塗りこまれたジェルと、ハロルドが出した精液で、ぐちゅぐちゅと蕩けきったサカキのアナルに、ハロルドの楔が突き立っている。膝すらつかず、足の裏をつけて慎み無く開脚した中心では、ハロルドの手に擦られて、サカキの雄がだらだらと白濁を溢している。
「ぁ･･･あうっ！」
「サカキさん･･･サカキさん、はぁ･･･気持ちいい･･･サカキさんのここ、こうして犯せるの、俺だけ･･･」
「そ･･･ぉだ･･･っ、な･･･んど、でも･･･んっ！だめだ･･･も、擦るな･･･ぁ！」
　前を擦られて快感が落ちず、がくがくと涙を溢すサカキの腰が振るえ、内襞が締まる。ハロルドが突き上げた。
「はっ･･･ぁ、いいっ･･･！すご･･･も、出るっ！」
「あっ！は、あぁっ！！」
　どくどくと腹の中に出される熱を感じて、サカキの視界がくらりと傾いだ。
　ちゃんと支えてもらってベッドに横たわるが、中に入っていたハロルドが抜けてしまった。
「サカキさん･･･またイっちゃったんですね」
「ア･･･ぁ！」
　精液まみれになって、くったりと倒れたモノを擦り上げ、ハロルドは指についた白濁を舐めとった。
「サカキさん、･･･すごく、可愛いです」
　覆いかぶさってきたハロルドのキスは、少し苦かった。サカキはだるい腕を持ち上げて、その頬を包み、首筋からなぞって、離したくない恋人の鎖をつかんだ。
　何度でもしていい、その言葉どおり、脚を広げ、ねだるようにこすり付けた。すぐに硬くなっていくハロルドを、愛しげに飲み込む。
「は･･･ぁんっ！」
　膝を抱えるように体を折り曲げられても、サカキはハロルドの鎖を放さずに、肩口にしがみついたまま喘いでいる。
「あ･･･ぁ、っ･･･！」
「くっ･･･ぅ」
　ぎりっ･･･と鎖が引っ張られ、ハロルドの首の後ろに首輪の革と金具が食い込む。それでも、熱く締め付けられて、萎えることはない。
「サ、カキ･･･さんっ、はっ･･･ぁ、そ･･･なに、しちゃ･･･っ･･･」
「ハロ･･･ハロ･･･っ」
　ハロルドに抱きついたまま、サカキが腰をゆする。蕩けた入り口がぐちぐちと音を立てて、硬い楔を舐めまわしている。
「っ･･･ぁあ、ハロぉ･･･」
「だめ･･･サカキさん、俺、サカキさんの犬なのに･･･サカキさんの中で、また出しちゃうよ･･･」
「ひっ･･･」
　サカキの中が、きゅんと締まった。
「いいっ･･･もっと･･･もっとぉ･･･奥で･･･っぁあ！」
「ぁ･･･んっ、サカキさっ･･･ぁ！」
　サカキの中を満たしている楔がさらに質量を増し、揺さぶられるたびに、熱くなった頭の中に火花が散る。恥かしげも無く脚を開いて雄を受け入れ、気持ちいいところを擦られて、体中を優しく撫でられて、喘ぐ舌と唇を音を立てて吸われ、愛しげに名前を囁かれる。甘やかされすぎて、どろどろに、溶けそうだ。
「サカキさん･･･、大好きです。もっと･･･俺で気持ちよくなって･･･」
「は、あっ！ハロ･･･いいっ！！も、ぉ･･･っ、ぅああっ！ぁあああ！！！」
　ぎゅうっと体の芯に力がこもるのと同時に、突き上げられる快楽に甘く激しい解放の衝動に襲われる。自分の腹や胸にぶちまけながら、愛しい自分だけの男の名を呼んだ。
「んっ･･･！」
　サカキの望みどおりに一番奥まで満たして、溢れるほどに吐き出されたハロルドの欲望がサカキの体に染込むと、細い腰に嬉しそうに震えが走って、またハロルドをきゅうと締め付けた。
「はぁー･･･っ、はぁ･･･」
「サカキさん･･･サカキさん、すげぇ、可愛い･･･」
　握り締めていた鎖から離れたサカキの手をとり、ハロルドはその指先を口に含んだ。
「ん･･･っ！」
　その甘やかな刺激に、サカキの腰が跳ねた。
「は、ぅあ･･･っ！は、ろ･･･」
「ぁ･･･んちゅ･･････サカキさんの中、またヒクヒク動いてる。はぁ･･･気持ちいい･･･」
　蕩けた笑顔のハロルドに抱きしめられ、腹の中の物がまた大きくなっていくのを感じて、サカキは涙まじりの悲鳴を上げた。


　涸れない泉のように湧き出す若い性欲に付き合った結果、当然の成り行きとして、抱き潰されて動けない三十路を超えた男は、夜になってもベッドの中にいた。
「･･････」
　それをかいがいしく世話するブラックスミスが一人。襟から少し見える首周りの赤紫色の線は、首輪が擦れた痕だ。
「具合はどうですか？」
　勧められたハチ蜜を垂らした温かい紅茶を飲み干し、サカキは再び枕に沈んだ。
「･･･昼間よりはいい」
　腰の痛さというか精根尽きたダルさというか、とにかくもう若くないという自覚がひしひしと胸をさいなむ。元々跳ねているが寝癖でさらにボサボサになった髪を撫でていく指の感触が気持ちよくて、うっとりと目を閉じる。耳の後ろを撫でられると、くすぐったくて身じろぎしたが、頬に唇の軽い感触が触れて、させるに任せた。
「･･･やっぱり、サカキさんは俺に甘すぎです」
「好きなんだからいいだろ」
「そ、れは･･･どっ･･･」
「両方だ。お前も、甘やかすことも」
　薄目を開けてじろりと睨むと、真っ赤になったハロルドが、困ったような嬉しそうな顔をしていた。
「煽らないでください･･･」
「まだする気か！」
　ぺちっと額をはたくと、きゃんとか言いながら、ベッドの端に頭をつけて蹲った。
「･･･俺、サカキさんに相応しい男になりたいです」
　ぽそぽそとした呟きに、サカキは肘枕を立てて恋人を見下ろした。
「でも、どうすればいいのか、よくわかんないんです」
「そのままでいいって言っても、納得しねぇんだろうな」
「･･････」
　蹲ったまま顔を上げないハロルドに、サカキはため息をついた。
「あんまり俺に理想を見るな。これでも･･･あー･･･いや、いい。けっこう汚い人間なんでな」
　ハロルドがちらりと顔を上げたので、サカキは気まずげに視線をそらせた。口に出すのはちょっとはばかられる、過去のあんな事やこんな事が思い出され、血の気が引くような、頬が熱くなるような、おかしな気分になった。
「･･･いろんな人とカンケイしてたのは、わかっていますけど？」
「うん、まぁ･･･それもある」
　また微妙な言い回しに、ハロルドは突っ込んでいいのかよくないのか困っている。サカキも言った方がいいのかやめておいた方がいいのか、判断がつかない。
「無理に言わなくていいですよ？」
「言わなきゃハロルドにわからないだろうが」
　サカキはとりあえず、できるだけ大まかに括って、ソフトな言い回しを選んだ。
「つまりだな、俺は清廉潔白でもないし、他人に気をつかってやれるような出来た人間でもない。ハロと付き合うまでは、いろんな奴と寝たし、大きな声じゃ言えないヤバいことや、ハロだったら許さないだろうこともしてきた。今だって、効率の出る狩りもできないし、プリの支援が無けりゃ製薬だってたいした成功率じゃない。自分で言うのもなんだが、明るい展望のある将来なんて持っていない、普通のオッサンだぞ？年明けたら、俺がいくつになると思っているんだ」
　そこまで一気に言うと、サカキは嗄れた声にひとつ咳払いをして、一番大事なことを言った。
「･･･それでも、俺はハロルドにそばにいてもらいと思っているし、ハロは俺がいいって言うんだろ？･･･それでいいじゃねぇか。相応しいとか相応しくないとかじゃなくて、俺はじぃさんになっても、ハロルド以外に、こうして世話を焼かれるつもりはない。わかったか」
　目を丸くして固まっているハロルドの額を、サカキはもう一度「わかったか」と念を押しつつ、指先で突っついた。
「は、い･･･。わかり、まし･･････ぅ」
　完熟トマトのように赤くなったハロルドの、綺麗な青紫色の目に大粒の涙が盛り上って、サカキは慌てた。
「こらっ、何で泣く！？」
「･･･す、ませ･･･嬉しい、です･･･」
　ぼろぼろと零れる涙を拭うハロルドを見かねて、サカキは痛む腰をかばいつつ起き上がって、ふさふさの茶髪を撫でた。
「ひっく･･･サカキさぁ〜ん･･･」
「なんだ」
「ぅ･･･大好きです。サカキさん、のこと･･････ひっく･･･一生、大事にします。･･･愛してます」
「俺もだ」
　まるで結婚式のような告白に、サカキはいつものように口元にだけ微笑を浮かべ、涙でべしょべしょになった頬に口付けた。


　その後、ハロルドに絡もうとする輩に、琥珀色の鋭い一瞥が加えられるようになり、二人が大通りでも手をつないで歩いていったのを、ユーインとクロムが見かけたとか･･･。
「わぉ」
「珍しい･･･。あんなにベタベタしているなんて」
「いいなー。クロム、俺も手ぇ繋ぎたい」
「ちょ･･･こんなところで、やめろ！恥ずかしいっ！！」
　こちらは結婚しても、前途多難なようだ･･･。