ」
 制服のシャツ越しにレルシュの背に縋りつき、濡れた音を立てながら夢中で腰を振る。飢えた腹の中が蠢き、熱い精液を欲しがって涎をたらしている。
「っ・・・・・・そんなに、中、動かすなっ!」
「だって、ぁっ・・・・・・だって、レル美味い・・・・・・っああ!」
 快感に背を震わせると、はだけたシャツをまくり上げてレルシュの唇がアゼルの胸に吸い付いた。つるりと滑らかな肌の上を舌が滑り、ぷくりと勃起した乳首に歯を立てられる。
「ひっ!あっ、それ・・・・・・やぁっ!きもち、いいっ!」
 かりかりとひっかけられるのもいいが、優しく吸われるのも、指先で強くつままれるのも、痺れるように気持ちいい。レルシュが埋まったままの腹の中がきゅんきゅんと切なくて、どうにか解放されたいと尻をグラインドさせるのが止まらない。
「あぁんッ!はぁっ、ぁああ!きもちいい・・・・・・!」
「〜っ、この・・・・・・っ!」
「へ!?」
 ひっきりなしに動かしていた腰を押さえられると同時に、ぐるんと重力の方向が変わって、アゼルはレルシュにしがみついたまま天井を見上げていた。
「えっ、おい、ちょっ・・・・・・!」
 覆いかぶさっているレルシュは低く唸り、犬歯がむき出しになった口からは、激しい息遣いと共に赤い舌が見えている。
(やっべ、喰われそう・・・・・・でもっ)
 実際に人狼が夢魔を喰うことはないが、アゼルが励起させた生殖本能が、他の雄を従わせたいという征服欲まで増幅させてしまったのだろう。だがその欲情すら、アゼルには甘味滴る餌だ。
「はぁああ・・・・・・ん!」
 きゅううと腹の中が切なく締まり、肉同士をぱしんぱしんと打ち付けられる度に、喘ぎ声が喉から吹き出してしまう。
「あんっ!あぁっ!レルっ!や・・・・・・ぁああっ!」
「ハッ、ハッ・・・・・・ぅ、あ・・・・・・すげ、なか、どろどろだ・・・・・・ハッ、奥まで、はいる・・・・・・!」
「ひぃッ、そこっ!ら、らめ・・・・・・!」
 ぐちゅっ、と捻り込まれ、アゼルは目の前に火花が散る様な気がした。ただでさえ、『圧し掛かる者』にあるまじき体位だというのに、槌で打ち込まれるかのように奥まで拓かされては・・・・・・。
「や、ぁああっ!め、めすに、なっちま、う・・・・・・!ひぎっ!」
 ごんごんとリズミカルに侵されて、頭の中も腹の中も甘い痺れが止まらない。若い人狼の硬くて大きなペニスにしゃぶりついて、ただ快楽と飢えを満たし続けたい本能が、このまま自分を失ったら本当に雌になるという焦りすら押し流してしまいそうだ。
「はぁっ、オスの癖に、中だけで感じんのかよ」
「あっ!らめ、そこ・・・・・・奥っ、だめ、ぁああ!そこ、だめだからぁっ・・・・・・!」
「イイの間違いだろ!こんなに気持ちよさそうに・・・・・・!」
「やぁああ!し、子宮できる・・・・・・!おれ、めすに・・・・・・!」
「メスにこんなイキったちんこなんかついてねぇよ!」
 反り返った先端から先走りの糸を引いているアゼルの性器を、レルシュの手が無遠慮に扱いた。
「ァアアアッ!イぐっ・・・・・・!イ、ぁっ!イくぅぅッ!」
「ハッ、ハッ・・・・・・もうちょっと」
「む、むりっ!でる!でる!イぐぅッ!!」
 自分に圧し掛かって両脚を押し広げているレルシュにいいように揺さぶられ、入り口近くと最奥の感じるところだけを執拗に突かれながら前まで扱かれて、イくなという方が無理だ。アゼルの奥はレルシュの先端に誘うように吸い付いて射精を促す。
「アッ、れりゅ、ぅんまい・・・・・・!ちゅーしてっ、ちゅー・・・・・・っん」
「んっ・・・・・・あぜ、んむぅ・・・・・・ッ!」
「ひは、ぁッ!んぐッ〜〜〜!!」
 アゼルはレルシュの身体にしがみつき、舌を啜りあげるように精気を呑み込む。腹の奥深くに捻り込まれ、びゅくびゅくとぶち当たる重くて甘い衝撃に、自身も存分に精液を噴き上げた。
 美味い、気持ちいい、美味い、イく・・・・・・腹が満たされていく。種が有する飢えが癒されていく心地よさに恍惚となりながら、アゼルはまだ自分の中に硬い性器を埋めているレルシュを抱きしめたまま頬擦りをした。
「ふぁ、はぁ〜・・・・・・」
「はぁ・・・・・・満足したかよ?」
「ん!めっちゃ美味かったぁ〜・・・・・・んっ」
 ずぼっと抜けたそこは、レルシュの大きさに慣れて閉じ切らず、アゼルは慌てて体を離して脚を閉じた。
「ぁは・・・・・・溢れちまう。もったいねぇ」
 アゼルは堅い床に這いつくばったままもじもじと尻を上げ、せっかく貰った精液を溢さないように力を込めた。
「おい」
「あ・・・・・・?」
 レルシュの低い声にぼんやりと返している間に、アゼルは自分の尻が無遠慮に掴まれて開かされるのに慌てた。尻尾で叩いて抗議するが、レルシュの手はびくともしなく、緩くなったアナルがごぷりと汚い音を立てて精液が溢れ出す。
「おっ、ちょっ・・・・・・!?」
「もうちょっとイけそうだな」
「待て!?もうちょっとってナニ!?ぁ・・・・・・馬鹿、出ちまう!」
「もっと出してやるから遠慮するな。ついでに栓にもなるだろ」
「ッ!?ぁ、ぁああ・・・・・・ッ!!」
 ずっぽりと難なくレルシュを受け入れ、アゼルは引きつった悲鳴を喉の奥から漏らした。肩に引っかかったままのシャツから頭を抜かれ、床についたままの両腕が不自由になる。
「お、ま・・・・・・っ、ぜんっぜん、萎えてねぇ・・・・・・っ!」
「俺の目の前にエロいケツさらしてる方が悪い!・・・・・・ぁあ、はぁ、気持ちいいっ」
 浅くまで引き抜かれ奥深くまで突きこまれるたびに、先に出された精液が溢れて、尻も太腿もびしょびしょだ。
「アッ、ぅああッ!れりゅの、人狼ちんぽで・・・・・・また、イっちまう!おちんぽ、しゅご、いッ!きもちいィ、ァアア!!」
 反射的に硬い凶器をきゅうきゅう締め上げながら、アゼルはさらに腰を回して自分のいい所に誘う。がつがつと疑似生殖活動に励む獣の荒い息が首筋にかかり、子種を植え付ける場所を探してごつい肉棒が腹の中を乱暴に擦っていく。そんな美味い肉欲が、アゼルの深く切ない場所をぐちょぐちょと突きまわした。
「ヒッ、イぐ!しょこ、めしゅになっちゃう!はらむっ!はら・・・・・・ッああ!らめっ、ぐりぐりやめ・・・・・・ッ!アッ!アァッ!!」
「じゃあ・・・・・・孕めよ」
「ぁ、ヒッ!!イ、イイ・・・・・・〜〜〜ッ!!」
 耳のそばで聞こえた声に続いて、ずぶりと首筋に食い込んだ鋭い痛みに、アゼルは悲鳴も上げられずに吐精した。貫かれたまま噛みつかれ、ばたばたと床に白い染みをまき散らす。
「ァ・・・・・・カ、ハ・・・・・・ッ!」
「フッ、ふッ・・・・・・っ」
 どくんどくんと腹の中に吐き出される熱い迸りはなかなかおさまらず、注ぎ込まれる熱い精液が、アゼルの中に染み込んでくる。
「んぁ、ぁああッ!はぁっ・・・・・・ぁあん、しゅご、ぃッ、びゅーびゅー、くるっ!まだ、れてりゅ・・・・・・ぅあ!!イ、く・・・・・・!」
 イきっぱなしの蕩けた頭で、アゼルは飽食に微笑んだ。レルシュのペニスで栓をされたままの腹が、大量の精液でぽっこり膨らんできたような気がした。


 肩を揺さぶられて、レルシュはびっくりして目を覚ました。
「おい、起きろって」
「ん・・・・・・うお!?」
 辺りを見回すと、そこはがらんと人気のない教室で、いるのは机に突っ伏して寝ていたレルシュと、起こしてくれたアゼルだけだ。
「はあ・・・・・・終わったか」
「おう。美味かったぜ!」
 にっかりと白い歯を見せて笑うアゼルに、レルシュも苦笑いを浮かべて、ぐんと伸びをした。疲労によるだるさはあったが、頭の中はすっきりしている。
「あ〜・・・・・・」
「賢者タイム」
「言うな。夢の中のお前、エロすぎんだよ」
「だってアゼルさん、インキュバスだも〜ん」
 目を細めたアゼルは夢魔らしく嫣然と微笑んで、レルシュの目の前に何かを差し出した。
「ほい、飯代。ありがとな」
 アゼルから渡されたのは、十ユーロ札四枚。いつもの倍だ。
「えっ、多くね?」
「いつもよりいっぱい貰っちまったからな」
 恥ずかしそうに頭を掻くアゼルに、レルシュは一枚返した。
「一緒に肉ランチな」
「マジかよ。レルちん、やっさしぃ〜」
「レルちん言うな」
 レルシュは軽く腰を叩きながら席を立ち、よっこいせっとかばんを持ち上げて、夕日が差し込みだした教室からアゼルと一緒に出た。
「たしかに、なんか激しい夢だったような気はするなぁ」
「へへっ、マジで美味かったぜ。はあぁ、腹がパンパンだ」
 札を財布の中に詰め込むレルシュの隣で、満足そうなため息をついたアゼルは、夕日に蕩けるような目つきのまま、うっとりとベルトの下にある自分の腹を撫でた。