やっぱり二人がいいね−4−


 二回も出して、ゆっくり息を整えたのに、クロムの体はまだ熱を帯びていた。酒精の刺激で精根尽き果てても良さそうなのだが、さすがは原料がマステラの実というべきか。
「う・・・」
「まだまだいけるよ?」
 それは、ユーインはまだ一回しかイっていないのだから、いける、だろう。そんなにニコニコ笑顔で迫られても、硬い地面の上でしたクロムは、少し腰とか背中とかが痛い。
「ほら、遠慮しないで」
「いや、せめて家に帰って・・・んぁああっ!」
 ぐちゅっと、よくほぐれた後ろにユーインの指が埋まり、まだ中にあるユーインの精液をかき回すように動いた。
「やめっ・・・ユーイン、出ちゃう・・・っ!」
「もう出てるよ。こんなにどろどろにして」
「ひんっ・・・!」
 敏感になった内側のしこりを押し上げられ、クロムはがくがくと震えながら、ユーインにすがりついた。ぎゅっとユーインの指を締め付けるが、すでに脚の内側に、流れ出した物が伝っていく感覚がある。
「クロム」
「な、に・・・?」
 クロムが顔を上げると、額や頬に、ちゅっちゅっとキスが降ってきた。
「大好き。俺だけのクロム・・・」
 星明りだけだが、真っ赤になった顔を見られたくなくて、ユーインに抱きつくクロムを、抱きつかれている方はぐいっと抱え上げた。
「え、ちょ・・・」
「ごめん、地面じゃ痛かったよね」
 クロムは中途半端に起ち上がっていた熱を扱かれ、悲鳴を上げて背をそらせた。
「ひっ・・・ぁ、だめだ・・・また・・・ぅああっ!」
 ちゅっちゅっとキスを繰り返し、快感から逃げられないクロムを、ユーインは嬉しそうな笑顔で、自分の腰の上に導いた。
「こんなに淫乱な体になっちゃったクロムは、俺でないと満足できないよね?」
「ぅんっ!・・・ゆーぃ・・・ぁああっ!気持ちいいッ!!」
 再びユーインの太く硬い楔に奥まで満たされ、クロムの体は歓喜で戦慄いた。ぐちゃぐちゃと激しく突き上げられ、自分の中をかき回されるたびに、自分とユーインが混じっていくような気がする。
「ほらっ、クロム・・・またクロムの中で、出してあげるよ。・・・いっぱい飲んで」
 クロムの腰が上下するたびに、すでに出されたユーインの精液が、泡を立ててクロムの中から溢れ出ているが、快楽に蕩けたクロムは自分のペニスを反り返らせたまま、自分を貫く熱い楔に擦られて叫んだ。
「おれ・・・おれの、なかっ・・・あっ!きもち、いいっ・・・あっ、おく・・・ユーイン!ユーイン・・・ッ!!」
「っ・・・!」
「ああアアッ!!!」
 内側の性感を擦られたクロムが、一番奥まで入ってきたユーインの楔をぎゅうぎゅうに締め付けながらイくと、腹の中にどくっ・・・と吐き出されるのを感じた。
「ァ・・・あ、あ・・・」
 自分とユーインの腹の間をどろどろに汚しながら、クロムは体の中からユーインが染込んでくる感覚に、うっとりと酔いしれた。
 やっぱり、抱きしめあうのは、ユーインがいい・・・。


−数日後 プロンテラ

 今日も賑わいを見せる中央大通りを、二人で並んで歩く。
「・・・いつまでむくれているんだよ」
「だって・・・」
 ユーインが恨めしげに見つめる先には、クロムの両耳を飾るイヤリングがあった。
「なんでまだしているんだよっ!」
「いいだろ。自分のがまだないんだし」
「ぐぎぎぎ・・・」
 自分が認めていない人間がプレゼントした物をクロムが身につけることが、ユーインはとにかく気に喰わない。クエストをすれば自分の物に替えると、クロムに一応説得されたのだが・・・。
「あ・・・!」
「げっ・・・」
 クロムとユーインは正反対の表情を浮かべ、親しげにサカキと談笑する男を見つめた。背が高くて金髪で、やたらと顔のいいアークビショップ・・・。
「サンダルフォンさん!」
「やぁ」
 イライラと怒りマークを出すユーインを置いて駆け出したクロムを、サンダルフォンは柔らかな笑顔で迎えた。
「こんにちは」
「変わりない様でなにより。・・・それも気にいってもらえたようで、私も嬉しい」
「あ・・・えっと・・・ぁ、ありがとうございます」
 真っ赤になってお辞儀をするクロムに、さらにサンダルフォンから楽しげな声がかけられる。
「よかったら、これからお茶でも・・・」
「サンダルフォン」
 唸るように諌めるサカキに、がるると敵意丸出しだったユーインも、路上に視線を下げた。
「知り合いですか?」
 緑の癖毛がうんざりといった感じで首肯し、サンダルフォンはクスクスと笑う。たしかに二人は歳も近そうだし、ユーインたちよりは時間的に接点が多そうだ。
「私はサカキに頭が上がらなくてね」
「おおげさなことを言うな、この生臭聖職者。・・・あんまり若いのを挑発するなよ。収拾が面倒だ」
「わかった、わかった」
 サカキはやれやれと額に手をあて、サンダルフォンは呆然としているクロムとユーインに、くるりと向き直った。
「たしかに私は支援型だが、ほぼ完璧な後衛だ。君のように、ウィザードの盾をすることには、あまり向いていない」
 はっと顔を上げたクロムに、サンダルフォンは上機嫌な様子で微笑んだ。
「実戦でのお手本にはなれなさそうだが、君の向上心を支える一因になれたのは、私も喜ばしいし、光栄に思う。・・・そんなにたいそうな人間ではないので、なんだか気恥ずかしいよ」
 真っ赤になって湯気を噴き上げているクロムを、サンダルフォンは穏やかに見つめた。
「・・・恋人の彼と、仲良くね?」
 前回も似たようなことを言われた事に気付き、クロムはうつむいていた顔を上げた。
 ちゅっ・・・という額に触れた柔らかさも同じ・・・。
「テレポート!!」
「コールホムンクルス!!」
 一瞬の数分の一の差でサンダルフォンが先に姿を消したので、無詠唱で呼び出され、そこに突き刺さるはずだった魔力はむなしく散り、頭の沸騰したユーインはバニルミルトの下敷きになった。
「落ち着け。あんなのは挨拶だ、あ・い・さ・つ」
 怪生物な亜種バニルの下で、怒りのあまり声も出ないが、「ぎったんぎったんにしてやる!!」と殺意満々の目が言っているユーインに、サカキはため息をつく。
「大丈夫か、クロム?あいつも悪ふざけが好きでな」
 人通りの多い街中で、二度目ということもあり、クロムは比較的早く我を取り戻した。
「はい。ユーイン・・・ヒール」
「ううぅ〜〜っ!!!」
 石畳にはいつくばったまま、悔しげにもがくユーインの、バニルミルトに押しつぶされてできた擦り傷が癒えていく。
「やれやれ。あいつは昔・・・事情で相方を亡くしている。楽しそうなお前達が、少し・・・うらやましいんだろ」
「そんな・・・」
 クロムはサンダルフォンの過去に心が痛んだが、うらやましいと思われるのも、ちょっと気分が落ち着かない。
「あいつ、今度会ったら・・・!」
 ようやくホムンクルスの下から這い出し、ぎりぎりと握り締めたユーインの手が、少し遠慮がちに、それでもしっかりと、クロムに取られた。
「・・・帰るぞ、ユーイン」
「うん!」
 クロムの態度がぶっきらぼうになっても、たちまち笑顔になったユーインは気にしない。心を満たしてくれる、恥かしげに繋いだ手を、ユーインはぎゅっと握った。