ネコの散歩道−3−
「はぁーっ・・・はぁ・・・っ」
「んっ・・・すっげぇ、マルコの中、きもちよかったぁ」 腰を抱えるように背中に頬擦りしてから、真澄はそっと身体を離した。 「ぁ・・・」 「まだ後ろがいい?」 「・・・抜いちゃやだ」 真澄に向かい合うように体を起こしたマルコに、涙声で訴えられ、真澄はうーんと辺りを見回した。 「あ、これでいっか」 そんなに太いわけではないが、逆に、簡単に割れてしまうほど脆いわけでもない。肌があらわになっている状態で使う物を作るのに、錬金術師達は試験管一本すら、ちゃんと考えて選んでいる。・・・人によっては、わざと凹凸が付いたものを売っているのだ。 真澄はジェルの入っていた試験管を、マルコのもの欲しげなアナルに差し込んでやった。 「ぅ、ぁあ・・・あぁっ・・・!」 「よっし。すげぇな、ほとんど入っちまった」 「ん・・・つめたい・・・」 「我慢しろよ〜。このまま俺の中に入れてくれるんだろう?」 ぱぁっと頬を染めたマルコと、ついばむように唇を合わせ、真澄はしとどに濡れたマルコの雄を手に包んで扱いた。少し力を失っていたものは、括れを伸ばすように撫で、割れ目を指の腹で擦ると、また先端から雫を溢れさせて、くちゅくちゅと音を立てた。 「ぅ、ぁ・・・ッ!」 「んっ・・・もう起った。ほら、俺にもマルコをくれよ・・・」 抱き合ったまま、今度は真澄が下になるようにベッドに転がる。真澄の中もジェルにまみれ、擦ってくれる楔を待ちわびていた。 マルコは真澄のより大きくて、真澄は期待を込めて脚の間にマルコを迎えた。 「真澄・・・」 「ちゃんとケツに栓したんだ・・・こぼすなよ?」 「うん」 くちゅ・・・と、マルコが真澄の中に入ってくる。 「は・・・ぁ・・・」 「真澄の中には、僕が入れてあげる・・・」 先端が納まり、さらに真澄の中を満たしていく。悪戯のように腰を引かれ、その度に内壁を擦りながら深く入ってくる楔に、真澄は両膝を抱えられたまま、蕩けた笑顔で腰を振った。 「あっ!あぁっ・・・ぅ!」 「ここ?・・・精液出されたいのは、もっと奥・・・だよね?」 その長い先端が、くっと真澄の奥をつついた。その瞬間、腰が抜けるような痺れが脳天へ走り、楔に性感をこすり付けるように、きゅっと内壁が締まった。 「ぁひぃぃッ!イイ・・・ッ!ぁっ・・・ああっ!!」 ベッドに押さえつけられたまま、真澄は快感を逃がそうと悶えるが、マルコの力にかなうはずもない。抱えられたままの膝が自分の肩につくほど体を折り曲げられ、ヒクヒクと震えながら雫をたらす茎と柔らかなふくらみが、そのまま抱き合うように覆いかぶさってきたマルコの下腹部に当たっている。そしてその奥は、たっぷりとジェルを塗りこまれ、マルコが出入りしてじゅぶじゅぷと音を立てている。 「はっ・・・はっ・・・っく・・・」 「マルコ・・・マルコ、血は・・・?」 「・・・っ」 快楽に溺れたいのに、その触媒を忌むせいで、いつも辛そうな友人の頬を撫で、真澄は自分の唇を強く噛んだ。ぴりっとする痛みに続いて、鉄臭い味が広がる。 「ぅっ・・・!!」 獲物を捕らえる猛獣のような素早さで唇に吸い付かれ、無理な力のかかった体勢に真澄は呻いた。 丁寧に血が舐め取られるが、その間もがくがくと揺さぶられ、真澄は口を開けたまま喘いだ。 「はぁ・・・はぁっ・・・ぅ、くぁ・・・っ」 必死でしがみつく真澄の指がマルコの肩に食い込むが、すでに抱いている相手が誰だかわかっていないような様子のマルコに、力加減をするような要求は通らない。ほとんど襲われているかのような抵抗の無力さに、何度もしてわかってはいても、恐怖を感じる。 「ひっ・・・ふ・・・ぁっ!あぁっ!す、げぇ・・・っ!」 幸か不幸か、それすら快感の要因になる真澄は、無遠慮な熱を包み、さらに愛撫するように締め付けた。激しい動きに、少し体をあわせるだけで、内壁を擦り、奥を突き上げる楔は、たまらない快感を与えてくれる。 「はっ・・・はっ・・・ぁっ!」 「ぁんっ!・・・ぅああっ!マルコ・・・マルコぉ・・・っ!!」 真澄は首筋に刺さった鋭い痛みに呻くと同時に、腹の中をかき回していた熱が弾けたのを感じた。真澄自身はとっくに自分の腹や胸を汚し、まだまだ続くだろうマルコの激しさを期待して、淫らに震えていた。 「もっと・・・ぉ」 甘く悲痛にねだる唇に、真澄は快楽に上気した綺麗な顔を抱き寄せて、鉄臭いキスをした。 後始末をして汗と精液を流せば、気分はすっきり爽快。ただし、体力の消耗、特に腰のだるさは、いかんともしがたい。歯形や引掻き傷はマルコがヒールで治すが、毎度暴走しがちな嬌態をさらして落ち込むのを癒すのは、「よかった」と満足げな互いの笑顔だったりする。 床に落としたままだった服を拾って椅子にかけただけで、二人は怠惰なバスローブ姿まま、マルコのベッドに寝転がっていた。 とりあえず出せるだけ出した、そんな表現にすると、下品極まりないようだが、二人にとっては実に散文的な日常の一部に過ぎないのだから仕方がない。この身体に宿った性質との付き合いは、色気というより淫気が強すぎて、胸をときめかせるような恋愛とはほとんど無縁だったりする。 身体の相性がよかったり、優しかったり上手だったりで、もう一回してもいいという相手の話ならするが、「好きになった」などという話題は、今までにない。・・・マルコが「失恋した」という話なら、一度だけあったが。 「彼女欲しいなぁ。彼氏でもいいけど」 「え、シノさんとは・・・?」 「シノちゃんとは、そういうんじゃないぁ・・・」 真澄がBladerに入って以来、相方と呼べるぐらいの時間を一緒に過ごし、体をあわせたことも数え切れないくらいある彼女だが、恋人として互いを見たことはない。 「う〜ん、近所に住んでいる仲の良いお姉さん・・・とか、そんな感じ」 「はぁ・・・」 「シノちゃんに彼氏できたら、俺相方解消してもいいもん。俺を守ってくれるプリの代わりはいるけど、シノちゃんの好きな人の代わりはいないもん」 喜んで祝福すると、真澄は断言する。 「柾兄は柾兄で、なんだかんだ言いながらサブマスといい感じだし。俺にばっかりかまっていると、二人ともシアワセ逃がしちゃいそうじゃん」 バスローブのままシーツに包まって、真澄はすぐそばにあるマルコの綺麗な顔を眺めた。 「・・・真澄、寂しい?」 「わか・・・んね・・・」 心地よい疲労に、大きな欠伸が出る。真澄はとろとろと重くなっていく瞼を、逆らわずに伏せた。マルコの体は温かく、抱きしめてもらうと安心した。 「俺・・・すき、なひと・・・ぃ・・・・・・」 最後はむにゃむにゃと聞き取れなかったが、マルコは肉の薄い真澄の身体をかき抱くようにして、自分も目を閉じた。 自分達を愛してくれる人たちはいる。でも、人生を共にしてくれる人は、はたして現れるだろうか・・・。 真澄はマルコと彼の従兄と一緒にお茶を飲んだり、買い物につきあったりと、のんべんだらりと過ごして、夕日が沈む頃になって、ギルドチャットでいまから帰ると兄に伝えた。 『真澄くん、心配したんだよ!』 『あーわりぃ・・・でも、楽しかったから』 『そ、それはお兄ちゃんといると楽しくな・・・』 『どこまで行っていたんですか?』 他はまぁ普通なのに、重度のブラコンを患っている柾心が深く沈み込む前に、穏やかなサブマスの声が重なる。 『PD4。マルコと遊んできた。あいつ発光したよ』 おおっというどよめきと一緒に、めでたいな祝いはどうすると、さっそく賑やかになる。 『その様子だと、二人だけでも行けたみたいだな』 真澄とマルコを引き合わせてくれたマスターの声に、真澄は目の前に誰もいなくても、こっくりと頷いた。 『うんっ。二人だけでオシリス倒したんだぜ』 一拍あけた次の瞬間、怒涛のようなギルメンたちの声に、真澄は顔をしかめた。喧しい。 『なんて危ないこと・・・』 『ハレルヤ!!それでこそ私の面白可愛い相方ですわっ!無断でPT抜けたのは許してさしあげます!!だから、明日一日は、私と遊ぶのですわよっ!!』 泣きそうな兄の声を掻き消すように、晴れやかな女の声が響いた。相方の許しているのかいないのか、微妙な宣言にも、真澄は二つ返事で応じた。 そして、真澄は道の向こうからやってくる、長い黒髪を束ねたチャンピオンと、紫の髪に白いバルーンハットが目立つハイプリーストの間に、すっきりと納まった。 「ただいまっ!」 「「おかえり、真澄くん」」 異口同音に迎えられ、渡されたPT要請を受諾する。 たまに冒険するのも楽しくていいけれど、やっぱりこの二人の間が一番落ち着くと、真澄はねぐらで丸まる猫のように、上機嫌で柾心とシノを見上げた。 例えこの三人が、それぞれ別の人と結婚したとしても、この関係はきっと変わらない。シノは真澄で遊ぶし、柾心はブラコンのままで、真澄はそんな二人が好きなお騒がせ人間なままだろう。 そういう、楽でいながら、たしかな絆のある関係なのが、暖かくて居心地がよかった。 次に真澄がマルコに会ったとき、すでに空色の法衣に身を包んでいた。身長は真澄の胸くらいにまで縮んでオーラもなかったが、相変わらず綺麗な顔に、少し困ったような微笑を浮かべていた。 「転生しても治らなかったよ」 真澄は小さな友人を抱き上げて、くるりと回転した。腕力のないハイウィザードに少年の体は重たかったが、普段から四方八方にバランスを取る真澄に、遠心力は問題にならなかった。 「だぁから言ったろ?俺たち、友達でよかったなぁ?」 「うん」 今度は、アマツの縁結びの神社に一緒に行こう。そう提案すると、マルコは嬉しそうに頷いて、真澄の首っ玉に抱きついた。 |