珍しい土産


それはクラスターには当たり前すぎて、他人にとっての価値など、まったくわからなかった。

だが、うれしそうに持ち帰るハロルドを見て、珍しい物ならば喜んでくれるかもしれないと、不器用ながら思ったのだ。


「それでね、クラスターさんがおっきなエンペリウムの欠片を持って来てくれたの!ハロさん、ありがとう!」
「あはは〜。よかったね〜」

にこにこと嬉しそうに話すみつきに、ハロルドはどう反応したらよいものか困りつつも、とりあえず微笑んでおいた。
隣では、思いっきり笑いを堪えて、丸めた背中がぴっくんぴっくん震えているサカキがいる。

「そのエンペどうしたの?」
「うちに飾ってあるわ。でも、ちょっと据わりが悪くて・・・」

たしかに、砦の巨大エンペリウムは、こちらの都合いいようには割れてくれない。

「もっとしっかりしたクッションみたいな物はないかしら?ハロさんのところは、どうしているの?」
「あー、うちのはアマツ産の、置物用の座布団を使っているよ。綿がぎっしり詰まっていて、エンペの重さでも耐えられると思うよ」
「そうなの!ありがとう!」

みつきは相変わらず上機嫌で、丸太のカートを牽きながら去っていった。

「・・・どの面で、エンペ・・・ぷっ、持ち帰ったんだ、あの、男は・・・っ!」
「サカキさん・・・」

みつきの前や人通りの多い道で大笑いするわけにもいかず、サカキは一生懸命に耐えた。


だが、同じ情報を得たもう一人の旧友は、遠慮することなく、自分の執務室で笑い転げ、腹筋が痛くなったらしい。




END