クリスマスキャロルの頃には−3−


「やっ・・・そこは、自分、でっ・・・んっ!」
 ジェルと一緒に入ってきた指先に、ジョッシュは恥かしくて頬が熱くなった。誰もが見惚れるような美人に、自分のそんなところをいじらせるのは、悪いことのように思える。
「私では気持ちよくならないか?」
「そ・・・じゃないっ・・・ひっ、あっあっ・・・!」
 緩やかに動く長い指をきゅっと締め付けてしまい、ますますイイ所に当たってしまう。
「だめ、だ・・・って!はっ・・・や、だ!そんなに、したら・・・ぁあっ!イ・・・っちまうって!」
「後ろだけでこんなに感じるなんて、どれだけ開発したんだ」
「うる、せ・・・っ!個人差だ・・・っぁああぅ!!」
 個人差にしては慣れた入り口に、三本目の指が入ってきて、ジョッシュはシーツを握り締めて耐えた。広げた脚の中心では、まだ触ってもいない雄がかちかちに反り返り、扱きたくてたまらない。
 半端に脱げた厚手のサンタの衣装が、快感で力の入らない体を拘束しているようだ。
「サンダルフォン・・・はやくっ!」
 脚を広げた状態でのしかかられて、それでも自分からすがってしまわぬ様、腰を振って強請る。
「ジョッシュの体はエロい方向に器用だな」
「褒めてんの貶してんのどっち?」
「私には出来ないことだから、たぶん賞賛したのだ」
「素直に喜べないいいか、たっ・・・はぁっ!」
 かりっと喉元に歯を立てられ、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け抜けていく。温かな舌がゆるゆると首筋を這い、痛いほど尖った乳首に絡まって、ジョッシュに涙まじりの嬌声を上げさせた。その間も、後ろを解す指は動きを止めず、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てている。
「はやく・・・ぅ、サンダルフォン・・・入れて・・・も、はやくぅっ!!」
「入れたらすぐにイってしまうだろ?」
 ずるりと指が抜けていき、ほっと息をついたのもつかの間、根元をぎゅと締め付けられる感触に、思わず半身を起こしかけた。
「なにそのゴーモン・・・っ!この、ド変態!!」
 ごついペニスリングがジョッシュの根元をぴっちりと締め上げ、これでは後ろだけでイけない。
「このくらいは経験済みかと思ったのだが?」
「そーゆー問題じゃ・・・っ、ちょっ!待って!待ってったら・・・くッ、ぅん!!!」
 ずぶずぶにほぐれたアナルに、硬くて太い塊を受け入れ、ジョッシュは必死で悲鳴を堪えた。
「はぁっ、ヒッ・・・ぁ、あッ・・・!はぁっ!ああぁっ!!」
「ん・・・ジョッシュの中は熱いな」
 狭い中は、一番欲しいものをもらって、その形に自ら擦りつけようと蠢いた。誰に抱かれても、もう満足できなかった。こうして冴え冴えとした美貌に見下ろされながら、卑猥で凛々しい雄に後ろを犯される快感を覚えてしまった。
「サンダルフォン・・・サンダルフォン!もっとぉ!」
「・・・そんなに締めたら、激しくしたくなるじゃないか」
 イきたいけれど、イけない。射精をせき止められたまま、よく濡れた尻の中をごりごりと擦られ、奥まで広げられ、たまらない快感に何も考えられなくなる。
「イイ・・・ッ!イかせ・・・イかせて・・・ぇっ!!」
 サンダルフォンを傷つけないようにシーツを握り締め、ジョッシュはさらに脚を広げて、腰を回した。
「サンダルフォンのっ・・・きもち、いいっ・・・!!すご、い・・・っ!ぁあっ・・・もっとぉ!もっと、サンダルフォン!!」
「ジョッシュ、気持ちいい?私だけのものになるか?」
 乱れて張り付いた髪を優しく撫でられ、浅ましく開きっぱなしで喘ぎをもらす口にキスをされ、ジョッシュは後ろの穴で咥えて揺さぶられながら、何度も頷いた。
「いいぃっ・・・なる、からぁ!あぁっ!!おくっ・・・イく!イくぅ!!外して、くれ・・・!!出るぅっ!!」
 暗闇の中でもわかる綺麗な顔が、小悪魔のようにうっとりと微笑んだ。べとべとになったペニスから縛めが外され、ぼろぼろ零れる涙が赤い唇に吸い取られた。
「ジョッシュ・・・」
 しっかりとシーツを握り締めていた手を撫でられ、指を一本ずつはがすように解かれた。
「私を抱きしめてくれ」
「っ・・・」
「私が守るから、いまは、武器は要らない」
 諭すような囁きが、胸を弾ませる呼吸をする唇を塞いで、くちゅりと舌が絡み合った。
「サンダルフォン・・・」
 折り曲げられたジョッシュの体の奥に、ずくっと太い楔が突き刺さった。
「あぁァッ!!」
「ジョッシュ、ここは誰のものだ?」
「はぁっ・・・サ、ンダルフォン・・・のっ・・・はぁっ!あっ!もっと・・・!」
「もっと・・・?」
「もっと、突いて・・・!おく、かき・・・まわしてくれ・・・!」
「こうか、ジョッシュ?」
 じゅぷじゅぷと激しく出入りする楔が、さらにジョッシュの奥まで入ってきて、絡みつく性感帯を擦りあげて行った。
「イイッ!い、い・・・サンダルフォン!擦って!中に・・・っぁあ!!」
「中に?」
「なかに、出して・・・!あぁっ・・・す、ごいぃっ!!・・・おれに・・・おれに、サンダルフォンのせいえきっ・・・おくに・・・ッ!もぉ・・・出るぅっ!!イくっ!イくぅ!!」
 深くまでサンダルフォンに犯され、その硬い楔に性感を突き上げられるすさまじい快感に、ジョッシュは我慢させられていた分を、制御できない悲鳴と共に放った。
「くっ・・・!!」
「ぁ・・・あぁ・・・っ!」
 反り返った雄からだらしなく白濁を噴出し続ける代わりに、ぎゅうぎゅうと締め上げた中に熱い性欲を吐き出され、眩暈に落ちながら満たされていく。ジョッシュは滑らかな白い肩に声もなくしがみつき、蕩けるような快感のまま腰を振って貪った。


「メリークリスマス」
「あ、どうも」
 ジョッシュの寂びて滑らかなはずの声は、喘ぎすぎてかすれた声になっていた。
 こつんと毛布越しに当たったのは、夜中に受け取り損ねた、サンダルフォンの名前入りプレゼントボックスだ。
 分厚いカーテンに昼の光はほとんどさえぎられているものの、明るさを避けて毛布をかぶったままジョッシュがプレボをあけると、中から出てきたのは青ポーションだった。
「おお、ありりー」
「ふむ、普通過ぎる物が出たな」
 隣でクッションにゆったりと体を預けるサンダルフォンは不満そうだが、ジョッシュはテイム品や終わったクエ品などが出てこられるよりずっといいと思うので、これはありがたく頂くことにした。
「私のは何が出るかな?」
 サンダルフォンも包装を解いて、ぱかりとプレボをあけた。
「む・・・?」
「なんだった?」
「黒い杓子」
「ぶっ」
 出てきたのは、どう見てもおたまだ。材質は良いのだが、冒険にはあまり役に立たない収集品だ。
「これは、私に料理を作れということか?」
「ヤメテ。アンタが作ると、家庭料理って言うか、サバイバル料理になっちゃうから」
 子供の頃は貧しくてゼロピーをかじっていたというから驚きだ。炒った方が香ばしいが生でもいけるって、ジョッシュには想像がつかない世界だ。
「食べられる野草は覚えておいた方がいいんだぞ。アマツにも七草というものがあってだな・・・」
「それとこれは別っ!もう、ご飯はジョッシュさんが、美味しいのを作ってあげます!」
「ふむ、そうだな」
 せっかく家政夫がいるのだしと思い直したのか、サンダルフォンはおたまをくるくる回しながら、にっこりと微笑んだ。
「チキンクリームリゾットが食べたい」
「・・・はいはい」
 サンダルフォンが我侭に振舞うのはジョッシュにだけで、その全力な要求群をことごとく打ち返し、切り刻んで料理できるのは、これもジョッシュだけに許されたことだ。
 たぶん、ジョッシュが他の人間に家政夫として誘いを受けたなら、サンダルフォンはどんな手段を使ってでも阻止するだろう。そんな光景が、ジョッシュの思い上がりではなく、自然に感じられるようになった。
 恋人というには、少し違う。だが、ただの家主と使用人というのとも違う。心は明確なのに、その感情が型にはまらないから関係はあやふやで・・・でもその緩さが、きっと自分達には合っているのだろうと、ジョッシュはエプロンを締めながら思った。