誕生日プレゼント



対人ギルド「Blader」の傘下には、生産者ギルド「プロメテウス」がある。

「サカキ師匠、今月誕生日でしょ?だからさぁ、プレゼントにどうかなぁって。
 協力してよ、ハロさん」

この赤毛のでこクリエイター、アルフォレアも、その一員である。
彼は自称「サカキ師匠の一番弟子」であり、ランカーの称号も持っている。

「いいよ」

快く頷いたハロルドを、アルフォレアは嬉々として溜まり場の工房へと案内した。




数日後。

「お誕生日おめでとうございます!!」

首都の大通りで「プロメテウス」のメンバーに囲まれて、包装紙に包まれた物体を渡されるサカキがいた。

「さんきゅ・・・」

サカキが受けとった大きな包みは、やや重いが、柔らかくふかふかした感触だ。

「開けて良いか?」

どうぞどうぞと頷かれ、サカキはリボンを解いて包装紙を開いた。

「あ・・・ハロ?」

中に入っていたのは、布製のハロルド人形だった。
綿の詰まったフェルト生地は柔らかく、ピンクの頬をした笑顔は、ハロルドそっくりだ。
ブラックスミスの格好をして、ちゃんとリュックも背負っている。

「よく似てるな」
「そうでしょう?彼女たちが作ったんですよ」

アルフォレアが指したのは、ダンサーや女性のホワイトスミスだ。
サカキが礼を言うと、彼女たちは頬を染め、慌てて手を振った。

「あ、あたしたちは外側だけで・・・中身はマスターやアルさんが作ったんです」
「中身?」

たしかに、ぬいぐるみにしてはちょっと重い。

「師匠、ハロさん人形の頭撫でてみてください」
「こうか?」

アルフォレアに言われて、サカキはぬいぐるみの頭を撫でた。

《サカキさん!サカキさん!》
「しゃべった・・・!」

たしかにハロルドの声で、人形がしゃべった。
目を丸くするサカキに、アルフォレアは「プロメテウス」のマスターであるホワイトスミスのクィジウと手を打ち交わした。

「ハロさんに録音お願いしたんですよ」
「可愛いだろ?他にも色々しゃべるから、あちこち触ってみてくれよ」
「ふむ」

サカキが人形の手を、きゅっと握ってみると・・・

《今日もがんばりましょう!》

女性陣から「可愛い〜!」と歓声が上がる。サカキも可愛いと思う。

「すごい・・・」
「動力カプセルがリュックの中に入っているんで、しゃべらなくなったら背中のチャックを開けて交換してください」
「わかった。ありがとう、みんな」

普段は鋭いサカキの表情が少し緩み、ぬいぐるみを抱く腕に、ぎゅっと力がこもった。


《サカキさん、大好き!!\(*≧ω≦*)/!!》


その声が響き渡ったと同時に、「プロメテウス」のメンバーは、いっせいにハエの羽を握りつぶした。

後には、ハロルド人形を抱きしめたサカキが残されたが、その氷点下の空気に、まわりの露店商や通行人は笑うに笑えない。

「・・・・・・あいつらぁ・・・」

ぴきぴきと青筋を立てるサカキの矛先が、まずハロルドに向いてしまったのは、仕方がないといえば仕方がないだろう。


「サカキさぁん、入れてくださいよぉ〜!」

しばらく自宅に引きこもったサカキのベッドに、ハロルド人形が我が物顔でいたとか、いないとか・・・。




END