『実益ある趣味』
この都市では 自ら命を絶とうとするものは少ない。 なぜならば その必要が無いからだ。 ごく稀に |
時代を間違えて生まれてきた者が苦悩するとき 快楽のうちに死ねる背徳の慈悲が与えられる・・・ 微睡みの君主が支配する不夜城 ラクエン 激しく突きあがる淫猥な感覚に、すべてを忘れて嬌声を上げ続ける。 並みの男では及びもしないような、長く太く固いものが、切なく締め付ける女の中を、音を立ててかき回していた。 自ら脚を大きく広げ、よく肉の付いた太ももに爪を食い込ませながら、自分の秘所に出入りする雄にさらに興奮する。 「ひぃ・・・っ!いい!い・・・あ、もっとぉ!」 自分より年下に見える華奢な肢体に、最初から期待などしてはいなかったが、それでも至上の快楽があると聞いていたので、少しがっかりしていた。・・・その者がこの街の支配者だと知り、行為が始まるまでは。 いまは、豊かな乳房を吸われるだけでイってしまいそうだ。いや、すでに何度かイっているはずだ。でも、それが何度あったかは覚えていない。 「ひぎぃいっ!イく!イくぅ!!」 ごりごりと一番いいところをこすられ、激しくも甘美な衝撃が駆け抜けた。 「ぅあああっ!」 繋がったままのそこが、とろけそうだ。びくびくと痙攣する内側に、たっぷり吐き出されたものを感じて、笑みがこぼれた。 「・・・よかった?」 若い女のような、チャーミングな声が降ってくる。女は、自分にのしかかっている華奢な体を抱きしめた。無礼かとも思ったが、今は優しいぬくもりが欲しかった。 「はい・・・はい、我が君」 優しい口付けを与えられて、涙が溢れた。たくさん苦しい思いをしたが、最期に、ここに生まれて、自分はラッキーだと思った。 「ありがとうございます」 「・・・今度は、平和ないい時代に生まれておいで。君の描く絵、僕は好きだよ」 「どうして・・・ああっ!」 不意に、また腰が砕けそうな快感が沸き起こり、そのまま女は、かすむ視界に微笑みかけた。 もしも強く生まれ変わったなら、あなたに忠誠を・・・ 「美人薄命だね」 注ぎこまれた魔力の負荷に耐え切れず、脳天から腹の下まで弾けた女の返り血をシーツでぬぐい、ふんわりしたガウンに袖を通す。 乱れた黒髪を指でくしけずると、大きな窓から下界を見下ろした。高層階にある部屋からは、色とりどりのネオンがきらめく大都市の夜景が一望できる。 身分が低い者や、社会不適合な弱者の望みを無償で叶えてやるなどという背徳行為をするのは、それが支配者の嗜みであり、また特権でもあるからだ。 ガラス窓に映ったのは、少年にも少女にも見える、この街の支配者、微睡みの君主。 その色気の漂う赤い唇が、くすりとゆがんだ。 「・・・運動したら、おなかすいたな」 微睡みの君主は、しいて言えば性欲処理道具の一つにしか過ぎなかった女の死体には目もくれず、小腹を満たす夜食をあさりに、ガウンのまま部屋を出て行った。 ≪もどる |