バレンタイン攻防戦2011



手作りチョコのレシピ本を睨みながら、ハロルドは真剣に悩んでいた。

(今年のバレンタインどうしよう・・・)

甘味好きな恋人のために、毎年趣向を凝らしてチョコを作っているのだが・・・。

「タルトもクッキーもイチゴチョコも作ったし、ケーキはいつでも食べられるし・・・うーん・・・」
「ハロさん?」
「あっ、ユーインさん!いいところにっ!!」

がばりと顔馴染みを捕まえ、ハロルドは来月に迫ったバレンタインに、恋人にどんなチョコを渡すのか聞いた。

「まだ考えてないけど・・・」
「うぅ・・・困ったなぁ」
「いっそのこと、ハロをチョココーティングして渡せば?」

それは貰う方の男にとってはロマンだが・・・

「俺にセルフSMプレイをしろと?」

大事なところが火傷したらどうするのだ。
しかもタチがやると、変態臭いことこの上ない。

「大丈夫だよ、全然熱くないって」
「やったことあるの?」
「・・・・・・」

魔法使いは視線を泳がせた。

「クロムさんにやってもらいたいなぁ・・・と」
「そ、そんな事言ってないだろ!!」

ユーインは慌てて否定するが、どう見ても期待している。

「うーん、たしかにクロムさんは嫌がりそう・・・」
「サカキさんはやってくれそうだな」
「う、ん・・・」

やってくれそうだが、この場合逆襲もありえる。
おねだりを聞いてくれるだけで、基本的に向こうの方が上手であることを念頭に置かねばならず、ハロルドとしては慎重さを求められるところだ。

「チョコフォンデュかぁ・・・」
「フォンダンショコラも温かくていいな」

恋人が喜んでくれる笑顔と一緒に、チョコをまとって恥かしがる姿まで思い浮かべ、二人とも顔がだらしなくなる。

「バレンタイン楽しみだなぁ」
「悟られないように準備をしないとな」
「うん!」





−・・・ってはなしていました。さー−
「だそうだ」

他のアルケミストが所有するホムンクルスのふりをして、ハロルドたちを探っていたバニルに筆談で報告させるサカキの隣で、クロムは真っ赤になった顔を覆って壁と仲良くなっている。

「よし、引き続き偵察を怠るな」
−さー、いえっさー(゚(゚д゚)゚)ゝ−

三つの口で三つのセルーを器用にキャッチして、バニルはうぞうぞと体を波打たせて通りに出て行った。

「とうとうきたか。しかし、あれは剃らないと面倒なんだよな」

真剣に検討し始めるサカキに、クロムは涙目で訴えた。

「なんとか止められませんか」
「どうせやるなら生チョコクリームの方が楽しいと、ユーインに言ってやれ」
「無理ですっ!!!!」

どうなるバレンタイン2011。




END