愛すべき失敗
ルーンミッドガッツ王国の首都プロンテラ。
いつも多くの人で賑わい、同時に、あまたの事件もおこっている。 無骨であまりお洒落ではないが、造りが頑丈で防音性に優れていることから、主に生産を得意とする冒険者や楽士達が住んでいるアパートの二階。 ブラックスミスのハロルドは、隣の部屋からの物音に耳を澄ませた。ちょっとやそっとの音では、ここの壁は跳ね返す。それが聞こえてきたということは・・・ (部屋の中でアシデモやっちゃったとか?) そんなことをすれば部屋ごと吹っ飛びそうだが、隣人はおっちょこちょいな人物ではなく、何事が起きたのか余計に心配になる。 自室を飛び出して、隣の部屋をノックする。 「サカキさん?大丈夫ですか?」 ドアの向こうでは、なにやらガサゴソと音がするが、住人であるクリエイター、サカキの声は聞こえない。 「開けますよ。って、うぎゃああああ!!」 内開きのドアだったら開かなかったであろうほどに、マンドラゴラやフローラなどの植物系モンスターが、雪崩を打ってハロルドにぶつかってきた。 「バ、バイオプラント・・・?」 野生のものだったならば、ハロルドは容赦なく噛み付かれたり、種や触手で攻撃されただろう。しかし、サカキの部屋から溢れ出したモンスターたちは、しりもちをついたハロルドの周りで、のん気に鼻歌を歌いながら、もぎゅもぎゅと蠢くだけだ。どう見ても、サカキの作ったプラントボトルから生まれたものに違いない。 「サカキさん?だいじょう・・・うっわ、すっげぇな」 普段ならばきちんと整理され、たくさんの薬品や製薬材料があるにもかかわらず、殺風景とさえ見えるサカキの部屋は、一変してジャングルになっていた。 「何本ボトル割っちゃったんだ?」 「・・・ハロルドか?」 そのやや苦しげな声に、ハロルドは葉や触手を掻き分けて、サカキの作業机がある部屋まで進んだ。やはり、そこもジャングルと化しており、足の踏み場もない。 「サカキさん、どこですか!?」 「こ、ここ・・・だ」 「?」 かろうじて角が見えている作業机のあたりには、フェアリーフが群生しており、大きな葉の上に座った全裸の幼女たちが、にこにことハロルドを見下ろしている。 幼女に見えるのは擬態のようなもので、本体はその葉っぱが続いている太い茎と幹だ。野生のフェアリーフは、大きな種を高速で飛ばして攻撃してくる。 野外で出会ったら危険極まりないが、アルケミストやクリエイターたちが作るバイオプラントは、創造者である人間を攻撃することはない・・・はずなのだが。 「悪い。手間をかけるが、その辺に生えている奴を倒してくれ。これでは身動きが取れん」 ぱたぱたと振られる手が、葉の向こう側に見える。どうやら、過密に生やしてしまって、自分が閉じ込められてしまったようだ。 「了解っす」 ハロルドは隣人を救出すべく、愛用のソードメイスを無造作に振り回した。野生種と違って無抵抗なモンスターを殴るのは心が痛むが、サカキの自由には代えられない。 ほとんど道を切り拓くようにして、ハロルドはやっとサカキに手が届くところまでたどり着いた。 「なんつーお約束な状態になってんスか」 「言うな」 手入れ不足のぼさぼさな髪は、あたりの植物と同じ緑色。その前髪の下から、あまりにも剣呑な眼差しがハロルドを射抜く。 フェアリーフの蔦に宙吊りにされ、ヒドラやマンドラゴラの触手に撫で回されているクリエイターは、くすくすと笑う気心の知れた隣人に、仏頂面で助けを求めた。 「武器も何も手が届かなくて・・・降ろしてくれ」 たしかに、サカキの剣は鞘に納まったまま床に転がっており、カートは壁際に鎮座している。 「ええと、どこから手をつけたもんかな」 少なくとも三体のフェアリーフがサカキに絡みつき、擬態である全裸の幼女がうっとりと頬ずりしている。マンドラゴラの硬くてしなやかな触手はまだしも、ぬめぬめしたヒドラの触手など、服越しでも気色悪かろう。 普通ならパニックを起こしそうな肌触りだろうが、サカキはいつもどおりの不機嫌そうな表情のままだ。 「・・・なんか、懐かれてません?ロリコンとか触手好きが見たら涎垂らしそうな絵ですが」 「だからなんだ。俺は別に、幼女にも触手にも興味はない」 研究対象だったら別だろうなぁ、とハロルドは心の中で反論したが、口に出しては別のことを提案した。 「知ってますよ。だからね、たまにはこういうのもいいかなぁと・・・」 相手が身動き取れないのをいいことに、ハロルドはサカキのケープの留め金を外して床に落とすと、胴衣の前を開き、ベルトに手をかけた。 「ちょっ・・・やめんか!こんな時に!」 サカキはじたばたともがくが、所詮は非力な製薬クリエイター。蔦や触手が食い込むばかりで、どうにもならない。 「ほら、マンネリは倦怠期の始まりだって言うじゃないですか。タユマヌ努力と研究が、いずれ大きな結果を・・・」 「このドアホ!!だからって今・・・っ!」 その気になっていないものをいきなり口に含まれ、サカキの全身がこわばる。 ハロルドはわざと音を立てて、舌と唇でサカキの男根を愛撫した。唾液をたっぷりと乗せた舌で括れを丁寧につついてまわると、先端を上あごにこすりつけるように、奥まで咥え、同時に裏筋をザラリと舐める。根元を指先で触れただけで反応する可愛らしさに、思わず強く吸い上げた。 「ひぅっ!・・・ハロ・・・やめ、うっ・・・」 サカキの弱いところを知り尽くした、BSの器用な舌使いは、淡白そうに見える男をあっさりといきり立たせた。 咥えたままちらりと見上げれば、威嚇しているような普段の眼差しはなく、二人だけの情事に溺れる寸前の、少し戸惑ったような、恥ずかしげに目元を赤くしている恋人がいた。 「あ、やあっ・・・!」 「あんまり声を出すと、外に聞こえますよ?玄関開けっ放しだし」 「!?」 目をむいたサカキに、ハロルドは再び苦笑い。 「いや、だってほら、ドア開けたらバイオプラントが雪崩ってきたし、部屋の中はジャングルで・・・サカキさんが心配だったから、そのまま。俺はこのままでも平気ですけど?」 「ふざけんなっ!閉めてこい、馬鹿っ!!」 そう言われることは予想していたので、ハロルドはニヤニヤと笑いながら、サカキから離れた。もちろん、ハロルドと入れ替わりに、サカキの恥ずかしいところに触手が絡みつくであろうことは見越している。 「ひっ・・・ちょっ!」 「じゃぁ、玄関先を片してきますんで」 罵声が艶のある悲鳴になりそうで唇を噛むサカキを尻目に、ハロルドはうきうきと玄関へと戻った。 サカキの部屋は一番奥まった角部屋であり、その隣はハロルドの部屋なので、玄関を開けたままにしたとしても、情事の声が他の人間の耳に届くことはないだろう。しかも、いまはバイオプラントが溢れており、不審に思われはしても、好んで近付こうとする者がいるとは考えにくい。 しかし、そんなことまで考え至れるほど、現在のサカキの状況は冷静ではない。必死に声をかみ殺すことに精一杯なはずだ。 「わー、俺って悪いやつー。後でサカキさんにぶっ飛ばされそうだから、ここはナイショにしておこう」 にひひひとイヤラシイ笑みをこぼしつつ、ハロルドはドアが閉められるように、とりあえず邪魔な分だけを叩いて回った。その他は、時間がたてば消えるはずなので、放っておくことにした。あまり待たせては、さすがに機嫌を損ねるだろう。 きちんとドアを閉めて鍵をかけると、それだけで気分が高まる。普段からサカキとの情事は、最高に満たされるものだったが、あまり体に負担をかけるような無理はしたことはない。そんなことをしなくても、十分に法悦を得ることは出来た。 羞恥と悦楽に上気したサカキの姿を思い出すだけで、ハロルドの雄はジーンズを押し上げた。 (ま、たまには変化をつけないとね) 純戦闘型の自分とは真逆の、繊細で気難しいクリエイターが、男にしか反応せず、しかもその相手に年下の自分を選んでくれたことは、ハロルドにとって密かな誇りだった。いつも近くで露店を開いていた、不機嫌そうに見える製薬クリエに、尊敬と親愛の眼差しを送っていた身であったから・・・。 「サカキさん、とりあえず玄関は閉められましたよ。プラントはまだ溢れかえっていますけど、そのうち消えま・・・」 相変わらずジャングルと化している作業部屋に足を踏み入れたが、自分の予想以上な状態になっていて、ハロルドは思わず前屈みになった。正直、ジーンズの中身が起ちすぎて痛い。 ケープを脱がせて日用アイテムを収めたポーチが付いたベルトを外し、胴衣を全開にし、ボトムのファスナーを開けた。そこまでは、確かにハロルドがやった。しかし、脱げかけの胴衣を絡めて両手を一括りになんてしていないし、すっきりさっぱりボトムを脱がして脚を全開になんてさせていない。 いまだにサカキの体は宙吊りで、胸や首筋にはフェアリーフの擬態が幼い舌を伸ばし、いつもハロルドを飲み込んではきつく締め上げるそこには、ヒドラの細い触手が数本、濡れた音を立てて侵入を試みている。 ひざを高く上げられて後ろまで見えているということは、当然茂みに屹立したモノも見えているわけで、そこにはヒドラとマンドラゴラの触手が、きつく巻きついている。たまらず腰を震わせるサカキも、これではイくにイけないはずだ。しかも、よく見ると先端に、何か細いものが刺さっており、溢れ出した先走りをこすり付けるように、中にもぐりこんでいる。 「サカキさん・・・やばいくらいスケベな格好ですよ?」 汗で額に張り付いた前髪をかき上げると、涙をこぼして耐える琥珀色の目が、ぼんやりとハロルドを見上げた。 「ハ、ロ・・・」 「ああ、こんなに噛んで。切れちゃいますよ」 赤く血のにじんだ唇に口付けると、すぐに舌を差し出してくる。貪欲なサカキの舌に口の中を好きにさせたまま、ハロルドは手触りの良いサカキの太ももから、脚の付け根に掌を滑らせた。自由にならないなかで、サカキの体が跳ねる。 「ふっ・・・ぅん、はぁあっ」 「イきたい?」 「い、きた・・・ぃ、も・・・はや、くっ・・・」 ごつごつとした触手が絡みついたままの雄をしごきあげると、サカキは涙混じりの悲鳴を上げた。 「やあぁっ・・・ひ、ぃっ・・・とって!ハロ、それ・・・抜いてぇ!う、ごくなぁっ・・・!」 サカキ自身の細い中に入り込んでいた、極細ではあるがかなり硬い触手を、ハロルドはサカキの中を傷つけないよう、サカキの腰を押さえつけたまま慎重に引き抜いた。 「は・・・ぁ、ぅああぁっ!」 「すご・・・こんなに入っていましたよ?サカキさんは、こっちの穴の中も感じちゃうんですね」 「ふ、ざけ・・・んな!どれ・・・だけ、苦しいか・・・っんう!」 いつものきつい眼差しと怒声も、半泣きでは威力が伴わない。 「栓」が抜けた鈴口に舌を這わせながら、ハロルドは肉棒に絡まった触手を丁寧に緩めた。細い触手は勝手に動き回るので、押さえつける指がつりそうだったが、無駄に強情なところがないのが救いだった。 (そういえば、なんでこんなことに・・・?) 性戯用のバイオプラントがあるというのは、噂では聞いたことがある。しかし、サカキがそれを開発したわけではないし、いまさら自作する必要も感じられない。 「ねぇ、サカキふぁっ・・・!?」 「あぁああっ!」 考え事をしたせいで、サカキの状態に気づくのが遅れた。温かい飛沫は雄の匂いを撒き散らしたが、それはハロルドも嗅ぎ慣れた匂いであるから、問題はない。ただ・・・顔射されたのは初めてだった。 「ぷっ・・・くくくくっ」 「はぁっはぁ・・・ハロ・・・うぁ!?や、すまん・・・」 「大丈夫です。そんなに気持ちよかったですか?」 くすくすと笑いながら、ハロルドは鼻梁や頬に飛び散った精液を指先でぬぐって、自分の唇に当てる。 「こらっ、そんなものを・・・」 「いいじゃないスか。いつも飲んでるんだし」 サカキのものでなかったら、ごめんこうむるが。苦くて喉の奥に残る、独特のきつい匂いがするそれを、ハロルドはサカキの視線を感じたまま、おくまで咥えた指を唾液まみれにさせながら引き抜き、飲み下した。 再びサカキの欲情をあおりながらも、じらすようにハロルドは微笑んだ。 「ねぇ、サカキさん。何を作っていたんです?大人のおもちゃなんて、専門に作ってるケミとかクリエとかいるでしょうに」 「・・・頼まれただけだ。これは、実験中に落として・・・うっ」 サカキの体が跳ね、支えている蔦がしなった。 「ひっ・・・ま、だ・・・動くなっ・・・」 サカキの後ろには、まだ数本の触手が埋まっており、それが絶頂を越えて過敏になった内部を、容赦なく責めているようだ。 「やっ・・・く、抜いてっ・・・は、ぁあうっ!」 「んー、でも気持ちよさそうですよ、サカキさん?」 「なに言って・・・」 「こんなにぐちゃぐちゃにイヤラシイ音立てて・・・。さっきだって、これでイっちゃったんでしょ?」 すべすべの尻を撫で回していた手を、皮膚の薄い谷間に滑らせる。と、ぬめる物を一掴みにして、ずるりと引っ張った。 「ひああっ!ぁぐっ・・・」 「サカキさんは、俺のでなくても、触手でイっちゃうんだもんなぁ。エッチな体ですね」 「そ・・・んな・・・っ」 全部は抜いていないせいで、ヒドラの触手は再び狭い中へ入ろうと、ハロルドの手の中でうごめく。もちろん、その先端はサカキの中で、ハロルドには見えないが、感じやすい入り口付近で止まっているはずだ。 「やめっ・・・ハロ!だめ、だっ・・・」 サカキは懸命に体をよじって逃れようとするが、宙吊りのままで膝を上げられた両脚の間にハロルドがいては、正直に熱情を示すところを隠せるわけもない。 「や、だ・・・こんな・・・っ」 屈辱と快感にうっすらと赤みを帯びた細い首がのけぞると、こめかみに涙が伝い落ちていくのが見えた。 「ハロ・・・頼む、から・・・」 「どうして欲しい?」 「・・・ハロルドが、欲しい」 あられもない姿で懇願するサカキに唇を重ねると、ハロルドは逆に身を引いて、触手をつかんでいた手も離した。 濡れた音が、激しくサカキを突き上げる。 「ぅああぁっ!あ、ひああっ!」 「サカキさん」 てっきりハロルド自身が入ってくると思っていただろうサカキが、恨めしげにハロルドを睨みつける。その目の前で、ハロルドは自分のベルトを外して、ゆっくりとファスナーを下げた。 「サカキさんは、これが欲しいんでしょ?」 やっときつい服地から解放された自分の陽物に、ハロルドは指を絡めて、その反り返ったものをサカキに見せ付けた。硬く張り詰めたその先端から、透明な先走りが溢れている。 「ね?」 「んっ・・・そ、れ・・・いいっ・・・はぁっ・・・ハロぉっ」 普段の不機嫌そうな表情からは想像も付かない、サカキの飢えた眼差しが、中でうごめくものにとろかされている。 「ひっい、イク・・・」 「また触手でイっちゃうの、サカキさん?」 「や・・・ぁっ」 首を振り、戒められたままの両腕でもがくが、下半身は、相変わらず快感を求めた動きにしかなっていない。 「ハロ・・・ハロっ、はや、くっ・・・欲し、いっ」 「サカキさん、可愛いなぁ」 相変わらずサカキに張り付いているフェアリーフの擬態を退かして、開いた脚ごと肉の薄い体を抱きしめる。 「あ・・・」 「大丈夫だよ、サカキさん。俺が、全部愛してあげる」 「ハ、ロ・・・」 サカキがハロルド以外の誰にも見せない、子供のように安心してねだる無垢な顔に、ハロルドはいくつもキスを降らせた。 左腕だけで色白の体を支えたまま、できるだけ優しく、それでも一気に、サカキの中を占領する触手を引き抜いた。 「ひぃああぁ!」 ぴんとこわばる背を撫でながら、粘液を滴らせるそこに、自分のものをこすりつけた。ぬるぬるとした感触に、ハロルドの余裕もあっという間に溶けていく。 深く舌を絡めあい、互いの吐息をむさぼるようなキスを重ね、ハロルドは物欲しそうに腰をゆするサカキに囁いた。 「サカキさん・・・サカキさん、入れて、いい?」 「いい・・・はやく、奥まで・・・んぁああぁあっ!」 熱い。 慣らされたおかげで、普段よりもすんなりハロルドを迎えたサカキのそこは、相変わらずの熱さでハロルドを包み込む。ざらりとした襞にこすり付けても、触手が出した粘液のおかげで、動くのは簡単だった。 「はぁっ・・・あ、ぅ・・・ハロ・・・ハロぉ・・・」 「す、ごい・・・も、奥まで、入っちゃいましたよ?んっ・・・気持ちいい」 きゅうきゅうと締め付けるそこに打ち付けるたびに、ぱちゅん、ぴちゃんと、淫らな音を立てる。 「サカキさん、俺と触手、どっちが気持ちいい?」 「ば、かか・・・ひぅっ・・・そ、なの・・・や、ああっ!だめ、そこ、はぁっ!」 ぴったりと密着させた下半身は、サカキが感じやすいように抱き寄せている。脚を限界まで開いたサカキの中で、ハロルドは弱いポイントを丁寧に突き上げた。 痺れるような快楽に手綱はつけず、擦れあう熱に溶けてしまいそうだ。 ぬめる腸壁が、ハロルドの硬い肉棒をひときわ締め付けては、激しくなる動きにじゅぶじゅぶと愛液を垂れ流した。 「ひいっ・・・いいっ!ハロっ・・・ハロっ、も、イク!イクぅ!」 「サカキさん・・・あ、すげぇっ、締め付け、てっ・・・」 乱れた髪を上気した頬に貼りつかせて、サカキが喘ぐようにハロルドの名を叫ぶ。 「好き・・・っ」 それに応えるように、きつく狭い奥へ硬いものをねじりこみ、根元からの締め上げにしたがって、愛しい人を汚すように、精を吐き出す。自分だけのものだと、印をつけるように。 その瞬間、下腹部にこすり付けられていたサカキの雄が、再びハロルドに白濁した熱を浴びせかけた。 情事の余韻に浸って抱き合っているうちに、生い茂っていたバイオプラントは、一体また一体と消滅していった。 結局、何のための何が、この事態を引き起こすことになったのか、サカキは口をつぐんだままだった。 「・・・守秘義務だ!」 ということは、やはり最初に言っていたように誰かの依頼だろう。・・・もっとも、こんな変態じみた薬を要求する依頼人と言えば、だいたい誰かは、ハロルドにも想像が付く。 「で、実験は成功なんですか?」 「・・・」 こくんと、はっきり頷いたので、それはそれでよかった・・・のか?と、疑問系ながらも、ハロルドは今回の事件を片付けた。 「ねぇ、サカキさん」 「なんだ」 体を洗って身なりを整えてから、ハロルドはサカキの部屋の掃除を手伝っていた。 自分でやらかした事故とはいえ、少なくない損害額に、サカキの機嫌はいいはずもない。いつもの不機嫌そうな表情が、幾分暗い鋭さを持っている。 「あれが成功なら、サカキさんさえ良ければ、また使ってもいいですよ」 「は?」 ぼっと赤くなったサカキに、ハロルドは上機嫌で付け足した。 「いやもう、乱れるサカキさんが美味しくて美味しくて。これはいいテコ入れと言うか、月に一回のスペシャルな・・・」 「アシッドデモン・・・」 「ちょ!ま!ダメぇ!!」 箒と塵取りしか装備していないハロルドに、火炎瓶と塩酸瓶の代わりに、汚れた雑巾が飛んできた。 |