変身・・・!


 ようやく残暑がひいてきた九月の半ばになって、サカキとハロルドは招待状を受け取った。
 差出人は、ハイウィザードのユーイン。ギルド「エルドラド」のマスターだ。
「ハロウィンの仮装パーティーだって!!」
 目を輝かせるハロルドに、サカキは一人で行けとは言いづらい。ハロルドも知り合いとはいえ、ユーインはサカキの顧客だし、サカキが行かないなら自分も行かないと言うだろう。
 そもそも人付き合いが苦手なサカキは、マスターが顧客とはいえ、ギルドのイベントに顔を出すなどどうも気が引ける。だいたい、サカキたちを知らない人間が多いだろうに・・・。
「・・・行きたくないですか?」
 サカキが知らずため息をついたのを、ハロルドは見ていたようだ。
 純粋に好意を受け取るハロルドに説明するのも億劫だし、余計なことを言って凹ませることもない。サカキは話題をそらせた。
「仮装してこいって書いてあるぞ。なに着るつもりだ?」
「えぇ〜っと・・・なんにしよう」
 とたんに笑顔になったハロルドは、ジャックのカボチャ頭は一度かぶってみたいなぁとのたまう。
「どうせかぶるなら、ボンゴンとかがいい」
「ボンゴンかぁ・・・」
「転生職気分でハワード=アルトアイゼン」
「リアルすぎますよ〜!」
 ハロルド的にはイマイチだったらしい。サカキとしては露出が楽しみだったのだが、ヨコシマな望みは無意識にスルーされたようだ。
 聞こえないように舌打ちしつつ、素直にハロルドのイメージを言った。
「・・・狼男」
「えぇ〜それはなんか、ありきたりじゃないですかぁ?」
「ガリオンとか、アトロスとか・・・」
 ハロルドの見えない犬耳が、ぴこーんと立ったような気がした。
「かっこいい!!」
「・・・そうか。猫に変更して虎人とかエドガでもいいぞ」
「きぐるみいいですね。あったかそう」
 ずいぶん可愛い獣人が出来上がりそうだなと内心で呟くサカキを、今度はハロルドがじぃっと見つめている。
「サカキさんは?」
「は・・・?」
「サカキさんも仮装するんですぅ〜!」
「俺は・・・」
 何になればいいんだと、半ば自棄になって・・・
「・・・シーオッター」
 ぶっと噴いたハロルドが悶絶した。
「それ・・・それは・・・可愛いすぎますっ!!」
「そうか?」
 ラッコ帽かぶって二枚貝の形をしたリュックを背負って終わりとか、簡単そうだと思ったのだが・・・。
「ミョグェとか、オウルデュークとかどうですか?」
「面倒くせぇ・・・」
 誰がその衣装を用意するんだと思ったが、この季節になると仮装用の衣装などあちこちで売っている。
「・・・全身タイツのゼノークとかインジャスティスとかでなければ、何でもいい。ハロのセンスに任せる」
「りょーかいしましたぁ〜!!」
 やる気満々なハロルドに丸投げして、サカキは結局行くことになった仮装パーティーへの返事を出すことにした。
 ハロウィンまでに、お菓子の用意もしなくては・・・。

<「PHANTOM CHAIN」に続く>