繋いだその手で抱きしめて −2−
寝室でベッドに腰掛けると、ユーインの手がクロムの眼鏡を取り上げ、そっとクロムの頬を包んだ。
おずおずと目を伏せると、唇に柔らかい感触があたり、それはすぐに離れず、ゆっくりとクロムに吸い付いた。 「ん・・・」 これだけでクロムの首筋はゾクゾクと快感を訴え、ユーインの舌先に唇を舐められると、顔を上げていられなかった。 「は・・・っ」 「可愛い」 「んッ・・・!」 ちゅっと耳の下に吸い付かれ、クロムはユーインの上着の裾を握り締めた。 法衣が脱がされ、シャツがはだけられると、ロザリオがユーインの指に絡まった。 「おっと・・・」 ユーインはそれを丁寧に解いたが、クロムは罪悪感に頭が締め付けられそうな重さを感じた。ユーインのことは好きだが、自分が聖職者として間違っているという認識が離れない。 クロムの表情は翳ったが、ユーインはそんな人のロザリオに口付けた。 「俺は、クロムが神父になってくれて、良かったと思っているよ。そうでなきゃ、俺たちは学園で会わなかった」 クロムは驚いたようにユーインを覗き込むと、水色の目が心外そうに見上げてくる。 「これでも、毎日のお祈りで、神様にちゃんと感謝しているんだよ?」 だから今はちょっと外していてね、とユーインはクロムのロザリオを外し、サイドテーブルの眼鏡の脇に置いた。 「ユーイン」 「なに?」 「・・・ありがとう」 「?」 きょとんと首をかしげたユーインに、クロムは自分から唇を寄せた。ほんの、触れるだけだったが。 「・・・っは、やばい、我慢できない」 それでもユーインはそっと押し倒し、クロムの鎖骨や胸に口付けていく。出来るだけ優しくしようという気遣いはわかるのだが、クロムの体が自然とこわばってしまい、詰まったような呼吸が苦しい。 「ユーイン・・・」 エクターでも他の誰かでもない、クロムを抱いているのはユーインだと確かめていたくて、クロムはユーインの頭を抱き寄せた。自然に開いた唇から舌が絡まり、眩暈のような気持ちよさの中で、胸の先端をいじられた刺激に喘いだ。 「ふ・・・ぁっ、あ・・・!」 「ここ気持ちいい?」 「ん・・・っ」 耳の周りを舐めていく感覚に気をとられているうちに、クロムの下肢は器用なユーインの手によって外気にさらされ、熱を持った塊をやんわりと握りこまれた。 「あっ!や、ぁあっ!」 「よかった。硬くなってる」 「ユーぃ・・・ふぁああ!」 くちゅりと敏感なところを粘膜に覆われ、クロムは悲鳴を上げた。 「やめ・・・ユーイン、そんなところ・・・!」 身をよじって逃げようとしても、中途半端に脱げたスラックスが自由を奪っており、クロムの腰が揺れるたびに、さらにユーインの口の中へ入れることになった。 「んっ・・・ふ、じゅぷ・・・」 「ッ・・・ユーイン、放せ・・・!」 たまらなく甘美な突き上げたい衝動を堪え、赤毛をつかんで放させる。いくらなんでも、高校生に飲ませてしまうのは、クロムがいたたまれない。 「イっちゃっていいのに」 欲望に蕩けた眼差しで微笑みながら、ユーインはクロムの服を完全に取り去り、自分の服も脱いだ。しなやかな肢体の中心で少年の証が天を突いていたが、クロムも気持ちよくなったふわふわした意識では、それほど恐怖はなかった。 「オイルで慣らすから、ちょっとだけ冷たいの我慢して」 四つん這いになった恥かしさも我慢しながら、どこか嗅ぎ覚えのある香りに、クロムは小さく苦笑した。オリーブオイルだ。たしかに潤滑剤など子供が買うには目立つが、これならば不審がられないし、もちろん舐めても問題ない。 つぷ、と入ってきた指に対して、少しずつ息を吐きながら、広げようとする動きに体を馴染ませる。オイルは思ったほど冷たくなかったが、ユーインの指が二本三本と増えるたびに、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てた。 「はっ・・・はぁ・・・っ、ん・・・」 「すごい。クロムのここ、ひくひくして、俺の指放さないよ」 「あァッ!」 くっと中で指を曲げられ、クロムの肘が折れた。気持ちいいところを、探り当てられた。 ユーインの指が引き抜かれ、かわりにもっと太いものがあてがわれる。オイルの力を借りて入り口はぬるりと入ったが、ぐいぐいと入ってくる硬くて熱い塊に、クロムは息を切らせて喘いだ。 「っああ・・・ッ!はっ・・・ん、ぁっ!あっ!ユーインッ!」 「は・・・ぁ、っすごい。・・・っぅく・・・」 丹念に解したとはいえ、しばらく使っていなかったクロムのアナルは、ユーインを迎えてきつく蠢く。 「んっ・・・はぁっ・・・!くる、し・・・ぁあッ!」 開いたままの脚の内側を撫でられ、さらに尻の肉をつかまれるように割り広げられた。ずっ、と奥まで入ったのがわかった。 「はっ!・・・ぁ、あ・・・!」 「すごい、・・・きつくて、はぁ・・・ゴメン、っもぅ」 クロムの腹の中で、ユーインの剛直が音を立てて激しく抜き差しされた。 「アァッ!ぁ・・・ゆーい、んっ!・・・く、ぅ」 「クロム・・・クロム!ぅあ・・・ぁ・・・!」 せつなげにクロムを呼ぶユーインが震え、熱い精液がたっぷりとクロムの中に注ぎ込まれてくる。 「ぅ・・・ゴメン。気持ちよすぎて・・・」 しょぼんと眉を下げて謝るユーインを、クロムは温かい気分で抱き寄せた。エクターはクロムがイけずに自分だけイっても、謝るなんてことはなかった。 若いユーインに、なんだか余裕まで出てきたクロムは、小さく微笑みながらたずねた。 「気持ちよかった?」 「もちろん。・・・もう一回、ね」 しっかりときりかえしてきたユーインは、クロムに深く口付けてベッドに横たえ、その両脚を抱えた。一度イったぐらいでは納まらない、まだしっかりと起ったペニスが、再びクロムの窄まりに埋まる。 「は・・・ぁ・・・!」 オイルとユーインの精液でぬめるそこは、難なくユーインを受け入れ、快感を得ようと締まった。 「クロム・・・愛してる」 たくさんのキスと一緒に、甘噛みされた耳に流し込まれた声に、体の芯がぞくぞくとふるえ、腰の奥がきゅんと快感を訴えた。 激しく中を擦られ、性感を押し上げながら奥を突かれ、クロムの雄は自分とユーインの腹の間で、だらだらと先走りを漏らしていた。 「やぁっ・・・!あんっ・・・ゆーぃ・・・ッ、らめぇ・・・っ!とけるぅっ!!」 ぐりぐりとかき回されて、気持ちよさに何を口走っているかもわかっていないクロムは、自ら限界まで脚を開いて腰を振った。 「い、くぅ・・・!でちゃうっ!イっちゃうユーイン!」 「いいよ、クロム。奥に出してあげる」 「ぅああっ!いい!すき・・・ユーイン、す、き・・・ッ!」 「っ・・・!!」 「ひっ・・・ぁあっ!んぁあああッ!!」 太くて硬いユーインを、恥ずかしい内側の性感で感じながら、クロムは突き抜けるような激しいアクメに精液を噴き上げた。 「あっ・・・ふぁ・・・、きもち・・・いい・・・!」 今まで感じたことのない快感に、とめどなく白濁を溢れさせ、がくがくと震える体を押さえたまま、ユーインは搾り取るかのように締め上げてくるクロムの奥にねじ込んで放った。 「くっ・・・んっ!」 「ひぃっ・・・すごいぃ!奥ぅ!あつぃ・・・ぅああ!」 どぷどぷと腹の奥を満たされ、蕩けた微笑を浮かべるクロムを、ユーインは放さず、再び腰を打ちつけ始めた。 「ひあっ!あんっ・・・!」 「クロム、気持ちいい・・・?」 「らめっ・・・ぅごか、な・・・ひぅっ!いい!また、またイっちゃぅ・・・!ぅあ、ああぁん!!」 クロムはユーインの肩にぎゅっとしがみつき、もう溶けてユーインとくっついてしまったかのような下半身を震わせた。 べとべとになった体を洗い流し、新しいシーツを敷いたベッドの上で、疲れた体を投げ出したクロムは、なんとなく聞いてみた。 「ユーインは・・・家族欲しい?」 両親を知らない教会育ちのクロムに、若くして身寄りがなく、家に帰っても誰もいないから寮に入った・・・そんなユーインは、一瞬きょとんとしたあと、朗らかに笑った。 「そーだね。いつかはクロムと家族になれるといいけど、いまは恋人がいいな!」 「こいびと・・・」 「そ。こうして、クロムといちゃいちゃできれば、それでいいよ」 そう言うと、ユーインは傍らのクロムを抱き寄せて、丸まった。 「しあわせだな〜」 きゅっと温かい腕に抱きしめられ、ユーインの吐息と鼓動を聞きながら、クロムもユーインの腰から背に腕を回した。 「ユーイン・・・」 「なぁに?」 しかし、クロムの口からは、それ以上の言葉はなかった。 ユーインが覗き込むと、優しく髪を撫でられて、長い睫に縁取られた瞼を下ろし、深く落ち着いた寝息を立てる、穏やかで満ち足りた恋人の寝顔があった。 |